救急一直線 特別ブログ Happy保存の法則 ーUnitedー for the Patient ー

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留意共有 新型コロナウイルス感染症と集中治療

2020年02月25日 01時12分03秒 | COVID-19の集中治療

新型コロナウイルス感染症に正しく備える

対応策:具体的内容共有の重要性

 

名古屋大学大学院医学系研究科

救急・集中治療医学分野 教授

松田直之

 

 一般の皆さんへ:マスクを着用する場合にはより良い着用を!! 

 マスクを着用する利点は,① 自分が新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスなどの感染の疑いがある時に周囲の皆さんに移してしまう可能性を減少できること,② テーブルや手すり,自分の手や髪や眉毛や皮膚に既についてしまった飛沫を口や鼻に接触させる可能性を減少できることです。私たちの「手」が,私たちの口や鼻,そしてテーブルなどにコロナウイルスを運ぶことが,一つの大きな問題です。マスクをしていると自分の顔を触らなくなります。そのようなマスクは,汚染されている可能性があるので,帰宅した時には必ずすぐに廃棄して下さい。テーブルの上などに,置かないようにしてください。そして,帰宅したら,手洗い,洗顔,そしてうがいをしましょう。その上で,コロナウイルス感染症の後の多臓器不全,つまり敗血症管理は,細菌感染症の併発を含めて,皆で十分に気をつけましょう。敗血症の私のYouTubeも参考として下さい。

マスク着用 留意して頂きたいこと

MAXマスク

1.マスクフットに注意:鼻と頬と下顎,注意して下さい。挿絵と写真(上部付載)を参考として下さい。

2.鼻露出:鼻を出しているマスクの着用は禁止です。

3.鼻直線マスク:鼻根部を写真のようにフィットさせて下さい。鼻のところから空気漏れのないようにして下さい。

4.手洗い:マスクの基本は,手洗いを並行することです。

※ マスクは,咳をしている方が,周囲にその飛沫を暴露させないように注意するためのエチケットです。

※ マスクは,正しく着用するように,注意しましょう。

※ WHY なぜマスク??:眼元,毛髪,眉毛,鼻,口元,ここを私たちは手で触る傾向があります。テーブルなどを触った手の,鼻や口への接触を防いでくれます。

※ 要注意:外したマスクを,テーブルの上に置いてはいけません。テーブルが汚染されます。外から帰宅した場合や汚染された可能性のある場合は,残念ながら「廃棄する」のが原則です。

市民講座 敗血症ってなんですか?? 松田直之

市民講座 敗血症における集中治療室の役割 松田直之

 一般の皆さんへ:CBCラジオ  きくラジオ  健康生活 

12:50~12:58   コロナウイルスから身を守る 〜救急医療と集中治療〜 5日間特集

パーソナリティ:松田直之,アナウンサー:重盛啓之 CBCラジオ👂ここから:http://radiko.jp/#!/live/CBC

 3月2日(月)DAY1 コロナウイルスはなぜ怖いのか?

 3月3日(火)DAY2 マスクって重要ですか?

 3月4日(水)DAY3 コロナウイルス感染症で重症になるときの症状ってなんですか?

 3月5日(木)DAY4 コロナウイルスの救急医療と集中治療 〜どのような治療をするんですか?〜

 3月6日(金)DAY5 コロナウイルス感染症対策の整理 〜最低限抑えるポイントってなんですか〜?

※ On the CBC radio, we will feature managements and care of coronavirus. I will talk about the sepsis and multiple organ failure, too.

※ CBCラジオ放送:以下の内容について,平易に解説します。

 

 はじめに 

 中国河北省武漢(ウーハン)市は,人口1,100万人以上の大都市です。この武漢市を中心として,2019年12月より新型コロナウイルスによる多数の死亡例が報告されています。本邦では,2020年1月28日18時過ぎに,国立感染症研究所より新型コロナウイルス(Novel Coronavirus:nCoV)に関連した感染症症例について報告されています。このような恐れを抱く状況では,科学的な落ち着いた対応と,感染管理体制の構築,そして重症化に備える集中治療管理の適正化が必要となります。救急・集中治療領域では,間質性肺炎の急性増悪,ARDSおよび多臓器不全に至る早期段階での拾い上げが重要策となります。重篤化や死亡には,低栄養,免疫不全や既炎症状態などの疾患ベースが強く関与すると考えられます。

 本邦での初期症例の概要 

(1)年齢: 40代

(2)性別: 女性

(3)居住地: 中華人民共和国(湖北省武漢市)

(4)症状経過:

1月21日に来日し,1月22日より北海道を観光したという。

1月26日 体調不良のために外出せず,夜間より咳と発熱が出現した。

1月27日 北海道内の医療機関を受診し,急性肺炎として入院となった。

1月28日 熱は残っているが,容態は安定しているとされている。

(5)行動歴:

1月21日 武漢市より2名で来日し,東京都内の知人宅に宿泊したという。

1月22日 東京から3名で北海道に移動し,観光したという。

1月26日 体調不良のため外出していないという。

留意事項:日本に来てからはマスクを着用しており,武漢市の華南海鮮城(海鮮市場)の訪問はないという。ランセット論文(Lancet 2020 Jan 24. pii: S0140-6736(20)30183-5)では,発症から呼吸困難感までが約8日間,初発症状は発熱(98%),咳(76%),筋肉痛または疲労(44%),頭痛(8%),下痢(3%)とされています。

 ヒトに感染するコロナウイルスについて 

 コロナウイルスは,RNAウイルスであり,風邪の流行期の一般的なウイルスとして知られています。ヒトに日常的に感染するコロナウイルスは,HCoV-229E,HCoV-OC43,HCoV-NL63,HCoV-HKU1の4種類が知られています。一般に,この4種類のコロナウイルスによる「かぜ症候群」は,冬季が流行のピークであり,概ね6歳までに罹患し,コロナウイルスに対する免疫を獲得します。

 このコロナウイルス感染症のこれまで話題となった重症例として,重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)と中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)があります。つまり,これまで6種類のコロナウイルスが,同定されていました。2012年4月に中東で発症し,韓国でも重症例が報告されたMERS-CoVにおいては,日本集中治療医学会も感染症における全身管理として人工心肺(extracorporeal membrane oxygenation:ECMO)による管理なども検討されました。今回の新型コロナウイルス(Novel Coronavirus:nCoV)においても,SARSおよびMERSと類似する重症コロナウイルス感染症として,ARDS(救急一直線 記載)を含めた十分な全身管理への対応が必要とされます。

 コロナウイルスのウイルスとしての特徴 

 コロナウイルスは直径約100 nmの球形状であり,表面に突起があるため,この形状が王冠(crown)に似ているため,ギリシャ語で王冠を意味する「corona」という名前が付けられています。このコロナウイルスは,脂質二重膜のエンベロープを持ち,その中にはNucleocapsid(N)蛋白に巻きついたプラス鎖で30kbレベルの大きさの一本鎖RNA,エンベロープ表面にSpike(S)蛋白,Envelope(E)蛋白,Membrane(M)蛋白と名付けられた特徴のある蛋白が存在します。一本鎖RNAウイルスとしてのRNAの特徴から,α,β,δの3つのグループにコロナウイルスは分類されています。MERS-CoVやSARS-CoVは,βコロナウイルスです。現在,日本では「新型コロナウイルス(Novel Coronavirus:nCoV)感染症患者に対する積極的疫 学調 査実施要領(1月21日版)」が整備され,新型コロナウイルス感染症の確定例の濃厚接触者の発症時,感染症法15条の枠組みとして新型コロナウイルス遺伝子検査ができる仕組みが整えられています。

 コロナウイルスに限らず,ウイルスに共通する特徴として,① ウイルスはRNAあるいはDNAのどちらかしか遺伝子を持たないこと,② 細胞質がないこと,③ 外側をカプシドという殻のようなもので包まれていること,④ カプシドはカプソメアの集合体であり,カプソメアは3~6個のペプチドで構成されていることなどが特徴です。このカプシドの外側を包むようにしてエンベロープという脂質2重膜が存在しているのがコロナウイルスです。ウイルスにはエンベロープを持つタイプと持たないタイプがあり,コロナウイルスはエンベロープを持つタイプのウイルスです。C型肝炎ウイルス(RNA),水痘・帯状疱疹ウイルス(DNA),麻疹ウイルス(RNA),RSウイルス(RNA),インフルエンザウイルス(RNA),エボラウイルス(RNA)なども,カプシドの外にエンベロープを持ち,ヒトへの細胞への寄生を高めます。 

 これらコロナウイルスなどのウイルス領域の研究として,その特異的受容体を見つける研究もなされています(Li W, Moore MJ, Vasilleva N, et al. Angiotensin- converting enzyme 2 is a functional receptor for the SARS coronavirus. Nature 2003;426:450-454)。死亡率を高めたSARS-CoVでは,このangiotensin converting enzyme-2(ACE-2)を受容体として,ACE-2のカルボキシペプチダーゼ機能を修飾することや,ACE-2の発現領域への浸潤性を高めるなどの可能性が17年前より示唆されています。つまり,コロナウイルスの細胞傷害性は,例えばACE-2の発現の多い気管支,肺,心臓,腎臓,消化管などで強い理由の一つとなるのかもしれません。このような研究は,気道領域の問題だけではなく,心筋炎,腸炎,脳炎などの炎症に加えて,消化器系や泌尿器科系のがん発症との関連でも興味深いものとなります。

 新型コロナウイルス感染症疑いについて  

A.  新型コロナウイルスを疑う方策

新型コロナウイルス感染症の疑いに対して,救急外来(ER)での対応の一例

 1.スクリーニング対象:発熱または呼吸器症状を訴える患者さん

 2.武漢市への渡航歴/武漢市への渡航歴がある方との接触

 3.体温 37.5℃以上および呼吸器症状がある場合

以上を,「新型コロナウイルス感染症の疑い」として確定します。

一方,武漢市への渡航歴のない患者さんでも,新型コロナウイルス感染症を疑います。

B.  新型コロナウイルスを疑う経過フォロー

 1.感冒症状に対してのインフルエンザウイルスチェック

 2.インフルエンザ陰性 → ER医師は重症化に留意した説明を行います。

※ 診療場所および感染防御策については,各施設の取り決めに従うことになります。

※ 医療従事者は,各施設の感染制御部や病院執行部の院内取り決めに従います。

C. 健感発 0203第2号 令和2年2月3日  新型コロナウイルス感染症を疑うもの

1.発熱または呼吸器症状があり,新型コロナウイルス感染症が確定した人との濃厚接触歴がある場合。濃厚接触とは,①同居,②長時間接触(車内,機内),③新型コロナウイルス感染症が疑われる患者に対しての診察・看護または介護,④新型コロナウイルス感染症が疑われる患者の体液などの汚染物質に直接触れた可能性がある場合などです。これは,一般に新型コロナウイルス感染症に限らず,新型ウイルス感染症での留意事項です。

2.37.5°C以上の発熱かつ呼吸器症状があり,発症前14 日以内にWHOの公表内容から新型コロナウイルス感染症の流行が確認されている地域に渡航や居住をしていた場合。

3.37.5°C以上の発熱かつ呼吸器症状があり,発症前14 日以内にWHOの公表内容から新型コロナウイルス感染症の流行が確認されている地域に渡航や居住をしていたものと,濃厚接触歴がある場合。

4.発熱,呼吸器症状,または感染症を疑わせる症状のうち,私たち医師が医学的知見から集中治療に準ずる治療が必要な重症,かつ,直ちに特定の感染症と診断することができないと判断し(法第14条 第1項に規定する厚生労働省令で定める疑似症に相当),新型コロナウイルス感染症の鑑別を必要とする場合。

 

 かぜ症候群および急性気管支炎におけるER対応 

基本事項

1.インフルエンザ抗原チェックで陰性な患者さんには自己経過フォローの重要性を伝える。

2.qSOFAの説明をする。

 ・ 意識変容

 ・ 呼吸数 ≧ 22/分 ※ 呼吸数の数え方をお伝えする

 ・ 収縮期血圧 ≦ 100 mmHg

 以上の3項目のうち2つ以上満たす場合には,再受診して頂く。

3.その他の注意事項を説明する。

 ・ 咳の悪化

 ・ 呼吸苦:呼吸が苦しい

 ・ 熱の持続:37.5℃以上4日以上

※ 新型コロナウイルスの初期症状(鼻汁,咽頭の違和感など)が増悪する時,気道症状として急激な呼吸苦,苦しさが出てくるようです。

※ 呼吸苦が出現してきた時点の肺のCT像では,すりガラス陰影(multifocal ground-glass opacities)が進展してくる可能性があり,間質性肺炎の急性増悪や2次感染に注意が必要となります。

※ 医療従事者は,国の指針,および各施設の感染制御部や病院執行部の院内取り決めに従います。

 新型コロナウイルス感染症疑いでの院内感染対策 

基本事項

1.患者さんご本人への対策:患者さんご本人には,サージカルマスクを着用して頂く(鼻領域を十分にフィットさせること)。

2.診察における注意:診察時の標準予防策を徹底する。

3.診察場所の注意:診察室および入院病床は個室が望ましい。

4.換気の重要性:診察室および入院病床は十分に換気する。

5.標準予防策として眼防御を含めること:気道吸引や気管挿管の処置などエアロゾルが発生す可能性について,空気感染を考慮して,N95マスクの着用,眼防護(ゴーグルまたはフェイスシールド),長袖ガウン,手袋を装着すること。眼の防御にも十分に注意が必要とする。

6.感染防御具の廃棄:感染防御具の廃棄法についての取り決めを厳格に院内で定めること。使用後の手袋やガウンやフェイスシールドなどを,机上に放置してはならない。

7.患者移動制限:患者の移動は,CT検査や高次施設へなどの医学的に必要な目的に限定する。

 新型コロナウイルスの名称について 

◼️ WHO:COVID-19
新型コロナウイルスによる感染症を,COVID-19(COronaVIrus Disease 2019)と命名する。
https://www.bbc.com/japanese/51470319

◼️ 国際ウイルス分類学会:SARS-CoV-2
新型コロナウイルスを,SARS-CoV-2(Severe Acute Respiratory Syndrome CoronaVirus-2)と命名する。
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.02.07.937862v1

 

 本邦におけるCOVID-19の治療と管理の報告 

■ 国立国際医療研究センター http://dcc.ncgm.go.jp/core/pdf/20200221_2.pdf

際感染症センターのホームページにCOVID-19管理の報告が行われています。症例11では,人工肺(VV-ECMO)が併用されています。また,Lopinavir/Ritonavir(LPV/r)を治療薬として用いていることも記載されています。そして,胸部CT像の典型例も掲載して頂いています。

 

初版 2020年01月27日

追記 2020年01月29日,2020年01月30日,2020年02月02日,2020年02月06日,2020年02月12日,2020年02月21日,2020年02月22日,2020年02月24日,2020年02月28日


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