不満はあら探しや反応と同じく、エゴの存続を支える境界や分離という意識を強固にするが、同時にエゴの糧になる優越感を与えることによってエゴを強化する。たとえば交通渋滞や政治家や「強欲な金持ち」や「怠け者の失業者」に対する、あるいは同僚や元配偶者やいろいろな人に対する不満がどうして優越感につながるのか、ちょっとわかりにくいかもしれない。
実は不満を言っているときは、自分が正しくて不満や拒否反応の対象である人や状況は間違っていると暗黙のうちに想定しているのだ。
自分が正しいという思いほど、エゴを強化するものはない。正しいというのは、ある精神的な立場━━視点、見解、判断、物語━━と自分を同一化することだ。もちろん自分が正しいと言うためには、間違っている誰かと比較しなくてはならない。だからエゴは自分が正しいと思うために、好んで誰かが間違っていると決めつける。言い換えれば、自分という意識を強化するためには、誰かが間違っていなければならない。間違っているのは人だけではない。ある状況も、不満や拒否反応を通じて間違いだと決めつけられる。「こんなことは起こってはならない」というわけだ。自分が正しいなら、間違っているとか欠陥があると判断される人や状況に対して、自分が倫理的に優越していると思うことができる。その意味でエゴは優越感を欲し、優越感を通じて自らを強化する。
ニュー・アース [ エックハルト・トール ]
¥2,310
楽天