授乳に悩む女性への物語。こういう話でも小説になるんだなあと感心した。登場する悩みは、悩むを持つ女性には切実だと思う。孫の誕生で私も急に関心を持った。おっぱいが張って張って痛くてしょうがない。おっぱいが出ない。おっぱいが痛い。働きに出るので、おっぱいを上げるのを止めたい。授乳中のわが子が突然死してどうして良いかわからない。こういうお母さんたちが一人で悩んでいるのを、助けるのが登場する助産師寄本律子。助手は看護師見習いで若い未婚の田丸さおり。若い母親が相談に訪れて問題が解決するのを見て、さおりも成長するという物語。
完全母乳で育てなければならないと思いこんでいる若い母親は相談する相手がいないので、もっぱらスマホを頼りに育児していた。乳頭が陥没していて赤ちゃんが母乳を飲んでくれないのが悩み、恥ずかしくてそれを夫にも相談できない。助産師の律子は優しくそれをサポートしてあげると、赤ちゃんが母乳を飲んでくれる方法がわかった。
次の母親は、引っ込み思案の専業主婦。うまく行っていた授乳だったが、ある日を境におっぱいの出が悪くなってしまう。原因がわからない母親は律子のところに相談に行く。すると、おっぱいが出る仕組みについて説明してくれた。母親の母乳の量は、赤ちゃんの成長とともに変化する。出が悪いと思いこんで、粉ミルクを追加で与えていたので、その分母乳が少なくなってしまったという。
弁護士でパートナーを目指すキャリア志向のシングルマザー。母乳を上げる時間が取れず、搾乳している。ある時、乳房の異常な腫れに気づいて律子に相談した。赤ちゃんが大事なのか、それともキャリアなのかを問われた母親は、どうしてシングルマザーなのにこの子を生んだのかを思い出す。上司に相談して育児に時間を割ける仕事に転職する決断をする。
3人目の子供が一歳になったのをきっかけに復職すると決めた母親が、母乳を止める相談に律子を訪れた。1歳の子供に母乳をやめることをどうして伝えられるのか。それは、おっぱいを見せないこと。入浴も服を着たまま。泣いても粉ミルクを与える。おっぱいという呼び名も「乳房」と変え、赤ちゃんには、乳房に油性ペンで似顔絵まで書いてもうおっぱいはないんだよと教えた。本書内容はここまで。
出産を控えて不安がいっぱいの若いお母さんがこの本を手にとって読んでくれたらどんなに安心できるか、想像してしまう。良い本だと思う。