今回はディープなカメラマニア向けのお話です。

 

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コロナのせいで、撮影の仕事がまったくなくなりました。

完全失業者です。

 

そのため、アルバイトをしております。

そして、趣味である「街歩き」も「旅行」もできず。。。。家の中にいるしかありません。

 

となると、DVDを借りてきて映画を見ております。

 

「旧作60円」とかで、バババッと適当に10枚選んできました。

 

この作品「世界でいちばん長い写真」は、まったく知らない映画でしたが、職業柄、単に「写真」という文字に惹かれて借りました。

 

ただ、「世界でいちばん長い写真」というのは、当然、なんらかの「比喩表現」であると思ってました。まさか、これが、本当に「世界で一番長い写真(ギネス記録認定)」だとは思ってませんでした。というわけで、いい意味で、タイトルに裏切られました。

 

 

これは、2001年に愛知県の日本福祉大学付属高校で実際に行われた、「世界で一番長い写真を撮影して、ギネス記録を作った」という実話をもとに脚色した青春ドラマです。(2001年というのはデジカメは出現していたが、プロ用カメラは、まだ、フィルムカメラが使われていた時代です)

 

50を過ぎた、いいおっさんには、こういう青春ドラマは、なかなかついていけなくなってしまったのですが、今回は違います。

ぐんぐんと引き込まれていきました。

 

その要因は、このカメラの出現です。

 

Mmiya RB67

 

私も過去にこんなブログ記事を書いていて、そこにも登場します。

 

 

フィルム時代のプロカメラマンであれば、知らない人がいない、世界に誇る名機です。

うちにも、まだ保管してあります。仕事で使うことはなくなりましたが、美術品として飾ってあります。

 

舞台となるのは、高校の写真部なんですが、最初は、なんか「「イジイジした覇気のない主人公」に嫌気が差す、イマイチの展開でしたが、この「RB67」が突然登場してから、「うわあ、RBじゃん!! このデジタル全盛時代に、これが出てくるって、なんなんだよ、この映画!」と、背筋がピンとしてしまいました。

 

そして、このRB67は普通のRBではありません。なんと、特殊な改造をしてあって、「スリットカメラ」になっていました。

 

これまた、超マニアックな話になります。

 

 

※「そんな特殊改造のことを、街の若い写真店主が知ってるわけはない」なんていう脚本の「おかしさ」はありますが、それは問わないことにしましょう。この映画は「費用」のことにも一切触れないし、普通の街の写真館で、あんな特殊な写真の現像はできないし。。。いろいろと、設定が破綻していて、専門家から見ると、相当の無理がありました。

 

 

さて、スリットカメラというのは、非常に特殊なもので、競馬とか競艇などのレースの公正な判定のために使われるくらいで、一般にはまったく知られていないものです。

 

しかし、私は、大学時代に、これに挑戦して、カメラを改造したことがあります。

 

その時の写真がこれ。

 

 

何がなんだかわからないと思いますが、これ、「人間の頭」です。

カメラの前で、友人に立ってもらい、そこでくるりと一回転してもらっています。

 

左のほうが、人間の「顔」で右のほうが「後頭部」になります。

 

これ、回ってもらう人間のスピードと、カメラのフィルムを手動で動かすスピードがうまく合致しないと、ちゃんとした写真が撮れないので、ものすごい技術や経験が必要な写真になり、私には無理でした。

それで2~3回やって、あきらめました。

 

 

映画では、カメラ本体が、電動式で自動的に回転し、360度パノラマ写真を撮る、という設定になっていました。

そう、スリットカメラは、そういう用途があります。

 

このへんが、カメラマニアにはたまらず、わくわくさせてくれました。

 

そういうカメラのことだけでなく、主演の高杉君や、いい味を出していた武田梨奈さんや、最後にすごいいいことをしてくれた 青天目澄子 ちゃんなどの俳優陣や、おそらく、実際の生徒であろうエキストラの人たちもいい感じでした。

 

ちょっと、過去と現在を言ったり来たりするところがうまく編集されていないとか、手持ちカメラが揺れ過ぎとか、いろいろな欠点はあったのですが、やはり、自分がよく知っているカメラ機材が陰の主役ということで、ワクワクドキドキで、最高の気持ちでした。

 

そして、最後の最後、エンドロールですが、これがまた最高。

エンドロールをこんなに一生懸命見た映画ははじめてだったかもしれません、

最後の最後の最後の「鏡」も、うまくはまって最高でした。

 

 

とにかく、たいして期待をしてなかった映画が、こんなに面白かったというのは、非常に得をした気分になり、コロナで失業し落ち込んだ気分を晴らしてくれました。

 

こんないい映画を作ってくれた人に感謝します。