ある日、スタッフルームにて(♯01) | 高野山への道

ある日、スタッフルームにて(♯01)

紆余曲折あって、動物病院に転職した。
右も左もわからないまま、ちょうど2ヶ月経った。

ある日、スタッフルームでいつものように遅い昼食を摂っていた。
隣では、院長先生が手術をしている。
ピーッ、ピーッ、ピーッ、ピーッ、と、規則正しく何かの音が鳴っていた。

初めてここにきたときも、院長は手術をしていた。
診察室でずっと待っていたが、ピーッ、ピーッ、の音が苦手で、意味もなく緊張してしまった。
4月なのに汗だくで院長は手術室からでてこられたが、私の知ってる大阪での院長とは違う人に見えた。

さて、その日の昼休み、お弁当を食べ終わり、休憩時間を謳歌すべくお茶を飲みながら他の人たちと談笑していた。

その時、スタッフルームの引き戸が静かに開き、院長が顔を出した。
スタッフの談笑がびたっとやんだ。
ピーピー音も止まっていた。
普段は(割と)にこやかな院長だが、まじめなこわい顔をしている。

 

諫山創 「進撃の巨人」8巻より抜粋


・本文とは余り関係ありません

院長は、私の顔を凝視していた。
あれ、またなんかやらかしたかと思ったが、意に反して、出てきた言葉は、

(,,゚Д゚) 
「・・すけろく」

次のミッションはすけろくか。

あたふたと弁当箱をしまい、つぶやきの指示を出して診察室に戻った院長を追いかけた。
他の人達には、なにか大事な密命を帯びて走り回る事務員さんに見えたと思う。

 

つづく