キャリア10年以上の法務部員がお伝えする「契約業務のあれこれ」

キャリア10年以上の法務部員がお伝えする「契約業務のあれこれ」

大手企業の法務部に就職し、その後中堅企業の法務部に転職。

かれこれ10年以上法務畑です。

契約書作成業務を行う際の法律的・実務的な注意点などを書いていきたいと思います。

お役に立てれば幸いです。

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昔、私が法務の新人さんの(生意気にも)教育担当だったとき。

こんなことがあったなーってことを、ふと思い出したので、

今日は思い出話を書こうと思います。

別に、秋だから物思いにふけっているわけじゃありませんよ。

はい。



新人さん「契約書作ってみました!チェックお願いします」


私「はい。お疲れさまー。チェックするね。

(うげげ。もう退社時間間際じゃないかー。デートに間に合わん

・・・という妄想をしてみる)」


さてさて。契約書をチェックしますか・・・・

・・・・!!!!!


私「ねぇ。この契約書、捺印をするのは、A社とB社だけだよね?」


新人さん「はい。そうです。2者契約です」


私「そっか・・・。じゃあさ、この条項、よく考えてみて。

何かおかしいところはない?」



「本商品の売買代金は、B社がA社に支払う。

但し、B社が売買代金を支払わないときには、

C社がB社が支払うべき売買代金をA社に支払わなければならない。」



新人さん「んー。うちは、A社ですから、B社が売買代金を払って

もらえないときに、C社に払ってもらえたら有利ですし、C社は

B社の親会社なので、肩代わりするってことは、そんなに変なこと

じゃないと思いますし。んー。何がおかしいんですかね?」



私「じゃあさ、仮にB社がうちにお金を払ってくれなかったとき、

どうなるのかな?」


新人さん「そりゃ、C社に払ってもらうんですよ。

そう書いてありますし。」


私「C社に、この契約書を持って行って、B社の代わりに払って

くださいって言うの?」


新人さん「ええ」


私「C社は捺印者じゃないんだよね?ということは、C社は、

この契約書の内容に合意してないんだよね?」


新人さん「あ!!!」


私「そう。C社はこの契約書の契約当事者ではないから、

この契約書では、C社に支払いを強制できないんだよね」


新人さん「あーそっか!でも、B社が言うには、C社も

肩代わりしていることについて合意しているそうなんですよ」


私「だったら、C社にも、合意をもらわないと。つまり、C社の

捺印をもらわないと。この契約をA社、B社、C社の3者契約と

するか、もしくは、B社の代わりにC社が払うと約束してくれる

念書をC社からもらわないとね。」


新人さん「なるほど・・・。わかりました。この契約書を3者契約

とするか、2者契約のまま、別途念書をもらうか、担当者に確認

してみます。」


私「はい。よろしくね!これからは、契約当事者ではない第三者を

拘束していないか、つまり、この契約書でちゃんとその第三者に

履行を強制できるかを、チェックしてみてね。」



と、こんな感じで、

新しい視点に触れることができて、

かえって私の方が勉強になることも多かったなぁ・・と。秋。


今回のお話のように、契約当事者ではない第三者を拘束する契約書

を作成する、というミスはあまりないのかもしれないのですが、

慣れていないと、こんなミスをしてしまうこともあるんだな、

ということで、ご参考にしていただけたらと思います。



契約当事者ではない第三者を拘束する契約書は作成しないよ!

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当事者間で紛争が生じた場合。

当事者間の協議で解決できればいいのですが、

それでも解決できない場合は、

最終的には裁判所等に紛争解決をお願いすることになります。



それでは実際に裁判になったとき、

裁判はどこで行われるかといいますと、民事訴訟法上は、


被告の所在地を管轄する裁判所


もしくは


当該事件と人的・物的に関連する土地を管轄する裁判所

のどちらかを選んで提起できることになっております。
(民事訴訟法第4条、第5条)


従いまして、

相手と自分が、ともに「東京」に所在している場合は、

近いので、出頭費用等もそれほどかからないのでいいのですが、

相手の本店所在地が札幌で自分の会社の本店所在地が

東京の場合は、

出頭費用、弁護士の日当、証人尋問の際の費用・・・

などが重くのしかかってくることになり、

どこで裁判をするかが重要になってきます。


そこで、
契約書において、

あらかじめ自らに有利な土地で裁判をできるように、

裁判所を合意しておくと便利です。


この、合意した裁判所を、「合意管轄」といいます。


合意管轄の条項例を記載しますと・・


条(合意管轄)

本契約に関する訴訟の必要が生じた場合は、

甲(自分の会社)の本店所在地を管轄する地方裁判所を

第一審の専属的合意管轄裁判所とする。


このようになります。


この条項を記載するときのポイントは、2つです

場所を明記するか、自分の本店所在地とするか

「専属的」を記載すること



順番にご説明させて頂きますと、


まず、

場所を明記するか、自分の本店所在地とするか、について


上の条項のように、「自分の会社の本店所在」とした場合は、

将来、会社の本店が移転したときでも、管轄裁判所が同じく

移転した場所になりますので、便利です。

ただ、相手方が、

「本店がどこになるかわからないので、受け入れられない」

と言ってくる場合もありますので、

その場合は、場所を特定すると、

相手方も受け入れやすい条項となります。


場所を特定する場合の条項例は、次の通りです。


条(管轄裁判所)

本契約に関する訴訟の必要が生じた場合は、

東京地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。


次に、

「専属的」と記載すること、について


東京地方裁判所を「合意管轄裁判所」とするという記載ですと、

「専属的」という記載がないので、

東京地方裁判所以外の管轄を認めないわけではないと解釈されて

しまう可能性があります。


従いまして、
「専属的」という記載は忘れないように注意する必要があります。

これ、実務ですと、結構抜けていたりするんですよ。

なので、注意してみてくださいね。


合意管轄について、わかった!という方は、
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今回は、売買契約でよくみられる

「所有権留保」条項のお話をさせて頂きますね。



そもそも、所有権とは何かといいますと、

物に対する全面的支配権であり、

その物を使用・収益・処分することのできる権利のことをいいます。



で。
所有権は、いつ移転するかと言いますと・・
民法176条において、
当事者の意思表示によって移転することが決められております。


民法176条

物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、

その効力を生ずる。



つまり、
所有権がいつ移転するかは、当事者が決めるので、
いつ移転するか、決めて、後々争いにならないように証拠を残しておく
契約書に明確に定めておく
ことが必要です。


また、

売買取引の大半は、

先に商品を渡して、後で商品の代金を支払ってもらうという

取引形態をとることが多いです。



仮に、商品を渡した後、まだ商品代金を払ってもらっていないのに、

商品を処分されて、商品代金が払えないと言われてしまったり、

第三者から商品を差し押さえられたりしたら、

どうなるでしょうか?



売主は、困りますよね。

そこで、
売主としては、商品代金を支払ってもらうまでは、
所有権を買主に渡さないようにしておく(留保しておく)

必要があるわけです。


この、

「商品代金を支払ってもらうまでは所有権を留保しておく」

という考え方を、所有権留保といいます。



所有権留保に関する条項例は、次の通りです。


「第

売主から買主に引き渡す商品の所有権は、

買主がその代金を完済したとき売主から買主に移転する。」



この契約条項を入れておくと、
所有権の移転時期が明確になりますし、
商品代金が支払われるまでは、所有権が買主に移転しませんので、
売主は、商品代金を回収できますね。


逆に、買主の立場ですと、

早めに所有権を移転してもらった方が有利です。



移転時期として考えられるのは、
代金完済時の他に、
売買契約締結時、引渡時、検査合格時・・などが考えられます。

ちなみに、引渡時とした場合の条項例は、次の通りとなります。


「第

売主から買主に引き渡す商品の所有権は、

商品の引渡時に売主から買主に移転する。」



以上、今日は、ちょっと契約条項の中身について掘り下げて

みましたが、いかがだったでしょうか?



これからも、ちょくちょく掘っていこうと思いますので、
どうかお付き合いくださいね。


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