長年欲しかった戦前の高彫指輪がやっと手に入りました。この指輪は刻印から判断して天野工場で製作されたもので、私の所有している資料に同デザインのものが掲載されています。この資料は大正8年に各宝石店に見本として配布されたカタログで、この指輪の製作時期もその頃のものと思われます。ただし、純金の指輪は昭和に入ってからもずっと造られているものですから、これが大正時代のもの、と断定することは難しいのですが、全体のもつ雰囲気や彫りの細やかさなどからみて、少なくとも戦後のものではないと思います。私的にはやはりカタログ前後の大正時代のものと考えています。

天野工場が得意とする型打ちで大量生産されていたものとはいえ、型から抜いた後に丁寧な彫りを加えており、ジュエリー先進国の欧米諸国でも真似できない日本独自のパターンの指輪です。ちなみに私が「これは戦前のものに間違いない」と思った高彫指輪はこれで3点目です。

 

重さは約2匁ですが、真ん中がぽっこり膨らんでおり(裏抜きはしていません)、実際の重さより大きく見えます。少し下から写してみました。

 

斜めです。

 

 

アームです。

 

彫りが丁寧ですね。

 

「天野工場」のカタログです。よくわからないのですが、天野工場は天野時計宝飾品株式会社の貴金属品製造部門、といったところでしょうか。

 

そこに掲載されていました本品の図です。「白金入」とあるのでどこかにプラチナ象嵌が施されていたのでしょうが、この指輪にはそれらしい跡がどこにもありませんので、触らずにもうこのままにしておきます。

 

刻印です。天野の刻印と縦に「純金」の刻印があります。

 

指に着けてみました。裏側は巻きになっていてフリーサイズです。この指輪は約11号なので女性が着けていたのでしょう。