時間の陥穽229
インフレーション理論ではインフレーション前の大きさは、直径10のマイナス34乗cmとされていますから、物質をこれ以上には細分化できない究極の粒子といわれる素粒子よりもはるかに小さかったということになります。より幾何学的には「点」の概念に限りなく近付いた存在だとも思われます。仮に、例えば自分自身の肉体に「有・在・存」しても気付かれも知れない質量さえ未だ発生しない蜉蝣のような全き虚ろな存在、其れがインフレーション理論ではすべての世界の根元だというのです。今現在時点は物理天文科学は宇宙創成論観測の時代に突入したといいます。現代は世界創生理論が観測物理科学の結果に委ねられようとしているのです。なかでも最も期待されるのが、重力波の観測です。COBEは、宇宙が誕生した頃の状態を知るための手がかりになる「背景輻射」赤外線とマイクロ波の放射を観測するために、NASA(アメリカ航空宇宙局)がはじめて打ち上げた人工衛星ですが、その観測データが捉えるのは宇宙が創成してから30万年も経った後の電波。それでも宇宙スパン(Cismos Span)で捉えれば僅かなものとは云えます。それ以前の宇宙の生成経緯は密度の高い粒子に電波が阻まれており今の科学力では残念ながら観測することができません。重力波というのは、巨大な星が爆発を起こした時などに周囲の空間が歪み、それが波となって宇宙に伝搬するもので、非常に透過率が良く、宇宙の晴れ上がり(clear up of the Universe)、ビッグバン理論において宇宙の始まり以来、初めて光子が長距離を進めるようになった時期、宇宙の晴れ上がり前の状態も観測できるのです。ですから、より遠くの重力波を観測することで、インフレーションの瞬間、また宇宙開闢(かいびゃく)の瞬間さえも見ることができるよう物理天文科学に期待が集まっています。
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