演じる意味とは？

こんにちは、星ワタルです。

久しぶりの更新になりました。ご無沙汰しておりまして申し訳ありません。

既に広報からも報告はあった通りですが、５月５日、６日の二日に渡って行われた新作舞台公演『新・銀河鉄道に乗ったサギ』はお陰様で大盛況に終わり、沢山の観客の皆様から数々の賞賛と励ましの言葉を頂きました。この場を借りてあらためて御礼申し上げます。

さて、私は舞台に立つのは二回目ながらも、前回以上に重要な役どころを頂き、自分にとっては初演といってもいい舞台でした。

今回、私は冒頭のプロローグから登場し『新・銀河鉄道に乗ったサギ』の物語に重要な役目を果たす宮沢賢治の『よだかの星』の朗読から始まり、その物語を観客に説明する、いわば語り部。

この役どころをどう演じるかは、舞台の完成度を左右する重要な部分です。

舞台をやる以上は、前回以上の感動を与えたいですし、そのためには役者は前回以上の成長した演技を見せることが出来なければならないでしょう。

役者をやるにあたり、いい演技を模索し悩むことは当然ぶつかる壁ですが、私も今回の舞台にあたり、当初自分の演技に対してなかなか自然体で臨むことが出来ずにいました。

試行錯誤の結果、自分がたどり着いた一つの結論は、自然な演技はどこからくるか？それは結局のところ如何に観客をイメージできるかから来るということでした。

特に稽古をしている最中は、自分の動きが観客にどう映るか、鏡のある部屋で稽古すると視線をどこに定めたらいいか分からない、演出家の意図通りの演技が出来ているのか、などなど様々なある種、雑念がちらついてしまい、どうしても計算しながらというか演技を図ながら演技してしまい、なかなか演技が自然な感情に乗れなかったりします。

こうして、稽古をしていたある時、普段の演技稽古には姿を見せないとあるスタッフの方が、打ち合わせのために稽古場にいらっしゃった時がありました。

私の演技を見ていて下さったその方が、最後に「星さん、もっと肩の力を抜いていいですよ。リラックスして」と言って下さったのです。

不思議なことに、この時、初めて自分が演技に対して自然体で臨んでないことに、はっと気づかされました。普段は自分の演技を見る機会が少ない人に、そうアドバイスを頂いたことで、自分の演技のぎこちなさというのが第三者から見ても分かるくらいにやはり自然体ではなかったのだと、あらためて気付かされたのです。

これ以来、自分の中でこの役を演じる意識に僅かながらも大きな変化が出来ました。

これまでは、どう演じるか？に意識が行っていたものが、何を何故演じるか？に演技を考える視点が変わったのです。

そう考えたとたん、自分が演じている意味は「よだかの星という素晴らしい物語の魅力を観客に伝えること」であり、それを考える事なしにどう演じるか？を先に考えるのは間違いだったことに気付かされたのです。

そう考えた瞬間に、これまでの演技は捨てて、演じるというより、伝えることに意識を切り替えることが出来ました。そうすることが出来て、今回初めて肩の力を抜き、自然に感情にのりながら演じることが出来たと思います。

演じるとは伝えること、結局のところ、最後は観客をイメージできるかどうかなのですね。

この気づきを与えて下さったそのスタッフの方の一言には本当に感謝しています。それがなかったら私の演技がどうなっていたか、はあまり想像したくありませんね笑

さて、最後に皆様にお知らせがあります。

これまで劇団真怪魚に入団して約３年半になる星ワタルですが、今回のこの『新・銀河鉄道に乗ったサギ』の一つの区切りに休部することに致しました。

まだまだ舞台経験もなく、ようやくこれから本格的な役者としての人生の扉に手を掛けたところで、このような決断に至るに非常に悩やみました。

自分としては舞台に立つからには、しっかりとお客様に感動を与える舞台をしたいと思っています。しかしながら、現在の仕事との両立を考えた場合に、これを続けていくことが難しくなることを思うと、やはり中途半端な両立でやることは、劇団にも迷惑をお掛けしますし、また何よりお客さんに対しても失礼になってしまうと考えました。

３年半の研修生の自分を、暖かく指導して下さった座長、副座長、そして先輩、後輩の皆様に感謝致します。また、劇団真怪魚の舞台を観に来て下さり、自分を応援して下さった皆様にも深く感謝しております。

自分は少し離れることになりますが、これからも引き続き劇団真怪魚を宜しくお願い致します。

星ワタル