時間の陥穽275
1989年にアメリカ航空宇宙局(National Aeronautics and Space Administration/NASA)によって打ち上げられた人工衛星COBEが、宇宙が誕生した頃の状態を知るための手がかりになります。「背景輻射」(赤外線とマイクロ波の放射)を観測するために、NASA(アメリカ航空宇宙局)がはじめて打ち上げた人工衛星COBEが行った観測では、宇宙マイクロ波背景放射は、粗方、物質と熱平衡状態の放射が出すエネルギー密度「放射輝度」分布を表す法則に則ったプランク分布と一致するものでした。此の観測に拠れば、かつての宇宙誕生後約37乃至38万年の宇宙の状態が宇宙が熱平衡状態にあったことを意味しています。且つ、其の温度が方向には関わらず、粗方、一定であることは宇宙は局所的には違いはあっても、大きなスケールで全体を見ればどの方向も同じような性質を示しているというのが「等方性」であり、宇宙膨張の速度にもこれが成り立つと考えられる原理、基礎物理学に基づいていて、ビッグバンの名残である宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の観測からも支持されている等方性の原理を証明するものでした。更には、約10万分の1の大きさの温度の揺らぎが存在することも明らかになりました。この温度の揺らぎは、のちの宇宙の構造形成の種となる密度揺らぎの存在を裏付けるものとなっています。
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