基本的に俺はこのブログに、「これ書いたら喜ぶ人多いかな」とか「これは大いに役立つだろう」と、どこかで意識しながら書いている。


……ただ、今日は、俺からどうしても伝えたいと個人的に思っていることを、伝えさせてもらいます。



……こないだの広島。


……広島に来たなら、どうしてもやっておきたいことがあった。



……辻昌建(まさたて)。

享年30歳。

……お墓参り。


……。



詳しくは、また話す機会もあるだろうけど。


……どうか、目を背けないで聞いてほしいことがある。


……。


……ボクシングを始めた高校生の頃、ものすごく尊敬していた先輩がいた。

岡部誠さん。

すげー強くてカッコ良かったし、憧れた。


……。


……岡部さんは、車椅子での生活を余儀なくされている。


顔は歪み、話す言葉も、頑張って聞いてもほとんど分からない。


……もうずっと会ってないから、実際は今頃どこでどうしてるのか、分からないのだけれど。


……そもそも自分が一方的に憧れていただけだから、連絡先とかも分からない。


……。


協栄ジム時代、違う先輩が二人、試合でのダメージが原因で亡くなった。


一人目の津田さんは2度目の手術が失敗した後、ずっと眠ったままで、10年後そのまま意識が戻らない状態で、亡くなった。

もう一人の大雅アキラさんは、試合後脳内出血で入院後、数日してから亡くなった。




……帝拳ジムに来てからも、一人ジムメイトを亡くした。


辻昌建。

享年30歳。

……2009年だから、もう9年前か。

……生きてれば39歳。


……今頃もう引退して平和な毎日だったろうな。


……割と無口な性格で、そんなに話した記憶もないし、特に親しかったというわけでもない。


……ただ、同じジムで同じ時期に、同じ夢を追った同志だ。



……。

リング禍(か)は、俺にとって、偶然のアクシデントなんかではなく、定期的な悲劇だった。


……。


普段、文字にチャラチャラ装飾を付けないことに何気にこだわっていた。けれど今日だけは使わせて下さい。




……俺のボクサー日記、他の全てを忘れてもらっても構わない、俺が個人的にあなたにどうしても伝えたいことが、1つある。

















今のボクシングのストップの基準は、遅いんだってこと。

遅過ぎるんだってこと。

ボクサーという人種は、周りが止めなければ文字通りに、……本当に文字通りに、死ぬまで戦い続けるんだってこと。



……。

ストップが早くなれば、それだけ「奇跡の逆転KO」なんかも減る。

正直スリルは減る。

……けれど「人が死んだって構わない、自分が楽しむほうが優先だ」。

そう思う人は、そんなに多くないはずだ。


……仮に。

もしそういう人が多数派になったならば。


ボクシングなんてこの世からなくなってしまえばいい。


人の命を犠牲にした娯楽なんて、あっていいはずがない。


……トレーナー、そしてレフリーが、本人以外の第三者として、責任持って試合を止めなければならない。

命を守らなければならない。


……その人達の判断を、決して非難しないでほしい。


……ボクシングは、本当に危ないから。

……ボクシングは、本当に人が死ぬから。


……海外では「ボクシング廃止論」は根強く残っている。


これからも何も変わらずに、犠牲者を出し続けるならば、俺もボクシング廃止論に賛成せざるを得ない。


……けれど俺は、自分の半生を尽くしてきたボクシングを、無くしてほしくはない。


これからも、ずっと、あり続けてほしい。


……そのために。


ボクシングによる犠牲者、ボクサーになってしまったが故の代償としての死。


これだけは、根絶したい。


ボクシングを、胸を張れる形で残したい。

そこにタブーや見て見ぬフリがあってはならない。


……正面から、それを見つめ。

検討し、議論をし。

どうか、これ以上リングで命を落とすことがないように、それだけを切に願う。


関係者の皆様、一人一人のファンの方々、どうかご理解ご協力のほど、よろしくお願い致します。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

辻が眠っている広島平和霊園。……辻は、おそらくお婆さんと思われる方の隣に、眠っていた。今、天国でどんな思いでいるのか……。



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