《影》(邦題:『SHADOW/影武者』)を観た | 呉下の凡愚の住処

呉下の凡愚の住処

三国志(孫呉)・春秋戦国(楚)および古代中国史絡みの雑記、妄想、感想をおいてます。
文物や史跡など、誰もが実際に見に行けるものを布教していきたいな。
他、中国旅行記や中国語学習記も。

先日、三国志学会にていろんな人に薦められた
《影》(邦題:『SHADOW/影武者』)を観ました。
孫呉vs関羽がモデルの、張芸謀監督作品。
事前に知ってればこうはならなかったんですが、
孫呉(がモデルの国)の描写がひどすぎて無事死亡しました。

もうこういう扱いにはとっくに慣れたと思ってたので、
悔しくて号泣するのは久しぶり……。
まあでも演義だと思えば何も怖くない、勝手にやってくれ。

映画『SHADOW/影武者』公式サイト

中身は「中国の映画ってこういうの多いよね……」
という、「なんだったんだろう?」って感じの映画でした。
私大して映画観ないのでそんなこと言うと怒られそうですが、
まあ、実際、日本で観られる中国映画ってこういうの多いと思う。
《英雄》(邦題:『HERO』)もこの監督の作品ですが、
あっちのほうが個人的には楽しかった……。
ドニーさんvsジェット・リーもあったし。

でも笑いどころ(ツッコミどころ)あり、急展開あり、
ラストも何が起こったかを観客に委ねる終わり方になっていて
後半は不満もなく退屈せずに観られました。
あらすじはいろんな方がラストまで書いてくれてるので省略!
あらすじはなくてもネタバレしかないのでよろしくお願いします。

影 SHADOW 影武者
▲向こうのIMAXのポスターを勝手に拝借……

SHADOW/影武者 - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ | Filmarks映画

SHADOW/影武者 - 作品 - Yahoo!映画

これらのレビューサイトを見ても分かるのですが、
中国史好きじゃない視聴者からしても
ツッコミどころだらけの映画なんだと思います。
開始から50分の時点では号泣していて
耐えられなくて一日休んだぐらいなのですが、
開始70分ではもう爆笑してました。


こういうことは本当に言ったらいけないと思うし、
特に私みたいな考古学原理主義者が言うのは
余計にいけないと思うんですが、
酸素ボンベが出てきたのを見て
リアルに「この時代にそれある?」と思ってしまった……。
しかも軍全員で持っているという……。
すげえなさすが孫呉は水軍の国だ(適当)

「当時既に酸素ボンベに近いものがあった」
と言われるなら何も驚かないんですが、
この映画、形が酸素ボンベすぎる。

そして多くの人々のツッコミの的となっている武器!
刃でできた傘、沛傘
この傘から刃が飛んだときリアルに
「え……?」って声が出てしまった。
楊蒼(関羽がモデル)の表情も、
驚きよりも戸惑いが強かったように見える。

傘に乗って、傘をさしてサンドイッチになって
くるくる回りながら移動するのもなー……。
「ヤドカリの大移動!!」と思いました。
ヤドカリならやさしい世界……。

でも敵軍と邂逅して、傘の刃を隊列組んで飛ばしていくところは
長篠の戦いの鉄砲三段撃ちを彷彿とさせてかっこよかったです。
なんかもうそういうテンションで観る映画です。
……と言うか、最初からもっとバカ映画として売っていれば
私も手を打って笑いながら観ていたかと……。
ツッコミどころこそ多いですけど、
張芸謀作品は決してバカ映画ではないんですよね……。


この映画は女子が2名しか出てこないんですが、
2人ともとても美しいです。
孫儷は日本に来る古装ドラマにたくさん出ているのでお馴染み。
この人、どの時代の女性を演じても違和感ないのが本当にすごい。
青萍(孫尚香がモデル)役の関暁彤もおてんば姫でかわいかった〜!

楊蒼・楊平という関羽・関平な親子。
孫呉がモデルと思しき沛国の扱いは本当に酷かったんですが、
この楊親子はどこからどう見ても関羽関平だし、
堂々としていてとてもカッコよかった。武器も偃月刀でしたしね。
ベテランの胡軍の威厳はもちろんのこと、
楊平役の呉磊、イケメンかつかわいくてすごくよかった……。
はっきり言ってこの映画の良心はこの親子だったと思います。
しかし楊蒼の最期は呆気なさすぎたな〜。

沛良(孫権がモデル)役の鄭愷のクライマックスの演技も
とてもよかったですが、今度は違う映画で会いたいね……という感じ。
晩年の権様の悪いところだけを凝縮したみたいな役だった……。
それってある意味すごく贅沢な役なんですけど、
今この立場でそれやる? というもったいない気持ち……。

鄧超は境州を演じたあとに20㎏減量して子虞を演じたそうです。
しかしこの子虞が本当にまったくなんの魅力もなく、
喚き散らすだけで見てて嫌悪感しかなかったです。
最初からそういう設定だったと思うので大成功なんですけどね。

「映像が綺麗」っていうのが中国映画の魅力だと思いますが、
この映画は衣装もセットもずっと白と黒なので、
視覚的にもなんか退屈だなあという感じでした。
水墨画をイメージしたのだとは言われてますが、
私、水墨画の魅力がいまいち分からないんですよね……。
結構いろんな水墨画見ててこれなので、趣味に合わないんでしょうね。
というわけで、
私はもういろんな意味でお呼びでない視聴者だった。

うざいツッコミで恐縮ですが、王の大殿、あそこにあると
絶対何度も長江氾濫してるはずなので愚かすぎると思いました。
映画だから! 映画だから! 美しさ重視だから!
というのは分かっているのに、
「本当に長江のほとりの王朝ならそこに城は立てない」
と言わないと気が済まないやつ。


最後の最後、小艾は扉の向こうに何を見たのかという疑問ですが、
私は“朝廷にいた沛良も影武者で、境州が本物の沛良に殺される”
っていうラストだったらおもしろいな〜と思います。
どうせこの時点で登場人物ほぼ死んでますからね。

無茶苦茶な感想でしたが、観ました! ということで……。
孫呉がモデルじゃなければな〜。
お口直しになんか違う映画観ます。


---


監督:張芸謀
キャスト:
境州 - 鄧超 、子虞 - 鄧超、小艾 - 孫儷
沛良 - 鄭愷 、田戦 - 王千源 、魯厳 - 王景春
楊蒼 - 胡軍 、青萍 - 関暁彤 、楊平 - 呉磊
原作:朱蘇進《三国・荊州》
脚本:李威、張芸謀
音楽:撈仔

こんなところに内緒話のように書くことでもないんですが
优酷の有料会員になってネットで観ました。違法じゃないよ。