時間の陥穽107
ギリシァ大哲学者の三哲、なかでも「ロゴス」は「神の言」が世界創造の始源であることを明示はしませんし、世界の終末にも明快な解答を与えないことに不足を感じるのは何故なのか。人間は生を持って生まれ死を持って終末を向かえます。其のこと故に、普遍・永劫は自らの生が恵まれたものであれば其の永劫を、不遇なものであれば生命体系を超えての救済を求めるのは歴史が示します。ソクラテスが毒杯を煽って神の元へ行くとは言わなかった以上、ギリシァ哲学ではピタゴラス派を除いては、見掛け上認めていた神話信仰以上のものは見られません。「永遠」は左程に重視されなかったことはギリシア神話の主神たる全知全能の存在である筈のゼウス(Zeus)は、人類と神々双方の秩序を守護・支配する神々の王ゼウス率いるオリュンポスの神々と、父クロノス率いる巨神族ティーターンに戦いを挑んだ10年に渡る大戦争「ティタノマキア(Titanomachia)」が証明しています。また、ゼウスが父クロノスに戦いを挑んだ対敵の属性がクロノス、「時」を神格化したものであるのは永遠を問うギリシャ思想史の皮肉です。ゼウスを筆頭とするオリュンポスの神々は「ティタノマキア」に勝利するまでは「時間」の支配下にあったことになり、古史思想にあって「時間」が重視されていたことの証となります。
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