カテゴリ:前立腺がん
<PSAが1000以上で見つかった前立腺がんの解析?>
PSAは、早期に前立腺がんを見つけるいい検査と思います。
PSA検査の発明・普及で、前立腺がんによる死亡は、特にアメリカなどでは、急激な減少がみられています。 しかしながら、日本では、PSA検査を受ける割合(PSAの暴露率)が低いため、進行前立腺がんとしてみつかる人が依然として多いのが現状です。 私の病院では、残念ながら、PSAが異常高値で受診される方が多く、やはり、進行前立腺がんの状態である事が多い。
PSAが高いというのは、どういう状態で、治療効果はどうだろうかという疑問が、私Uromasterが、この研究を始めたきっかけです。
今回の国際泌尿器科学会では、PSA1000以上で見つかった患者さんの解析を発表しました。 2001年から2018年の間に私Uromasterの病院などで診療した53人の患者さんの解析です。
PSA1000以上の53人もの多くの解析は、世界でも類をみない研究と自負しています。 実は、現時点では、もっと多くのPSA1000以上の患者さんをみているのですが、これは来年の日本泌尿器科学会総会で発表する予定です。
PSA1000以上の53人の患者さんは、 年齢 中央値 73歳(55~86) PSAの値 中央値2160(1025~19000) 前立腺がんによる症状あり 41/53(77.4%) 遠隔転移あり 52/53(98.1%) グリソンスコア 3+3 1 3+4 4 4+3 2 4+4 11 3+5 1 5+3 1 4+5 14 5+4 11 5+5 4 不明 4 でした。
やはり、PSAが1000以上だと、前立腺がんによる症状がある人が多く、実に98%の人で遠隔転移がみられます。 悪性度を示す、グリソンスコアもやはり高い患者さんが多い結果です。
<生存率> PSA1000以上でみつかった前立腺がんの患者さんの生存率は、 でした。 X軸が、月数、Y軸が生存している割合です。時間が経つにつれ、亡くなる方が増えて、赤い線が下に落ちていきます。 いやな話ですが、 5年生きる確率は、22.8%ととても低い数字です。 生存期間の中央値は16.3ヶ月でした。 PSA1000以上で見つかった前立腺がん患者さんは、2年以内に半分以上の方がなくなるという結果になりました。
このグラフをみると、生存率は低いのですが、50ヶ月を過ぎて、それ以降生存率が、しばらく、150ヶ月低下していません。
この研究では、年齢 中央値 73歳(55~86)です。 前立腺がんが見つかった時点で、80歳以上の方がたくさんいます。 全生存率には、脳心臓病や、他の臓器のがんによる死亡など、前立腺がん以外の死亡も含まれます。
このことは、PSAが1000以上あっても、必ずしもすべての患者さんが短命というわけではないということです。 おそらく、80歳代の方が、たとえ前立腺がんがなくてお元気でも、10年以上長生きできるかは、かなり困難と考えます。 ということは、比較的若い患者さんが、前立腺がんが見つかっても、かなり長期間生存されているのかもしれません。
古い時代の患者さんも含まれているので、現在と治療が少し異なりますから、現在では、もう少し結果はいいとは思われます(実はこの研究では、見つかった時期で生存率に差がでませんでした)。
それでも、治療の最初は内分泌療法(去勢術)ですから、参考になります。 PSA1000以上で見つかった患者さんの予後(生存率)は、やはり非常に悪いという結果です。 ただし、すべての患者さんが長生きできないかというと、そうではありません。
どういう違いが生存率に影響を及ぼすかを今回解析して、学会で発表しました。
同じ、PSA1000以上で見つかった患者さんで、 生存率の違いはどこにあるのでしょう。
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