香港国家安全法によって投資家にとって一番気になるのは香港ドルペッグ制がどうなるか?ということです。

結論から言えば、香港ドルペッグ制は残り続けます。

理由をまとめます。


香港は単なる香港ドルペッグ制ではなくカレンシボード制

香港はアジアと欧米をつなぐ最大の金融セクターです。
香港ドルとドルはドルペッグ制と言って決まった価格の中で動いています。

このドルペッグ制は単なるペッグ制ではなくカレンシーボード制です。

香港は中国の社会自由主義のモデルハウスの役割

これは私が実際に香港人から聞いて、香港で滞在しての体験談ですが、

香港は中国の社会自由主義のモデルハウスとして機能しています。

中国からすれば「中国ってこんな良い国なんですよ。遊びに来てね。投資してね。」と「良い面の建前」のモデルハウスを見せるための国です。

私が行った時、日本の5年前くらいの深夜アニメを放送し、日本TUEEEという日本旅行番組を連日放送していました。

日本崇拝すぎてちょっと引いたほどでした。

香港での日本は日本人の感覚だと日本菓子はゴディバチョコ、ジャニーズはハリウッドスター並に持ち上げられています。


アメリカと中国の対立ごっこ

表向きは中国(共産主義)に対して、香港の裏にはアメリカ(資本主義)があることになっています。
中国人(人民解放軍)vs 香港人の香港デモでは大きくこの構造で政治的に語られます。

政治だけを見ているとアメリカと中国は仲悪いように振る舞っています。

しかし経済的には友好的です。

「政治で仲悪い米中だけど、経済で仲良い米中。」
「政治と経済の二枚舌。」

経済に注目している人は特にそのことに気づいています。

アメリカも農業等で中国依存しているので米中関係で事を荒立てればアメリカの経済にも打撃を与えます。
またアメリカの軍事に関わる特許も中国系企業が持っているので親を叩くようなものです。

実際にお互いに何か経済的に壊滅的な制裁を加えたかというと行っていません。

そもそも中国の富裕層が香港を利用している

「香港が中国に飲まれたー大変だー」と言われますが、そもそも香港の金融は中国の富裕層です。

中国の富裕層であるグローバル華僑が、中国共産党(中国政府)からの財産を逃がすための目的で香港を利用しています。
当然、中国共産党員も富裕層とのコネがあるのでその資産は守ります。

HKMAの余偉文(エディー・ユー)総裁は2日のブログで、ペッグ制は米国が香港への優遇措置供与を定めた1992年の法律よりも9年前から存在していたと指摘。「(ペッグ制は)36年間にわたってさまざまな市場ショックを乗り切り、円滑に運営されている。香港の通貨・金融システムにとって柱の1つであり、香港に対する外交政策が切り替わったからといって、決して変更されるものではない」と断言した。

香港は、香港ドル流通量の6倍に相当する4400億米ドルの準備資産を保有している。HKMAはいざとなれば、中国人民銀行(中央銀行)に米ドルを融通してもらえる、と香港の陳茂波(ポール・チャン)財政長官は今週語った。

(中略)

世界屈指の香港株式市場は、中国本土の株式・債券市場に向かう海外投資資金の最大の玄関口の役目を果たしている。香港の外為市場も世界有数の規模を誇り、米ドルの取引高は第3位だ。

中国の富裕層も香港を当てにしており、推定1兆米ドル超という香港にある個人資産のうち、半分余りは本土から移された。

米中対立再燃 香港のドルペッグ制が直面するリスク
https://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2020/06/post-93608.php

香港人がどうなろうと、一国二制度がどうなろうと、香港政治がどうなろうと、香港経済の仕組みは守るでしょう。

なのでペッグ制に関しては変わらないと強気に断言できるのです。


香港ドルの発行元はイギリスのHSBC銀行とSCB銀行(シンガポール株主)

香港ドルの発行元はイギリスのHSBC、SCB(スタンダードチャータード=シンガポール株主)、中国銀行香港です。

香港の本体はイギリスなのでイギリスの財産までは中国程度が手出しできるものではありません。

アメリカ最大の投資銀行であるゴールドマン・サックスのレバレッジ金融部門も香港に残しています。

中国が完全変動相場制になったら人民元ペッグ制になる

香港ドルペッグ制(カレンシーボード制)は、中国が完全変動相場制を実現して人民元に統合するまでは守るでしょう。

香港は今はまだイギリスの下のカレンシーポート制で中央銀行がドルを保有しているからドルペッグ制は崩れません。

しかし例えば中国が完全変動相場制から世界覇権国になって相対的にアメリカが不景気になるとペッグ制も崩れて人民元に統合されます。


香港基本法で2047年まで維持は保証

カレンシーボードを採用する国・地域は一般的に小規模で対外開放度、依存度の強い経済で、かつてはアルゼンチン(米ドルペッグ)、エストニア、リトアニア(何れもユーロペッグ)なども一時期採用していたが、現在は、香港の他、バーミューダ、ケイマン諸島といったタックスヘイブン地域、およびブルガリア(ユーロペッグ)と、ごく一部

少なくとも基本法で保証されている2047年まで現行制度を維持すること、そのためには金融面での独立

香港基本法では、「香港ドルは法定貨幣として引き続き流通する」「香港貨幣の発行は100%の準備金で裏付けられなければならない」(111条)と規定

香港ドルの「人民元ペッグ」移行が時期尚早といえる理由
https://gentosha-go.com/articles/-/7969

このように2047年までは法律で保証されているため当面は経済的に香港ドルペッグ制が崩れることはないでしょう。

仮になったとしてもHSBC銀行を利用するユーザーにとって打撃になるかというとHSBCそのものがなくなるわけではありません。
今までドルと香港ドルでヘッジしていたのを他の通貨にすればいいだけです。

今後も金融セクターとしては有効に機能していきます。

HSBC香港でドルペッグ制を利用した両替タイミングを見極める方法