英国グラモフォン誌が選ぶ”レーベル・オブ・ザ・イヤー2019”にPENTATONE [クラシック雑感]
「グラモフォン」(Gramophone)は、ロンドンにおいて発行されているクラシック音楽、特に商業音源に関する月刊誌である。
メディア媒体としては、雑誌とウエブサイトがある。
「グラモンフォン」誌は毎年グラモフォン・アワードを主催していて、分野ごとの最優秀録音を選出、表彰しているのだ。「グラモンフォン」誌のウェブサイトには、”1923年以降のクラシック音楽に関する世界的権威”であると書かれていて、最近では、その表記が”世界最高のクラシック音楽評論”に変わっている。
毎年年間を通しての表彰のグラモフォン・アワードの他にも、毎月12の録音がグラモフォン・エディターズ・チョイス(現在はグラモフォン・チョイス)に選出されるような賞もある。現在はどうかわからないが、自分の知っていた時代は、年間のグラモフォン・アワードの選出方法は、数人のグラモフォンのエディター(編集者)による1次審査と、一般市民によるインターネット投票による2次審査で決めていると聞いたことがある。
グラモフォン・アワードは、いろいろな部門別に表彰されるのだ。
アーティスト・オブ・ザ・イヤー
アルバム・オブ・ザ・イヤー
レーベル・オブ・ザ・イヤー
アルバム・オブ・ザ・イヤー
レーベル・オブ・ザ・イヤー
などなど。
日本のレコード大賞で各部門別があるように、それのイギリスのクラシック版と考えていい。
それでグラモフォンの彼らが言うには、クラシック界の世界最高権威と言っている訳だ。(笑)
それでグラモフォンの彼らが言うには、クラシック界の世界最高権威と言っている訳だ。(笑)
でも、この雑誌の年間のアワードに表彰されると、アーティストとしてのキャリアに箔がつく、というのも確かにあるかもしれない。自分も多少そう思っているのだけれど、巷の評判ではこのグラモフォンの評論というのは結構マニアックな選択・評論をするメディアで、ちょっと一般受けするような対象ではなく、かなり渋いところを狙う傾向にあるようだ。
ここのエディター達のメガネにかなうのは、なかなか大変そうだ。
自分がそう思うのも、過去にレーベル・オブ・ザ・イヤーにインディーズ・レーベルのChannel Classicsが選ばれたり、去年のアーティスト・オブ・ザ・イヤー2018には、レイチェル・ポジャーが受賞したりしている。
そんな年間のグラモフォン・アワードの”レーベル・オブ・ザ・イヤー2019”になんと我らがPENTATONEが受賞と相成った。
思いっきり驚いてしまった。(笑)
インディーズ・レーベルの受賞自体は、Channel Classics以来の快挙だ。
インディーズ・レーベルに受賞させること自体、やはり彼らの評価基準というのは、独特のものさしというのがあるのかもしれない。
でもうれしい。
そうすると気になるのは、なにが受賞理由につながったかだ。
グラモフォン誌のエディター達のどこに心の琴線に触れたのかを知りたい。
グラモフォン誌のエディター達のどこに心の琴線に触れたのかを知りたい。
グラモフォンのウエブサイトのレーベル・オブ・ザ・イヤー2019のページの投稿記事と、PENTATONEで紹介されているグラモフォンのエディターやPENTATONEのManaging DirectorやVice Presidentのコメントを和訳してみた。
そうすると受賞理由の骨子となるポイントが見えてきた。
PENTATONEというとどうしてもオーディオマニア御用達の技術主導型の高音質指向型レーベルというイメージが湧くかもしれないが、そこよりも今回の1番の受賞理由は、アーティストをとても大切にしている、アーティストの養成がうまいというところだった。
グラモフォンのエディターのジェイムズ・ジョリー氏によると
「PENTATONEは、アーティストに対して、必ず一定期間でのアルバムのレギュラー・リリースの姿勢を保証確保していて、アーティストに対しての擁護姿勢が完全であること。これはある意味、このレーベルの強みのひとつであると言える。」
そしてPENTATONEのManaging Directorのサイモン・M・エダー氏のコメント。
「我々がいままで抱えてきたたくさんの種類の音楽フォーマットを否定するものではなく、同時にこれらのフォーマットは共存していくものと考えている。CD、アナログ、ストリーミング、ダウンロード、ラジオ・・・我々はこれらのフォーマットをこれからも擁してくことになるだろう。
各々の伝送チャンネルにおいて、我々は、我々のアーティスト達や彼らの音楽が、最高に輝けるように戦略を立ててきた。
しかし最も重要なコミュニケーション・チャンネルがある。
それは我々にとって最も最愛のチャンネル。
それは我々のアーティスト達との対話である。
すべてはここから始まる。」
さらにPENTATONEのVice Presidentのレナード・ローレンジャー氏のコメント。
「我々のアーティストは、我々のレーベルの心臓部だ。彼らが我々がすることのすべての中心になる。このことが彼らの作り上げた作品に対する我々の大きな認識だ。その想いを我々は、アーティスト達と、そして我々の素晴らしいチームとともにいつも心の中で共有しているのだ。」
アラベラ・美歩・シュタインバッハー
アンネリーン・ヴァン・ワウエ
ヨハネス・モーザー
デニス・コジュヒン、
アリサ・ワイラースタイン
マグダレーナ・コジェナー
ウラデミール・ユウロフスキ
児玉麻里/児玉桃
山田和樹
そして
マレク・ヤノフスキ
(DECCAに移籍したけどユリア・フィッシャーもそうだった。)
ここに上げたスターたちは、PENTATONEを現在支えているスターたちだけれど、これはごく一部にしか過ぎない。いずれも若くて将来性有望なスターばかり。これだけの若きスターの名が連なった名簿はなかなか豪華なものだ。
そして、これらのスターたちは、必ず一定期間できちんと新アルバムを定期的にリリースする、そういうサポートがきちんと回っている。
今回のレーベルとしての受賞はそこを評価されたようだった。
PENTATONE=DSD/SACDというイメージがどうしても先行してしまうが、PENTATONEのManageing Diretorのコメントでは、いまは音楽業界の再編期に直面しているから、いろいろ考えていかないといけないと言っている。SACDだけではなく、Channel ClasicsのDSDダウンロードのNative DSD Musicにも音源を提供しているし、SpotifyやApple Muiscのストリーミングもやっているみたい。
SpotifyやApple Musicと言うと、フォーマット的にかなり落ちるし、PENTATONEの高音質のイメージが壊れそうなイメージだが、フォーマットは、あくまで伝送路の問題で、音源を売って利益を上げていくには、伝送路に拘っていてはいけなく、あらゆる伝送路で売り上げをあげて総合して利益をあげていくというやり方でないと今の時代生き残っていけないのでしょう。
PENTATONEのスターで楽しみなのは、最近日記でも盛んに取り上げている、彗星のごとく現れたクラリネット奏者 アンネリーン・ヴァン・ワウエ。
彼女のデビュー作「ベル・エポック」もさっそく英国のBBC Music Magazineのレビューに取り上げられて話題になっているようだ。
それでは、
グラモフォンのウエブサイトのレーベル・オブ・ザ・イヤー2019のページの投稿記事
PENTATONEで紹介されているグラモフォンのエディターやPENTATONEのManaging DirectorやVice Presidentのコメント
の和訳をこの後に紹介しよう。
●グラモフォン・アワード ”レーベル・オブ・ザ・イヤー2019”の記事。(ジェームズ・ジョリー氏著)
PENTATONEは、多くのレーベルがそうであるように、ミッション・ステートメントを持っている。その中には、このような誓約がある。”アーティストは、彼らすべてにおいてその多様性が尊重され、共通してひとつのことを行う。彼らは熱意と誠意をもって、最後の一滴までも絞って、創作性、スキル、そして仕事を完結させる決断力を持って音楽を作ること。”
いまの時代、このようなステートメントは、ほとんどのレーベルが主張していることだろう。
だが、今年のPENTATONEは、この高潔な感情項目に対して、明らかに十分と言えるほどのサポートをした。つい最近の9月頃に関して言えば、デニス・コジュヒンのグリーグ、メンデルスゾーンの小作品集のアルバムが我々グラモフォン誌の最優秀月間アルバム賞(グラモフォン エディターズ・チョイス)に選ばれた。
その評論の中で、マイケル・アッセイ氏はこのように認めている。
”ピアノ録音は、時たま心の琴線に引き寄せてくるものがある。・・・”
”ピアノ録音は、時たま心の琴線に引き寄せてくるものがある。・・・”
そしてPENTATONEが、アーティストに対して、必ず一定期間でのアルバムのレギュラー・リリースの姿勢を保証確保していて、アーティストに対しての擁護姿勢が完全であること。これはある意味、このレーベルの強みのひとつであると言える。
昨年の12月に、ヒューゴ・シェリレイ氏が、コジュヒンのことをこのように評した。”シュトラウス作品の気まずさ、独特の難しさを、ものともしない見事でありながら気まぐれなソリストである。彼はソリストとしては、いささか虚栄心が足りないと思われるが、彼の演奏は、そのシュトラウス作品の中の多くのゴージャスで叙情的な瞬間において、優しく誘惑的な趣きを持っていた。”
PENTATONEは、元フィリップスの役員メンバーのグループによって2002年に創立され、今尚、オランダのBaarnの街(ここはたくさんの国籍の人が住んでいる。)を本拠地としている。”高音質なサウンドに基づいた、素晴らしいが、決して派手ではない音楽の演奏力”という大きな哲学を育て続け、レーベルは成長し、一流のアーティスト集団の名簿を作り上げるようになった。(その中にはDGやDECCAからの移籍者もいる。)
現在、第2世代の役員メンバーにより(ここ数年、会社自体が大きなスリムダウンをして小さなチーム編成となった。)、レーベルは優れた形になり、より幅広く印象的なスタイルとして、我々の目(や耳)を捉えるようになった。
エディターズ・チョイス(グラモフォン編集者が選んだアルバム)
・Anna Lucia Richter のシューベルト歌曲集
・Tamara Stefanovich ”Influences”(バッハ、バルトーク、メシアンなどのキーボード音楽)
・ローレンス・フォスターのシューベルト・アルバム
・Andrew Manzeのモーツァルト・アルバム
・スイス・ロマンド管弦楽団のサン・サーンス&プーランク
・ジョナサン・モーザーのDutilleux and Lutosławski
・Melody Mooreのアメリカ歌曲集
・ウラディミール・ユロフスキのチャイコフスキーの白鳥の湖
・Tamara Stefanovich ”Influences”(バッハ、バルトーク、メシアンなどのキーボード音楽)
・ローレンス・フォスターのシューベルト・アルバム
・Andrew Manzeのモーツァルト・アルバム
・スイス・ロマンド管弦楽団のサン・サーンス&プーランク
・ジョナサン・モーザーのDutilleux and Lutosławski
・Melody Mooreのアメリカ歌曲集
・ウラディミール・ユロフスキのチャイコフスキーの白鳥の湖
●グラモフォン誌 出版・エディター マーテイン・クリングフォード氏より。
まず最初に、我々は、レーベル・オブ・ザ・イヤーを獲得するレーベルにどのようなことを望むのか?レパートリーに幅があること、そしてそのプログラムの作り方やアーティストが、革新的、クリエイテイブ、そして野心的であること。それらの条件を満たしたときに、チャンピオンになる。
そして、そのような彼らのアルバムは、レコーディング・クオリティの良さと同時に魅惑的なパッケージの素晴らしさの両側面を、我々に見事にプレゼンテーションしてくれないといけない。
PENTATONEは真にそのすべての条件を満たしている。
●グラモフォン誌 チーフ・エディター ジェイムス・ジョリー氏より。
PENTATONEは、元フィリップスの役員メンバー達のグループによって、2002年に創立され、たくさんの国籍の民族が住んでいるオランダのBaarnに本拠地を構えている。”高音質なサウンドに基づいた、素晴らしいが、決して派手ではない音楽の演奏力”という大きな哲学を育て続け、レーベルは成長し、一流のアーティスト集団の名簿を作り上げるようになった。
現在、第2世代の役員メンバーにより(ここ数年、会社自体が大きなスリムダウンをして小さなチーム編成となった。)、レーベルは優れた形になり、より幅広く印象的なスタイルとして、我々の目(や耳)を捉えるようになった。
●PENTATONE マネージング・ディレクター サイモン・M・エダー氏より。
グラモフォン誌の”レーベル・オブ・ザ・イヤー2019”を受賞したことは、真にやりがいがある認識で我々の新しい道への到達点でもある。音楽マーケットが大きな変革期に直面してきている上で、我々はいろいろなエリアで、大胆なチャレンジをおこなってきた。古いルールは適用しない。時代遅れのレーベル・アプローチはおこなわない。
過去の時代においては、我々のレーベルは音楽産業界において権威的な立場にあったかもしれないが、その役割は、いまの時代に合った大改造、大変革の渦中にある。
我々の役割は、来るべく将来の形態に関わる形を維持するために、再編し、徐々に展開・発展させていく必要がある。
でもそれは、我々がいままで抱えてきたたくさんの種類の音楽フォーマットを否定するものではなく、同時にこれらのフォーマットは共存していくものと考えている。CD、アナログ、ストリーミング、ダウンロード、ラジオ・・・我々はこれらのフォーマットをこれからも擁してくことになるだろう。
各々の伝送チャンネルにおいて、我々は、我々のアーティスト達や彼らの音楽が、最高に輝けるように戦略を立ててきた。
しかし最も重要なコミュニケーション・チャンネルがある。
それは我々にとって最も最愛のチャンネル。
それは我々のアーティスト達との対話である。
すべてはここから始まる。
今回の賞は、我々がいままで成し得てきたことの名誉に対して、そして、今後我々の道を続けていく上でのモチベーションの両方に対しての賞賛の証だと思っている。
●PENTATONE Vice President レナード・ローレンジャー氏より。
私が3年前にレーベルに参加したとき、私の同僚と私は、自分たちが文字通り白紙状態の前にさらされているような感じがした。ところがじつに爽快なまでのいろいろな挑戦をしていくことで、レーベルの名を発展させ、その活動を国際的にも広めていくことができた。
初期の頃の成功のときに作り上げられたもの、そして探求されてきたテレトリー領域は、我々のコアな価値であると同時に、それらは計り知れない巨大なものとしてこれからも残っていく。
PENTATONEは、我々の時代に、決して妥協したりしないアプローチ、最高度の野心を持って、”シリアスで重要な録音をするための明白な場所”であるべきようこれからも努力する。
皮肉などの意味はいっさいなく、これが我々の仕事についてのすべてだ。
我々のアーティストは、我々のレーベルの心臓部だ。彼らが我々がすることのすべての中心になる。
このことが彼らの作り上げた作品に対する我々の大きな認識だ。
このことが彼らの作り上げた作品に対する我々の大きな認識だ。
その想いを我々は、アーティスト達と、そして我々の素晴らしいチームとともにいつも心の中で共有しているのだ。
2019-10-22 22:25
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