時間の陥穽334
真空を物理科学は何の様(どのよう)に捉えて来たのでしょう。近代物理学から現代物理学への発展への功労者、電磁気学の創設者J・C・マクスウェルや電波の発見者H・R・ヘルツらは、真空空間に光や電波の類である電磁波を伝える媒質としてなんらかの物質として「エーテル」の存在を信じていました。「エーテル」とは、古代ギリシア時代から 20 世紀初頭までの間に想定されていた全世界を満たす1種の物質。古代ギリシアの哲学者アリストテレスが地水火風に加えてエーテルを第5の元素として天体の構成要素としたのに始まります。近代では全宇宙を満たす希薄な物質とされて、粗方、認証されていました。ニュートン力学ではエーテルに対し静止する絶対空間の存在が前提とされていたことには要注意です。且又、エーテルが光や電磁波の媒質とも考えられていました。 ところが、19世紀末には、エーテルに対する地球の運動を確かめるため A.A.マイケルソンが E.W.モーリーとともに行なった光の干渉実験、実験の精度は十分であったにも関わらず、この肉的ための位相差は見出されなかったのです。エーテルに対する地球の運動はまったく検出されなかった。つまりは、関係すら見い出すことは無く、エーテル仮説に重大な疑問を提出し、ローレンツ収縮の仮説を経て、A・アインシュタインが特殊相対性理論を構成するにあたって光速度不変の原理を確立、エーテルの存在は否定されます。
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