楽しんでこそ人生!ー「たった一度の人生 ほんとうに生かさなかったら人間生まれてきた甲斐がないじゃないか」山本有三

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出物腫れ物所嫌わず(インド紀行2)

2020年11月28日 04時42分07秒 | 海外旅行1
(出物はれ物、ところ嫌わず)

人は生きるために食べる。
食べれば出さなければならない。
その出物の話である。


(フマユーン廟入り口)


(フマユーン廟)

初日はデリー観光である。フマユーン廟へ行った。
廟と言うからにはお墓である。
廟は広大な敷地に緑の芝生、南国の木が植えられており、
石造りの壁に囲まれ、石を組み立てた城を思わせる。
世界遺産のタージマハルといえば、
すぐ想像していただけると思うが、
その原型となった廟である。

フマユーン廟へ石段を登り中に入ると、
大理石造りの石棺が置いてある。
これはレプリカで本物は地下にあるという。
盗掘を恐れたのだ。


(レプリカの墓石1)

古代遺跡には、お墓のレプリカが多く、
本物は盗掘を恐れて別の場所にあるものが多い。

代表的なのがエジプトのピラミッドである。
クフ王のピラミッドの中には石棺があるが、
石棺に到達するまでの間に、迷路のように長い坂道があり、
玄室に入る直前には、
腰をかがめなければ通り抜けられない箇所がある。
腰をかがめているから、
活動が制限される。
動きが悪くなるすぐその先は落とし穴があり、
遥かな闇の先に、奈落の底が待っている。
その落とし穴をクリヤーして、
誰も入ることは出来ないような厳重な通路を抜けて、
やっと目的地に到達する。
しかしその先には、お墓のレプリカしかないのだ。
本物の王の墓は、瓦礫の山の下、王家の谷に並んでいる。


(レプリカの墓石2)

インドの王のお墓も同じくレプリカである。
フマユーン廟の出口の通路は、石が敷き詰めてあり、
両側は見事に手入れされた芝生が広がり、
その庭には転々と無憂樹が植えられていて、
インドの庭とはこんなに美しいものかと思わせる。
とても広い。

フマユーン廟の良く手入れされた芝生の端に
何人かのインド人がしゃがんでいるのを見た。
最初は何をしているのかと不思議に思った。
芝生の手入れをしているのか?
でも少しおかしい。
手が動いているわけでもなく、
通路を通る人を見渡す表情が得もいわれないのである。
恥ずかしそうで、情けなさそうで、
なんとも言えない表情である。


(しゃがんでいる人)

インドで公衆トイレを見かけることは無かった。
インド人の家にはトイレが無い(?)ように感ずる。
ホテルや大きなレストランはともかくトイレが見当たらないのだ。
(注:2013年の記録では家庭のトイレ普及率は46%と言う)

世界第二次大戦で敗戦直後の日本のようなものである。
野山がトイレである。
インド人の服装は男女を問わず上着のすそが、
ひざの上まであるものが多い。
しゃがんで用を足すとき、
上着が地面に垂れ下がり下半身が隠れるように出来ているが、
こんな格好をしているときは用を足しているときである。

男も女も同じしゃがんだ格好で大小の用を足す。
観光地であろうと、道路上であろうと、
ところ嫌わずである。

今回の旅は、観光地で有名なゴールデン・トライアングルでなく、
釈迦の一生を追う仏教遺跡を訪ねる旅であったので、
インド人の生活を良く見ることが出来る田舎を訪ねる旅であった。

田舎へ行けば行くほど、郊外レストランも無く、
ガソリンスタンドも無く、ドライブインも無く、
勿論公衆便所も無いので、トイレは止むを得ず、
「あおぞらトイレ」になる。

観光バスが通ってきた道路の右側が男性、
左側で女性が用を足す場所だ。
男性は道路わきで立ったまま用を足せばよいが、
女性はそうは行かない。
サトウキビ畑の向こう側まで行って、
道路側から見えないところで用を足すことになる。

(バスの通った道)

最初に書いたように、なんと言っても十億の民が居る国。
どこへ行っても人が居る。
ということは、どこもトイレであるから、
日本と違って、どこに落し物があるか分からない。
用を足してきたご婦人の靴に、
インド人の落し物がべったり着いてくる。


(路線バスの乗客たち)

夜バスを走らせると、
ヘッドライトに浮かぶ道路脇にしゃがんだご婦人が
急いで裾を上げる姿が目に付く。
一リットルほどの水の入った容器を持っているので
何をしていたかが想像できる。
インド人はお尻を紙で後始末しないで、
一リットルの水をお尻に流し、
左手で洗い清めるのである。


(インドの市街地の喧騒)

トルコでもそうであった。
日中は道路より奥まった、
人から見えないところで用を足すが、
さすが夜には蛇なんかも居るので、
道路より奥には入れないから、
道路端で用を足す。

それも町外れが一番多いことは誰にも想像できる。
ある時、町外れで用を足すことになった。
女性はガソリンスタンドにある
たった一つのトイレを使うことになったが、
男性は青空トイレとなった。
ボクは人生経験が長いから、
こんな時恥ずかしいという気持ちは無く、
出るものが出るのは、
当たり前と言う気持ちのほうが強いので、
バスから降りて二三歩の道端で用を済ます。

ヘッドライトの明かりの中の方が
足元が良く見えて危険が無いからだ。
その代わり、用を足している姿を、
他人が見ようとすれば丸見えになる。
でも、80歳に手が届こうとするおっさんの、
用を足す姿を見るほど余裕のある人はいない。
自分のことで精一杯のはずである。
道端には雑草が生い茂っているが、
一歩前に進めば見られる心配は無いが、
決して一歩前に進んではならない。

80年近く生きていると、
こんな時、誰も見るわけが無いと平気でいられる。
しかし男性でも、すこし恥ずかしがり屋は、
少し離れたヘッドライトが届かない場所で、
しかも一歩前に進んで草むらの中で用を足す人も居る。
そんな人は、用を足す人の心理に沿って用を足すので
(つまりインド人も日本人も
恥ずかしいということは同じであるらしく、
同じ場所で同じ行動をするので)

足元に気付かず、インド人の落し物をいやと言うほど、
しっかり踏みつけてくることになる。
日中ご婦人方が経験してきたことを、
見ていれば分かりそうなのに、注意不足は仕方が無い。
生きていくものは、
生きるために食べなければならないし、
食べれば必ずその滓(かす)を出さなければならないのである。
いやはやこの旅は一体どういう事になるのだろうか?
先が思いやられる。



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12 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
私は恥ずかしがり屋なので (masamikeitas)
2020-11-28 05:36:32
hide-sanさん、おはようございます。

>足元に気付かず、インド人の落し物をいやと言うほど、
しっかり踏みつけてくることになる。

私は恥ずかしがり屋なので、インドには絶対に行きたくないです。
日本の方が自分に合っています。😀
おはようございます (ytakei4)
2020-11-28 10:22:47
インド、大変ですね。今でも
改善されていないのでしょうか?
masamikeitasさん コメントありがとうございます (hide-san)
2020-11-28 10:49:06
>日本の方が自分に合っています

でも済めば都ですよ。
ytakei4さん コメントありがとうございます (hide-san)
2020-11-28 10:51:08
>今でも改善されていないのでしょうか?

どんどん進化して居り、今に中国を追い越す勢いです。
気温15度ぐらいの大阪です~♪ (鉄ちゃん爺や 黒田)
2020-11-29 13:07:11
私の記憶では30年ぐらい昔のお話になりますが
北陸自動車道を通行中に2時間も事故渋滞に陥り
団体旅行の女性軍は4~5人で回りを囲んでトイレを
男性軍は勿論ながら高速道路の溝で放水でしたよ。

何せ福井県の山越えの山中でのお話でしたけどね。

私の祖母にあたる女性は立ちしょん便が出来て
一度だけ目にしたことがありましたん。

明治9年生まれの祖母は田舎生まれじゃないのに
当時は普通の女性も立ちしょん便ができたんですね。

びろうなコメントでご免なさい。



鉄ちゃん爺や 黒田さん コメントありがとうございます (hide-san)
2020-11-29 13:19:40
>祖母にあたる女性は立ちしょん便が出来て

ボクの高校生の頃はお婆ちゃんは普通に立ち小便してました。
その頃、和服が普段着の頃は女性はパンツを履かず、
腰巻でしたから、
和服の裾を持ちあげて達ションしてました。
上下水道 (TAKAOSAN)
2020-11-29 17:32:31
こんばんは
日本人は、上下水道をつくる考えがあったのは素晴らしいこと。
江戸時代にすでにそのように考えていたから、立派です。
でも、衛生観念がシビアであることが、新種の菌やウイルスに弱い体質にもつながっているかもしれません。
青空トイレ (らいちゃん)
2020-11-29 19:41:44
「出物腫れ物所嫌わず」はその通りですが、世界中から観光客が訪れる現在なので、せめてトイレくらいは整備してほしいですね。

>言葉は世の中が変わるにつれて変わるもので、まもなく、浮足立つは=楽しい気分、が正解になることでしょう。
その可能性は十分ありますね。
TAKAOSANさん コメントありがとうございます (hide-san)
2020-11-29 20:51:46
>衛生観念がシビアであることが、新種の菌やウイルスに弱い体質にもつながっているかもしれません。

仰ることはその通りかもしれませんが、
一方で、衛生観念が緩やかであれば、
アメリカのようにずるずると感染が広がっていたかもしれませんね。
インドのトイレ事情 (ウォーク更家)
2020-12-05 10:05:38
インドは世界中から観光客が訪れる国ですが、完全にハマってしまう人と、不衛生でゴミゴミしているので嫌だという人と分かれるらしいですね。

インド人の服装が上着のすそが膝の上まであることや、道路の右側が男性で左側が女性というのは合理的で面白い話ですね。

牛の糞くらいは仕方ないですが、人間のを気付かず踏みつけてしまうというのは、どう考えても嫌ですね。

もっとも、私も、子供の頃は、すごい田舎で育ったので、普通に立小便してましたが・・・

エジプトのクフ王のピラミッドの石棺に到達するまでの間に、迷路のように長い坂道があり、落とし穴があり、腰をかがめて通り抜けた先にあるのは墓のレプリカ、というのは初めて知りました。

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