30年くらい前、アメリカから帰国して、家に引きこもって音楽の研究に明け暮れていた僕は、チャーリー・バナコスというボストンの先生からジャズ理論の個人レッスンを受けていました。
チャーリー・バナコスはとても素晴らしい先生で、マイク・スターンなど、多くの有名なジャズプレイヤーが彼に学んでいました。
日本とアメリカなので、僕が課題を録音したテープを送り、二週間後くらいに、手紙で講評と先生の書いた楽譜と課題が返ってくるというかたちです。
チャーリー・バナコスの授業はアイデアに満ちていて、驚きの連続でした。自分の研究と成果を惜しげも無く教えてくれました。
ほとんど人に会わず、孤独な作業をしていたなかで、先生とのやりとりは僕の心を支えてくれました。
コロナウイルスの影響で外出がままならないニュースを見ていると、独りで勉強をしていた頃のこと、チャーリーバナコスとの素晴らしいやりとりを思い出します。
外出しての行動がままならないのはとてもつらいことですが、見方を変えれば、勉強するには悪くない環境です。
コロナウイルスの影響で、ヤマハなど閉鎖する音楽教室も多くありますが、通信でのサポートをしているところもあると聞いています。
僕の教室も、生徒の約三分の一は僕のオンライン通信レッスンを利用しはじめています。
バークリーのあるボストンも、冬はとても寒く、外へ出る気など起きないところです。だから、良い大学がたくさんあるんだと思います。
その癖が抜けずに僕はヒキコモリになってしまいましたが、おかげで思う存分の研究ができました。
コロナウイルスは音楽を愛する人にとってとんでもない厄災ですが、こうした時期は、人の見えないところで一歩でも二歩でも先に進むチャンスでもあるように思います。