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サラマンカホールのオルガンの音色を聴く [国内クラシックコンサート・レビュー]

岐阜サラマンカホールについては、どうしてもやり残したことがあった。


・それは辻宏さんが建造したパイプオルガンの音色をまだ聴いていないこと。
・ホール音響を大編成で聴いていないこと。


前回は、藤村実穂子さんのリサイタルだったので、ここのホール音響を語るには、どうしてももう少し大編成で聴いてみたいと思っていた。


コンサートカレンダーで上の2つの条件を満たすコンサートを探しましたよ。
正直両方同時に満たすのは無理かな、少なくとも2回は通わないといけないかな、と覚悟していました。


それが両方の条件を満たす素晴らしいコンサートを発見。


サラマンカホール開館25周年記念ガラ・コンサート


サラマンカホールは、1994年に開館ということで、今年で25周年。
それを祝おうという記念ガラ・コンサートなのです。


コンサートホールの開館〇〇周年記念ガラ・コンサートといえば、あのサントリーホールの開館30周年記念のときの凄さ。男性はブラックタイや礼服、女性はドレスに和服の正装のドレスコード、まさに祝祭という感じのホールの飾りつけ(ステージには花の飾りつけ)、これでもか、というほどの豪華な出演者陣に演奏曲目、本当に贅沢を極めつくすような凄いコンサートでした。


そんなイメージがあるから、このサラマンカホールの開館25周年記念ガラ・コンサートも相当期待しました。


というか、これは行かないとダメでしょ?


じつは今から5年前の20周年の祝祭コンサートが全国的にも話題を呼び、多くのファンの方から、「あの興奮を再び」とリクエストの声をいただいての今回の25周年記念ガラだったようです。


今回の記念ガラの出演者陣。


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ライナー・キュッヒル(ウィーンフィル・元コンサートマスター)
ヘーデンボルク直樹(ウィーンフィル・チェロ)
新倉 瞳(チェロ)
工藤重典(フルート)
荘村清志(ギター)
仲道郁代(ピアノ)
ヘーデンボルク・洋(ピアノ)
曽根麻矢子(チェンバロ)
石丸由佳(オルガン)
サラマンカホール・フェスティバル・オーケストラ
朝岡聡(司会)



凄いですよね。


パイプオルガンの演奏もあるようだし、オーケストラでの演奏もあるみたい。


これはもう即決でした。


これはどうしても行かないといけない、抑えておかないといけないコンサートだと思いました。

開館〇〇周年記念ガラはやっぱり凄い贅沢なコンサートです。


サラマンカホールに行くには、新幹線で名古屋まで行って、そこから在来線で岐阜まで行きます。そして岐阜駅からバスで20分くらい。(とても徒歩ではいけません。)バスの時間間隔が結構本数が少なくて、終演後は無料バスで西岐阜駅までのチャーター便のサービスをホール側で用意してくれます。その西岐阜から名古屋まで在来線で、そして名古屋から新横浜まで新幹線で帰ってくる、という感じです。


名古屋駅に着いたら、新幹線ホームや在来線ホームで、名古屋駅名物の立ち食いきしめんを食べるのがなによりの楽しみです。今回は立ち食いきしめんは新幹線ホームより、なぜ在来線ホームのほうがいいのか?を命題に取材してきました。


サラマンカホールはOKBふれあい会館の中の一角に存在します。


OKBふれあい会館というのは、岐阜県の公共施設のこと。会議室であるとか、岐阜県行政窓口、岐阜県の行政機関とかが密集している公共施設ですね。かなり大きな建物で、サラマンカホールはその中の1施設という位置づけ。フロントから入って、大きな広場が広がっているのですが、そこには岐阜県の地方銀行の出張所や、パスポートコントロールのような出張所もあります。


こんな感じです。
サラマンカホールは一番奥に位置します。


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サラマンカホール


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今日は開館25周年記念ガラ・コンサート


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さっそく開場。
今回の記念ガラを祝して、サプライズが用意されていました。


まずは特製ワイン。


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今回、25周年を記念して、同ホール名の由来となったスペイン・サラマンカ市のワイナリーにオリジナルラベルのボトルワイン「ラ・ゾーラ2016」の製造を依頼。今日のこの25周年記念ガラを祝して、サラマンカ市から直輸送され、こうやってホワイエで販売されていたのです。(1本3000円)


もう大盛況のようで、あっという間に完売だったようです。


今回のガラコンサートに来てくれたお客さんにはドリンク券のサービスがついていて、これと引き換えにこのワインを少々嗜むことが出来ます。お酒が弱い方は、ソフトドリンクも用意されています。


こんな感じ。


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自分は、もちろんこの特製ワインをチョイス。とてもフルーティーで甘口、舌で転がすと浸み透ってくる深い味がしますね。ワイン通でもない素人の自分でもその美味しさがわかります。



ホワイエは、さすがに正装という感じではありませんが、岐阜県地元の品格のあるお客さんが集まってくれたようです。自分もジャケット着用で臨みました。岐阜県地元のオーディエンスの方は、とても暖かい感じがしますね。東京と比較すると。


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そしてある意味、これが最大のサプライズ・イヴェントだったようです。


この記念ガラの2,3日前のギリギリに情報解禁で、みんなをびっくりさせよう・・・というより、情報解禁をこの記念ガラに合せて華を添えようという意味が強かったのかも?


本当にサプライズでした。


ぎふ弦楽器貸与プロジェク<<STROAN>>。


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ホールに寄贈されたヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ40挺を、意欲ある弦楽器奏者たちの支援・育成を目的として無償で貸与する取り組みです。この記念ガラで、ホワイエにその40挺が展示されました。


素晴らしいプロジェクト。


「弦楽器(STRINGS)」と、「貸し出し(LOAN)」の2つの意味を合わせて、「STROAN」なのだそうです。


今年、開館25周年を迎えたサラマンカホールが、音楽家を目指す若者たち、さらなる研磨を積む意欲ある弦楽器奏者たちの支援・育成を目的として「ぎふ弦楽器貸与プロジェクト<<STROAN>>を始動する。同ホールが愛知県在住の音楽愛好家から受けた、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ計40挺を弦楽器を学ぶ人たちに無償で貸与するという新たな試み。日本、イタリア、ポルトガル、フランスの製作者たちによる弦楽器は「サラマンカホール清流コレクション」と名づけられた。


貸与期間は原則として2年。


また、楽器の貸し出しにとどまらず、弦楽器のワークショップやマスタークラス、コンサートを企画し、コレクションの楽器が同ホールで演奏される機会を提供する。


ということだそうです。素晴らしいですね。

貸し出しは、来年2020年3月からスタートします。


貸し出しする人を審査する審査員長にチェリストの原田禎夫さんが就任していますね。


ホワイエに展示されているその傍にいた説明員の女性と少し話をしましたが、やはりターゲットは学生の若い人で、カルテット(四重奏)に貸与というのが予想しているところ、と仰っていました。もちろんそれに制限されることはありませんが。


40挺もの弦楽器をサラマンカホールに寄贈して下さった愛知県在住の音楽愛好家・間瀬穗積(ませほづみ)氏。穂積氏への感謝の意を表し、岐阜県庁にて感謝状の贈呈式が行われました。


いくら音楽愛好家とは言え、1人が40挺の弦楽器を所有している、というのは本当に信じられないこと。世の中には本当に凄い人がいるものだな、と思いました。


このプロジェクト、ホワイエの展示会場に、さっそくメディアが取材に入り、NHK岐阜放送局などで、オンエアされる予定だったり、と結構賑わっています。


素晴らしいプロジェクト、大成功してほしいですね。



さっそくサラマンカホール。
久し振り。1年振りだろうか。


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本当に美しいホール。息を呑みますね。


スミマセン、写真が横に傾いています。一生の不覚。ホール空間を撮るときって、この水平に撮るって結構難しいんですよね。かなりの枚数失敗します。いつもデジカメに水準計の機能が欲しいと思っています。


撮るとき、ちょっと焦ってしまいました。


ホールの内装空間については、前回来た時に大体の空間の撮影をしているので、今回は前回のときに撮影していないショットを狙おうと思っていました。


ここのホールはこのサイトラインから眺めた空間が美しいんですよね。


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ホール内装空間はブラウン系の色調なのだが、天井部が白くて、このブラウンとホワイトのバランスが、またなんともお洒落なバランス感覚で美しい。本当にセンスありますね。



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そして天井部分。ホールを紹介するときに、天井を紹介する人ってあまりいないと思いますが(笑)


ホール音響マニアからするとこの天井って結構大事なのです。
こうやって格子状の意匠でした。回折、反射などを考慮したデザインですね。


ホールへのエントランスの部分。


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これは前回も解説しましたが、もう一回。


これは世界最古の大学、サラマンカ大学(中央)と、サラマンカ大聖堂(左右)のレリーフを模した もの。石材に現地のビジャマジョール石を用い、スペインの職人によって三年かけられて作られ たそうだ。


真ん中の中央のサラマンカ大学レリーフのレプリカは、唐草模様の中に隠れている多くの動物たちや、翼をもった女性、どくろなどが彫られている。さながら我々の世界のよう。レリーフの中には一匹のカエルが彫られており、このカエルを見つけられたら幸運に巡り合える、といわれている。
 

そして左右のサラマンカ大聖堂レリーフのレプリカは、さまざまな楽器を持った人が点在し、音楽のある幸福な世界が表現されている。


各々のレリーフに、ホールへの扉があります。なんとも素敵な雰囲気。

このデザインは、このサラマンカホールの独特の特徴、意匠。
ここでしか観れない意匠ですね。



今回はこの座席で聴きました。


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さっそくホール音響について。


やはり前回の印象と変わることなく、素晴らしい音響と確信しました。

このホールの音響はやはりほんとうに素晴らしい。


前回のメゾ・ソプラノ・リサイタルで、その音空間の佇まいの美しさはしっかりと捉えることができたのだけれど、大編成で聴くと、その圧倒的な響きの量には驚かされる。


残響の長さはやや長めといったところで、かなり密度の濃い豊潤な音空間である。


自分は比較的前方の席だったので、実音である直接音は非常に明瞭で引き締まった音像で実音にその豊かな響きが被る感じには聴こえなかった。


ホール容積はかなり控えめなのだが、いわゆる大編成で飽和するという感じはいっさい感じなかった。音質自体は、暖色系からやや硬質に差し掛かるぐらいの感じの質感で、内装にオーク(楢)をふんだんに使っているそうで、全体に柔らかな空気感を感じて、やはり木のホール独特の品のある美しい響きだと感じました。


やはり素晴らしいホール、特に日本のコンサートホールは、海外のホールと比較しても、室内音響設計の素晴らしさは決して引けを取るどころか、歴史ある海外ホールの上のレヴェルに確実に超えていると思われ、その建築技術には本当に日本人として誇りを感じますね。


とくに海外のホールと比較して1番違いを感じるのは、ホールの静けさ、遮音性能ですね。


ホール空間に入った瞬間のS/Nの良さ、とくにNoiseレベルの低さは、日本のホールは圧倒的に海外ホールの上を行っていると思います。


遮音、防音のこの両方の技術が日本のホールは優れている。


海外の古いホールは、外の外気の暗騒音がそのまま中に入って来てしまっているような感じがしますから。


その静けさが素晴らしいので、実音や響きの消え去っていく余韻というのが、本当に美しい。
それは静けさのレヴェルが高いから実現できることだと思うんですよね。

全体の音の佇まいが美しく芸術的なのは、この静けさはかなり重要なポイントだと思います。


サラマンカホールの内装空間は、意図的な凹凸デザインはいっさいなく、建物の内装空間としてとても芸術的で自然な彫刻で、それが凹凸の役割を果たしているので、内装空間の美しさ、上品さを保ちつつ、乱反射で響きが豊かであるという両立性が成立しているのだと思います。



今回のプログラムで、巻頭のところに岐阜県知事 吉田肇さんのご挨拶、そしてサラマンカホール開館25周年に寄せて、ということで、サントリーホール館長 堤剛さん、いずみホール 支配人の殿納義雄さんがメッセージが寄せられ、祝辞を述べられていた。


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サントリーホール、いずみホール、そしてサラマンカホールは提携ホールで、特にいずみホールとサラマンカホールは姉妹ホールなので、この祝辞メッセージとても嬉しく思いました。


いずみホールは、先だってようやく訪問でき、感動したばかりだが、こうやってみると、いずみホールとサラマンカホールは内装空間の雰囲気は本当にそっくりで似ていると思います。


内装空間のデザインは、多少違うけれど、ホールに入った瞬間の視覚に飛び込んでくるあの雰囲気、イメージは本当にそっくり。全体がブラウン系の調度、色使いで、容積控えめのシューボックス(いずみホール 821席、サラマンカホール708席)、内装空間がオシャレでありながら凹凸を造っていること、そして椅子、そしてなによりも控えめな容積のショーボックス独特の音の濃い空間、響きの豊かさなど、本当にこの2つのホールはそっくりだと思います。



つぎにようやく本懐の辻宏さんが建造したサラマンカホールのパイプオルガンの音色を聴くことについて。


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今回のオルガニストは石丸由佳さん。


いままで自分は実演に接したことがなく、今回初めての体験。
とても美人で魅惑的なオルガニスト。


石丸さんはオルガン奏者への道を歩みはじめ、大学院在学中にデンマークとドイツに留学。権威のあるフランスのシャルトル国際オルガンコンクールで、みごと優勝を飾る。優勝後はヨーロッパ各地の教会から招待されてコンサートを行うようになった。しかしそれは“武者修行”とも呼ぶべきハードな日々だったそうだ。


帰国した現在の夢は、日本独自のオルガン文化を発信することだという。


そんな石丸さんが「オルガン・オディッセイ」というアルバムをリリース。


映画「スター・ウォーズ」のメインタイトルをはじめ、映画「惑星ソラリス」で使われたバッハの「われ汝に呼ばわる、主イエス・キリストよ」、ホルストの「惑星」、アニメ「宇宙戦艦ヤマト」の曲など、バラエティ豊かなアルバムになっている。なかでも、「スター・ウォーズ」は圧巻。


「スター・ウォーズ」は、このアルバムのために山口綾規さんが編曲。何十人ものオーケストラで演奏する曲を、オルガン奏者ひとりの2本(手)と2本(足)で演奏するというチャレンジ。まさに“ひとりオーケストラ”。


だそうです。


石丸由佳さんについては、YAMAHAの音遊人で特集されています。
上の記述もそこからお借りしました。




辻宏さんのパイプオルガンをスターウォーズ・メドレーで聴くのか!という感じで最初は驚いたが(笑)、これが結構パイプオルガンに合うんですよね。驚きでした。パイプオルガンの音色を確認するには、あまりに十分過ぎる素晴らしいオルガン版編曲だと思いました。


石丸さんの説明トークで、このパイプオルガンの説明があった。


サラマンカホールのパイプオルガンは、スペイン様式と北ドイツ様式が混ざったもの。


パイプの使用本数 2997本で3000本まで後3本足りないのだが、それはオルガン上部にある3人の天使が吹いているラッパである。


そのパイプオルガンだが、この写真のようにオルガンの鍵盤の両側にストップ(音程を決めるボタン)がついている。



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(C)サラマンカホールFB


石丸さんがオルガンを弾くとき、その両側に女性の人が付き添っているんですよね。
最初、譜めくりの人なのかな、と思いましたが、それでも両側に2人いるのはおかしい。


それは、いまのパイプオルガンはかなり電子化されていて、使用するストップの登録などができるようになっているが、サラマンカホールのパイプオルガンは従来の手動式なので、ストップ操作をされる人が両側にそれぞれついての(2人)演奏だった、ということだった。


さて、辻宏さんのパイプオルガンの音色を、スターウォーズ・メドレーで聴いたわけだが、とても重厚だけど、やや軽めの暗さというか重みがあって、ヨーロッパの教会で鳴っているような本場の音だったように思う。


日本の場合、オルガンを聴くのは、コンサートホールでぐらいしかなく、本場ヨーロッパの教会で聴くようなシチュエーションはあまり自分は、経験していないから比較や詳細な感想は述べられないけれど、ヨーロッパの教会で聴く本場のオルガンはこのような雰囲気なんだろうな、という気持ちがありました。


辻宏さんが修復したサラマンカ大聖堂の鳴らずのオルガン「天使の歌声」のなんと表現したらいいか、そういう遺伝子がきちんとレプリカされていたように思う。


サラマンカホールのパイプオルガン。45のストップを持ち、三段手鍵盤にペダルから成る、辻さんの制作に よる楽器のうち最大規模のもの。


なぜ古いオルガンを修復するのか?
修復作業とは、元に戻すことであって、決して改良することではない。


古いオルガンの音を聴いてみると、ほんとうに美しい音がする。新しいオルガンの多くは、古いオルガンほど美しい音はしない。そうやってイタリアやスペインの古いオルガンを、5台修復し、その経験をもとに、81台のオルガンを制作してきた辻さんの最高傑作のオルガンの音色をここでちゃんと聴くことができました。


本懐を遂げたというところです。








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