緋色の研究 | 偽・乱筆記~himagine~

偽・乱筆記~himagine~

当たり障りのない日常の日記や雑記の類です

すっかり忘れていたが私が沖縄を訪れるのは初めてではなかった。
2000年頃に僅か1年間だけ会員だったアムウェイのeventに誘われ、
その会場が沖縄だったのだ。飛行機に乗ったのもその時が初めてだった。
当時付き合いの有ったヤツに「絶対自分のためになるから!」
みたいなことをしつこく言われ続けて、
私はその頃殆ど一文無しの生活だったので
飛行機代だけでも金がかかるのが嫌だったのだが、
「行けば何倍でも稼げるようになるから!」
とかホントにしつこく言われ続けて最後は根負けした。
殆どソイツに着いていっただけなので
どこに行ってどう移動したのかは全く覚えていないのだが、
2度と泊まることのなさそうなやたら高そうなホテルに泊まり、
そこのpoolsideでパーティのような催しに参加した。
最後は盛大に花火が上がって豪勢なものだった。
「あの人はダイヤモンドだ」
「隣に居るのがその奥さんでサファイアだ」
などと次々と権威的に紹介されたりした。
宝石の種類はアムウェイの中のrankで、
かなり上位の稼いでる人たちだったが
私はいまいち関心が高まらず敬意が全く湧いてこなかった。
私はそういうところが失敗者たる所以なのかもしれない。
結局その時のことがきっかけでその頃付き合いの有った連中とは
その1年限りで会わなくなっていった。
私の窮状など全く目に映らず実費のかかることばかり勧めてくる
ソイツの無神経さに腹が立って、
それ以降一切の誘いに乗らなくなったのだ。
それから数年経って私も仕事に就き何とか食い繋いでいた頃、
ソイツから久しぶりに電話があり1度だけ会ったが
その時は別のネットワークビジネスをやっていて、
本当かどうか、或いは実現したのかは知らないが、
近々彼女とハワイに移住する予定だとか言っていた。
そしてまたもやその新たなネットワークビジネスに誘われたが、
さすがに今度は最初からきっぱりと断った。
「アムウェイもいいんだが今度のはmakerがやってるから
品質には自信があるモノばかりなんだ!」
と、詳しい話を聞くと確かに凄そうに思えてくるから
ソイツは営業力・行動力が半端なく秀でていて、
友人知人も多かったから適性の高い分野だったと思う。
しかし私はどうも独りの時間が好きな内向的な人間のようで、
ネットワークビジネスは不向きで
心身の負担にしかならなかった。
他人との会話から新たな知識や情報を得ることが多く、
それが思考の活性化に繋がることも多いと思うが、
本を読んだり独りで思索に耽っている時の方が
私の脳は遥かに気持ちの良い充実感を感じるのだ。
それに日本人社会の社交性は“言葉と思想が乖離した感じ”があり 、
しかもそれが正しいこととして礼讚されている風潮が、
私には真性の虚言癖に思えてしまい、
どうしても気持ちが悪くて嫌悪感を抱いてしまうのだ。
“本音と建て前”とかよく言われているヤツだ。
そもそも話していることが虚言で
言葉通りに受け止められないのだから、
“真面目に”話すことも意味を成さない。
“真面目に”というのは“正直な気持ちで”というnuanceに近い。
実際に私は他人と“真面目に”会話した記憶があまりない。
だがそう感じているのはどうやら私だけのようで
多くの人たちはこの世界で幸福な生涯を送っているみたいだから
単に私が理解不足なだけなのかもしれない。
とはいえ人生の大半を嫌悪感と共に生きてきて、
それを悪いとも思ってないんだから私も今さら変わりようがない。
かくして今回の旅は独りで南の島々を巡っている。

那覇では2泊して、その翌朝早く与那国島へと向かった。
そこで特に行きたかった場所は2ヶ所。
先ずは島の東側へと歩き始める。
歩き始めてすぐ、1台のセダンが私の傍に停まった。
中年代の女性が「行き先が同じなら乗って行きませんか」と
親切に声をかけてくれたのだ。
私は“歩く旅”が性分なものだから丁重にお断りしたが、
優しい気持ちに出会えたことを心から嬉しく感じた。
と同時に女性が見知らぬ初見の男性を車に乗せる判断をしたことに
些かの危惧を感じた。
偶々私は多少変態だが猫が大好きな概ね善良な男だ。
だが日々報道とか見ていても悪い男なんざ山ほど居る。
だから私は軽々しく他人を信用しないし、してはいけない、
というのが考え方としては正しいと常々思っている。
まぁ、海外ならともかく日本の国内なら
そんなに固く考えなくても良いのかも知れないが
油断は無い方が良いに決まってる。
それから少し歩いた島の南端で行きたかった場所の1つ目に到着した。
そこはかつてよく“視た”場所だったが“来た”ことはない。今回が初めてだ。
そこは昔視ていたドラマ『ドクターコトー診療所』のロケ地で、
その際に使われていた建物をそのまま保存して観光名所にしているのだ。
当時、名作だと思って視ていたがあれから10年以上経ち、
その場所を訪れてあまり変わらない風景を目にして、
時の流れの悠久さを感じた。
そして私だけが当時のまま取り残されているような寂寥感を感じた。

この嫌な感覚を私は時折感じる。

水平線を挟んだ空の淡い青と海の深い碧とが共存する風景は、
マーク・ロスコの作品のようで、
空に浮かぶ雲の形や海の水面の揺らぎも面白く変化して、
行く先々で私の目を飽きさせなかった。
たまに目につく人の捨てたゴミだけが汚らわしくて仕方なかった。
次は島の南端に沿って続く道をニンニキニキニキ西へと向かう。
そこには有るんだ“日本の最西端”♪ 
そこが行きたかった場所の2つ目だ。
当初はそこまで歩いたら夕方くらいになっているであろう、
と計画を立てていたのだが、島の南端の道路は馬糞まみれで、
馬糞だけなら畑の肥やしみたいなもんで臭さも許容範囲だったのだが、
それに群がる蠅の数が半端無く、
私と馬糞との区別がつかないのか(実際大差無いw)
私にまで集り始め、腕や顔に平然と留まってくるので
あまりゆっくりと立ち止まって景色を楽しむこともできず、
その場を脱け出したい一心から早足での移動になり、
昼頃には西の果てまで到着してしまった。
時間にかなりの余裕ができてしまったので
仕方なく街中で昼食を食べられそうな場所を探したところ
それが意外に大変だった。
昼間から開いてる店が皆無で、
ようやく1店だけ開いていたカフェを見つけてそこでパスタを食べた。
それどころか柄でもないのに食後にケーキまで食べた。
それからしばらく時間を潰してから
予定より大分早かったが一旦宿にチェックインした。
そこで機器の充電をしている間に、
身体をウェットタオルで拭いて幾らかでも綺麗にして、
暑くなっていた体温を下げた。
そしてある程度身体を休めてからまた時間を見計らって
再び“最西端の碑”の場所へと向かった。
昼間は私以外にも人が居てあまり好き勝手に散策できなかったのだが、
夕刻は私一人だった。
それで日没までは少し早かったが
日本の一番西側でゆっくりと夕陽を眺めることができた。
その後“日本で最後の夕陽を見られる丘”へと向かい、
そこでも日本で最後の夕陽を眺めることができた。
私一人だと思い、独り言を喋りながら写真やビデオを撮っていたが
若い女性が少し後ろで写真を夕陽の写真を撮っているのに後で気付き
独り言を言っていたのが少し恥ずかしくなったりもした。

また翌朝早く宿を出て朝一の飛行機で石垣島へと行き、
そこからさらにバスで港まで移動し、
そこから船に乗り換えて波照間島を訪れた。
事前に波照間島に行った人の旅行記を参考にし、
船が相当揺れて酔いやすいという情報を元に
前日昼のパスタ以来食事をしてなかったので、
波照間島では先ず真っ先にランチ営業をしている店に向かった。
(尚、船の揺れは大したことなかったw)
そこでは1日ぶりの食事だったので
雑穀米大盛且つお代わりも大盛で食べた。
それから島の東側へと向かい時計回りに歩いた。
そしてその道中で今度は日本の最南端に向かった。
かんかん照りの暑さと昼食を食べ過ぎたせいで
conditionがいまいちの中、
星空観測所入口でようやく見つけた自販機で
水分補給しつつ消化を促進しようとカフェオレを買った。
“中では飲むな”と観測所の入口には
口うるさく注意書きがあったので
私は建物の外に出てカフェオレをイッキ飲みしたところ
吐き気を催すほど体調が悪くなり、
観測所の中は見学せず近くの日陰で少し休憩してから
どうしても行きたかった日本最南端の碑までは気合い出歩き、
そこからは急遽宿に向かい、そこで一休みすることにした。
そしてまた器機と体力を充電すると
時間を見計らってまた島の西を目指した。
先ず初めに“珊瑚の浜”と言われる美しい名称の海岸に向かったが 、
地図に記された先は樹々が自然のまま生い茂った雑木林の狭間で、
そこは人が管理してる痕跡も、人の訪れた気配も感じられない場所で、
辿り着けそうな自信が持てず途中で断念した。
次に“ぺー浜”と言われる場所を目指すと“珊瑚の浜”と
似たような場所だったが比較的歩けそうな狭間だったので
深い碧の中に分けいって進むと
そこは私以外誰も居ない秘密のbeachで、
そこでしばらく沈み行く夕陽を見ながら
“珊瑚の浜”も恐らくは茂みの先に在ったんだろうなぁと、
途中で諦めて行かなかったことを少々後悔していた。
この時すでに日没予定時間まで20分くらいだったが、
1ヶ所諦めた負い目もあり頑張って最後にもう1ヶ所行くことにした。
この日最後に訪れたのは“ニシ浜”という海岸で、
ここには結構沢山の人が居た。
私は水平線に触れようとする夕陽の緋さに
すぐさま心を奪われてしまっていた。


 

 

 

 

【蛇足】
長旅を終えて…、
我が家の安いbedが一番寝心地いい!
首枕邪魔ぁ!折り畳みハンガー邪魔ぁ!洗濯紐使わなかったぁ!
現実世界だぁ!重力重ぉ!仕事嫌だぁ!w