たかたかのトレッキング

駆け足登山は卒業、これからは一日で登れる山を二日かけ自然と語らいながら自由気ままに登りたい。

思い出に残る山 至仏山

2019年10月17日 | 心に残る思い出の山

H9・6/22  歩行5:00 休憩2:50 (所要7:50)

至仏山の名は仏教には関係なく登山道の無かった時代に利用した渋ッ沢(しぶっつぁわ)に由来すると言う

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

雄さんのゴソゴソとしている音に目覚めた  時刻は4時15分

7時頃、出発するつもりでいたので毛布を被りもう一寝入りしている間

雄さんは「自然を守ろう」で始めた交通規制の裏の実態をカメラに納めていたらしい

「登山者は、もうどんどんタクシーやワゴン車に相乗りして鳩待峠に向かっている」と急かされ

軽くサンドイッチの朝食をとり一人900円の相乗りワゴン車に乗り込む

一昨日日本を直撃した台風も昨日には北海道をかすめて太平洋側に抜け

お蔭で今日は綺麗な青空が広がった

(鳩待峠)

 

5時45分 登山開始  林の密生は直ぐに車の騒音を消してくれた

マイヅルソウが白い小花をチラホラと咲かせる山道は緩やかな勾配で疲れ知らずだ

しかし足元はぬかるみ既に雄さんはズボンの裾を汚している

「笠ヶ岳よ!笠ヶ岳が見える!」 登山口から30分ほど入った開けた地点だ

尾瀬の影に隠れ知名度は今一だがお花が素晴らしく展望の素晴らしさは県下一と聞く

(私がこの笠ヶ岳に登ったのは、この日から10年後の事でした)

更に30分後、視界が開けた原見岩で5分ほど休憩

前方に燧ケ岳が美しく聳えている 

お腹の痛みをこらえ駆け込んだ竜宮小屋も目の下だ

あれからもう11年が経つ

 

(オヤマ沢 7時15分着)

道はいよいよ急登に転じたが、そう長くは続かず笠ヶ岳への分岐点から数十分で

水溜りの様な池塘が点在するオヤマ沢田代の小湿原に着いた

今、湿原を彩る物は一つも無かったが、これから本格的な夏に向かって見事な花園となる事だろう

行く手に小至仏山が頭をもたげた

幾つか現れる雪渓を越えて行くと道は増々ドロドロになって来た

ウンザリする泥道とは対照的に崖の上に白山イチゲが風に揺れている

続いてシナノキンバイも姿を見せ徐々に花数が増えていく

(今だったら絶対カメラに納めただろう花の写真 この頃は未だ花にカメラを向ける事が有りませんでした)

 

突然だった 稜線に登りあげた私達の前に雪を残したままの上越国境の山並みが

宙に浮いて横たわっているではないか  それはまさに息を飲む景観だった

稜線右には燧ケ岳と尾瀬ヶ原がセットで常に私達と共に有り

後方には男体山や日光白根山も仲間に加わった  笠ヶ岳の後ろには意外や上州武尊が大きい 

だが此処まで来て肝心の至仏山は未だ姿を見せない

小至仏への登りに掛かると、その景色は増々雄大さを増しそれに負けじと植生も豊かになって来た

キバノコバノツメ・ウメバチソウ・ハクサンコザクラ・コメノツガザクラ・ホソバヒナウスユキソウ・エンレイソウ

シナノキンバイ・ハクサンイチゲ・チングルマ・シャクナゲ・知っている物を並べてもざっとこの数である

 

 

小至仏への最後の急登に耐え足元を見つめて登っている時の事だった

先に来られてなるものかと無理矢理突っ込んで来て私の肩に体当たりし

その上、鋭い視線を投げかけて下って行った女性が居た こんな状態は一度や二度では無かった

人気の山で有るから一般登山者の数も多くなるのは仕方の無い事だが

山に入る人間として登り優先と言う最低限のルールは学習してきて欲しいものである

岩石の重なりで狭い山頂を一層狭くしている小至仏山頂で漸く姿を現した至仏山を眺め腰を下ろした

7時55分

先に到着していた人達や原見岩から追いつ追われつした団体は一足先にたち

三座同定を協力してくれたご夫婦も腰をあげ終に私達二人だけになったが

時間は未だ8時を回ったところだ この雄大な景色を前にしてそう先を急ぐ事も無い

私達はゆっくり休憩を取りそしていよいよ至仏山に向かった

 

 

一旦下っての登り返しが辛そうだ

しかし一歩踏み出せば点在する岩の間に

緑のハイマツ、かなりの量のシャクナゲ、足元に咲き乱れる高山植物 

青い空には程よく雲が湧き稜線の散歩道は辛いどころか本当に楽しかった

展望も相変わらず私達と共にある

注意しなくてはならなかったのは蛇紋岩が良く滑り滑ったら骨折をしかねない事だ

小至仏から山頂までの30分のコースを15分もオーバーして終に至仏山頂に到着 

(略)

山頂はさすが燧ヶ岳と人気を二分するだけあって大勢の登山者で溢れていた

立派な三角点で記念写真を撮っていると急に雲行きが怪しくなり

たちまち全ての景色を飲み込んでしまった

山頂に来なければ見られない越後方面の同定はこれで絶望的となった

時間は9時

朝食は取って来たので、まだそうお腹も空いていないが山頂に着けばお弁当を広げるのが常

ウメチビを飲み無理矢理おにぎりを頬張った

時々青い空が覗きボーッと暖かさに包まれる、が垂れ込める雲の流れは速い

気が付くと程よい酔いと昨夜の寝不足もたたり私は何時の間にか岩にもたれ寝ていた

目が覚めて雄さんを探すと雄さんも崖の縁で気持ち良さそうに寝ている

“大丈夫なのかしら”と心配しながら又、寝てしまった

頭の上で「あんな所で寝てる、大丈夫なんですか?」と言う声がして目が覚めた

心配する人の声を他所に雄さんは相変わらず気持ち良さそうに寝ている

後で雄さんに聞いたところ「岩と岩の窪みに体を入れ股の間に岩を挟んでいたので危険はないよ」

時間に余裕が有ると言うのは良いものでスッカリ、リラックスし視界が山頂のみと言う

悲惨な中に有りながら2時間近くも時を過ごし、いよいよ腰を上げようとした時

「オーッ!」 あちこちから声が上がる

次第にガスが吹き払われて尾瀬沼方面が姿を現したのだ

再び開けた展望をジックリ眺め名残は尽きない山頂を後にした

滑る石に気を使いドロドロ道と残雪に足を取られと言う難行を乗り越え

原見岩までノンストップで下った

「コーヒーでも飲もうか」

 岩にドッカリ腰を下ろし朝と変わらぬ風景の中で時の流れを忘れた

ホーホキケキョ~とウグイスが鳴いている

「やはり群馬だな ウグイスの鳴き声までも訛ってるぜ」 近くに居た男性が話している

群馬には訛りは無いずらよ~

(略)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

鳩待峠に戻るとゾクゾク下山する登山者に目を血走らせ揉み手で客引きする乗り合い運転手の姿

私達はベンチに腰掛け暫くそうした光景を眺めていた

「美しき尾瀬」のすすり泣きが聞こえそうだ

コメント (8)    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 神社に10月桜が開花 | トップ | 20日から北陸の旅へ »
最新の画像もっと見る

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
至仏山登山 (イケリン)
2019-10-17 18:35:09
たかさん こんばんは。
至仏山は山の鼻あたりから登るものだとばかり思っていましたが、地図を拝見すると違うのですね。
尾瀬ヶ原から見る至仏山はすぐそこのように見えるのですが、歩行5時間とは、簡単には登れない山のようです。
さすがに眺望は素晴らしいですね。

調べて見ると、最近の至仏山は、荒廃が進み貴重な自然を守るために、
毎年5月上旬から6月末まで閉鎖されているようです。
今では登ることのできない時期に登られた貴重な記録ですね。
おはようございます。 (ベル)
2019-10-18 07:12:56
至仏山山のこと知らない私には仏教に関係する山みたいに感じますね 渋ッ沢(しぶっつぁわ)こうなると全く読めません(笑)
たかさんの写真よく貼り合わせてますけど上手く合うものですね
実際やろうとしても角度などが若干ズレて上下上手く合うことは少ないと思うのですがいつもずれがない感心してみてます
コンデジなんかでは3枚自動張り合わせがあったりアイホンのようにパノラマ機能があったりして広範囲に取ることできるので時代を感じる技法です

「あんな所で寝てる、大丈夫なんですか?」って言われるほどやばい場所で寝てる雄さん 
“大丈夫なのかしら”と心配しながら又、寝てしまうたかさん お似合いです

見えてた景色が数分で見えなくなったり雲が一気になくなったりタイミングよく見えてよかったですね
イケリンさん、こんばんわ (たか)
2019-10-18 17:44:45
どうしたのでしょう、予期せぬ停電でパソコンが使えなくなってしまい今やっと復旧いたしました。

私達も出来れば鳩待峠~至仏山~山の鼻という周回コースを取りたかったのですが、この時 既に規制は始まっておりピストンを余儀なくされてしまいました。
登山者に限らず誰もが一度は行ってみたい尾瀬ですので大勢の人が入れば、それだけ山も荒廃してしまいますよね。
アヤメ平もフォークダンスが流行した昭和、ここで輪になって踊ったものですからみるみる荒廃してし私が十数年前に行った時も未だ養生している段階でした。
昨年、行った時にはスッカリ緑に覆われておりましたが、こうなるまで数十年と言う歳月が掛かってしまったわけですよね。
何時までも美しい尾瀬で有って欲しいと思います。
ベルさん、こんばんわ (たか)
2019-10-18 17:56:25
今、予期せぬ停電が有ったんですよ。折角お返事を書いたのに・・失礼してしまいますよねぇ。

あの当時は花より展望写真を撮る事に重点を置いていたものですから3~4枚 位置をずらしては写し繋ぎ合わせておりました。
光の加減で全く色が変わってしまう事も有りましたが、これはどうする事も出来ません。
今の様にパソコンで操作したりパノラマで写したりと言う機能が有りませんでしたから苦労しましたが、それでも結構、楽しんでやっていましたよ。

>大丈夫なのかしらと心配しながらまた寝てしまう
   たかさんて随分、無神経な人間!と思われたかしら。凄く思いやりが有り心の温か~い人間なんですけどね(笑)

天気予報が全く宛にならないのが山の天気です。特に尾瀬は変わりやすいです。
展望に恵まれるのも運次第ですね。
思い出の至仏山 (越後美人)
2019-10-19 10:17:43
至仏山は私が百名山で唯一登った山です。
今思えば、ハイキングだと騙されたにせよ、こんなに立派な山を登ったんですね(^^;
二度とこのような高い山は登れません。
騙されて良かった~(笑)

夏の登山でしたから花が無かったのでしょうか・・・
それとも、登るのに必死で目に入らなかったのか・・・
大好きな花の記憶が一つもないのが、今となっては残念です。

ウグイスの鳴き声が群馬なまり、というのは傑作ですね♪
いったいどんな鳴き声だったのでしょう~
聞いてみたいです。
いつもながら、お二人の登山はいろいろあって楽しいですね。
良い思い出の至仏山登山でしたね。
私も思い出して楽しめました~(^_-)-☆
越後美人さん、こんにちわ (たか)
2019-10-19 14:21:11
そうでしたよね、騙されて(笑)至仏山に登ってしまったのでしたっけね。 でもお蔭で百名山を制覇したのですからお友達に感謝ですよね。
写真を観て幾つか思い出せる所が在ったでしょうか?
至仏の夏花はハクサンチドリやアカモノ、ハクサンコザクラその他etc・・・尾瀬沼を見下ろせばニッコウキスゲが一面
そんな季節であったはずですが結構ハードな山ですものね。それどころではなかったのでしょう。

ウグイスは私達も笑ってしまいました。
ケキョでは無く「ホーホキキョ」だったのです。その「キ」が異様に高音だったんです。やはり上州訛りだったのですかね!
こんにちは! (チョコ)
2019-10-22 11:14:13
いつも山登りをする前は、たかさまのこの思い出に残る山シリーズで目的の山の記事を探すことにしているんです。
9月下旬の登山前には記事ないなぁ~と残念に思っていたのですが、今回のこのアップ!
大変嬉しく拝見しました(⋈◍>◡<◍)。✧♡
私のこの度の登山もお花の時期ではなかったので、お花の写真が少ないたかさまのご様子は、同じ景色のようでよい復習になりました。
旦那様のお昼寝、私の時も「あ、あんなところで寝ている! 大丈夫なのかなぁ」と思わず声に出して驚いてしまうようなお昼寝の男性がいらして、全くおんなじくだり、くすくす笑ってしまいました。
スマホで目をしょぼしょぼさせながら見ていた記事を、本日お休みでゆっくりパソコンで見せていただいてます。
チョコさん、こんばんわ (たか)
2019-10-30 20:34:49
コメントを頂きました時、旅行中だったものですから頂いた事に気が付かず申し訳ない事をしてしまいました。ごめんなさいね。
思い出に残る山シリーズを何時も読んで下さっているのですね! まぁ、何と嬉しい事でしょう!
このシリーズの頃は山頂からの展望写真に夢中になっておりましたので
今では考えられない程、花の写真が登場いたしません(花に興味を持つようになったのは10年位前からだったでしょうか)
チョコさんも至仏山に登られたのですか?
大らかでダイナミックな山ですよね。

途中から分岐を左折する笠ヶ岳は至仏山や燧ケ岳に隠れて今一、知名度が低いのですが
それだけにお花の宝庫で素敵な山です。お奨めの山ですよ~。

コメントを投稿

心に残る思い出の山」カテゴリの最新記事