Q&A2444 原因不明不育症です | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 37歳から特定不妊治療を開始し、間もなく40歳になります。
 
アンタゴニスト法で3回採卵し、毎回複数個見た目の良好な胚盤胞にはなるのですが、移植してもなかなか出産までたどり着きません。今までの移植後の結果は下記の通りです。不育症検査以外は全て地元の同じ病院です。

・1回目の凍結胚盤胞(4AA)→化学流産
・2回目の凍結胚盤胞(4AA)→陰性
・3回目2段階移植(4細胞+4AA)→化学流産
不育症検査を受け、プロテインS抗体陽性のため、以降の移植はバイアスピリン服用
・4回目の凍結胚盤胞(4AA)→化学流産
慢性子宮内膜炎が陰性になる(松林先生のブログを参考にフォースラインまで抗生剤を出してもらい、内膜炎組織診5回目の検査でやっと陰性)
・5回目の凍結胚盤胞(4AA+4BB)→陰性
・6回目の凍結胚盤胞(4AA+4BA)→7wで心拍確認出来ず稽留流産
・7回目の凍結胚盤胞(4AA2個)→9wで心拍停止、染色体異常無し
・8回目の凍結胚盤胞移植(4AA+4BA)→判定待ち

全てホルモン補充による移植です。黄体ホルモンの薬剤や服薬開始日等、多少違いがあります。移植6回目以降は全て同じ薬剤を使っています。移植6回目と7回目はSEET法を試しています。金銭的な問題や年齢的な問題もありますし、胚盤胞が残り4個ありますが、採卵の予定がない為(SEET液がもう無いので)、SEET法は出来ません。移植6回目以降は、移植日から10日間ダクチルを飲んでいます。また、移植5回目からはビタミンD、銅亜鉛も検査しながら移植しています。チラーヂンは初回移植からTSHの数値を見ながらずっと服薬しています。

6回目の移植後の稽留流産は自然排出なので染色体検査は出来ませんでしたが、7回目の流産手術の後に胎児の組織を検査してもらい、染色体異常も胞状奇胎もありませんでした。染色体異常でもなく流産したので、後はヘパリンを使うくらいしか打つ手は無いようなことを通院先の先生から言われました。判定日からお産まで使うことになるそうです。なお、プロテインS活性は81%、XⅡ因子活性は100%、その他にも特にヘパリンが必要な数値(異常)はありません。必要のない数値からヘパリン注射を使うのであれぱ、ヘパリン注射はお産までずっと使うことになるのでしょうか。

松林先生でしたら、ヘパリン注射を使いますか。ヘパリン注射以外なら、他にどんな手を打ちますか。不育症対策もして、染色体異常でもないのに流産するにはどんな理由があるのでしょうか。
 

A 4回目までの移植は、慢性子宮内膜炎があったために上手くいかなかったものと推察します。妊娠した6回目と7回目はSEET法で2個移植(+ダクチル)を実施していますので、SEET法+2個移植(+ダクチル)が良いのだと思いますが、SEET液がないのでしたら2段階移植を推奨します。

 

また、不育検査を完璧に網羅できているか、今一度確認が必要です。例えば、NK活性やHOMA-Rなどです。必要な項目が全て網羅できていてなお妊娠継続ができないのでしたら「原因不明不育症」になりますので、私なら、ヘパリンではなく免疫グロブリン(IVIG)を使います。

 

なお、このQ&Aは、約2ヶ月前の質問にお答えしております。