僕は自分の足りないカケラを求めていた。


自分は何者であるのか、何がしたいか、答えを求めていた。


大学1年生の頃は音楽がやりたかった。


毎日、アコースティックギターを持って通学し、休み時間は屋上でギターを練習し、家に帰っては創作の詩なんかをノートに書いて曲をつけて歌を作ろうとしていた。


色々と書いたけど、結果まともに完成したのはたった一曲だった。


当時、自分に才能がないとは思わなかったけど、自然とギターは触らなくなった。詩の創作もしなくなり、大学2年生の頃は遊び呆けていた。


折があったらまたしたいとは思っている。


さて、大学2年生というもっとも気が緩みやすい時期に、開放された一人暮らしにより、寝坊で講義をサボるわ夜中に友達とゲーセン巡りとカラオケオールするわで絵に描いたようなダメ大学生活を送っていたわけだが、東京に来て深夜アニメをよく観ていたのはこの時期と言える。


地元福島のローカルテレビ局では放送されてないアニメが深夜になれば毎日放送していた。


アニメ好きな僕は当然観まくった。


寝る間も惜しんで観まくるのだから朝は当然寝るためにある。起きるわけがない。


バイト、アニメ、時々学校………。


この時期の僕はなんのために大学へ通っているのか分からなくなっていた。


何となくで進んだ社会福祉の道に情熱など無く、ただ東京での一人暮らしという憧れを手にした現実だけで僕は満足していた。


そんな日々、もう一つの現実と向き合わなければならなくなった。


大学2年生も終わり、3年目が始まりを迎えようとしたある日、社会福祉の学科長に呼び出され、このまま単位を落とし続ければ間違いなく留年すると告げられた。


留年だけは避けなければならなかった。


変にプライドの高い僕は「留年した」というレッテルだけはどうしても避けたかった。


それに、どの口が言っているのかと思うが、親に学費を払ってもらって大学に通わせてもらっているのだからもう一年在学期間が伸びるなんて申し訳ないと思った。


しかし、昔からそうなのだが僕はやりたくないと思ったことはとことんやらないので心を入れ替えて福祉の勉強をしようとも思わなかった。


しかし、折角大学に通っているのだから何か有意義なことを学びたい、そう思っていた僕の頭にあることがふとよぎった。


思い切って学科を変えて「今」学びたいことに進むのはどうか、と。


僕のいた大学には専攻する学科が三つあった。


一つは僕の専攻した「社会福祉学科」、もう一つは「臨床心理士学科」、そしてもう一つは「キリスト教学科」だった。


もともと詩を書いたり、自分の考えを深めたりすることが好きな僕は、哲学なども学べるキリスト教学科は正しく「今の自分」が学びたいことに取り組める学科なのではないか、と思った。


そこで僕は社会福祉の学科長との面談で転学したい旨を話した。


すると学科長は、だったらすぐに転学するために必要な手続きをしよう、とすぐさま履修しなければならない科目や必要な単位と成績を調べて下さり、そして転学先の学科長にも話を通してくださったおかげでおかげで転学手続きはトントン拍子に進んだ。


そして、後は僕の出席状況と成績さえクリアすれば転学を認めてもらえる運びとなった。


学長、学科長、教授方、事務員の方のサポートを無駄にしてはいけない!


それからは真面目に学業に取り組むようになった。


まず、寝坊しない。


自分の生活リズムを見直し、必ず23:00には就寝、遅くとも0:00には必ず床についた。


当時、コンビニで夜勤アルバイトをしていたが夜勤明けで1限目からの時は寝ないで出席した。


当たり前だが授業に出れなければ成績もつかない。


授業に出席する事をまず目標とした。


自分のことを知る同期は授業に最初からいる自分に最初こそ驚いていたが、次第に何も言わなくなった。


次に、課題は必ず提出する。


当然課題も提出できなければ、成績がつかないし、ついていたとしても低い成績、最悪単位も落とす。


課題は提示されたらすぐさま取り組み期日までに必ず完成させ、授業内で提出した。


こうして、僕は大学三年生の履修科目を無遅刻無欠席で全て出席し、成績も基準を満たし、無事大学四年生からキリスト教学科への転学を果たした。


ここまで読んでいる読者なら、当たり前のことなのに偉そうに言うな、と思うだろうし、事実授業に出ることも課題を提出することも当たり前である。


しかし、それをやってこなかった身からすると本当に大変だった。


その後大学四年生からも変わらず無遅刻無欠席は維持していた。


思えば、あの頃は卒業後の将来なんか考えず、今やりたいことにひたすら夢中で燃えに燃えていた時期だったと思う。


座長との出会いも、ほぼその頃だったと思う。


そんな自分のやりたいことに対して脇目も振らずに突っ込んでいたころということもあり、大学卒業後も就職せずフリーターのまま劇団真怪魚研究生として入門した。


正直な話、今の自分にあの頃のような想いは無い。


入りたての頃のような「楽しい」という感情だけで何とでもなった時期から変わって、「大変だ」「忙しい」といったマイナスの心境が中心となった。


だからこそ、前編で書いたような心境で自分に行き詰まる事が毎日のように訪れるようになった。


僕のカケラはどこにあるのか……。


ぼくを探しにの主人公は自分のカケラではないと気付いても陽気に歌いながらまたカケラを探しに旅を続ける。


僕は陽気に歌も歌えず、ただその場で愕然とするだけだった。


カケラを失い、欠けた自分に戻ってしまった気がした。


そんなモヤモヤした日々の中、思い出したのは昔読んだ絵本だった。


前編で書いた『ぼくを探しに』には続編がある。


それが、『続ぼくを探しに 〜ビッグ・オーとの出会い〜』だ。


今度の主人公は、前作で別れたカケラの方である。


前作の「ぼく」と別れた「カケラ」は一人その場に佇んでいた。


「ぼく」はいびつな形でも陽気に転がっていくがカケラは一人では転がれない。


だから自分を拾ってくれる誰かを待ち続けていた。


どうすれば自分は拾われるか、自分を着飾ってみたり、挨拶してみたり、逆にヘンテコな形をした奴や、ガツガツとカケラを求めてくる奴からは身を隠して最高の誰かに拾われるのを待ち続けていた。


そんなとき、「カケラ」は「ビッグ・オー」と出会う。


カケラは遂に、一緒になって転がりたい相手を見つける。


しかし、「ビッグ・オー」は今までの奴とは全く違っていた。


彼にはどこにも欠けたところが無く、完全な丸なのだ。


だからビッグ・オーは自分はどこも欠けていないから無理だとカケラに言う。


カケラはガッカリする。


でもカケラは自分も転がりたいと思っていた。


しかし、カケラは二等辺三角形のような形をしている。


だから一人では転がることは出来ないとビッグ・オーに言う。


するとビッグ・オーは「やってみたことはあるのかい?」とカケラにそれだけ言って去っていく。


それからカケラはしばらく考えた。


考えた結果、カケラは試しに自分の体を持ち上げてみた。


これで伝われば良いと思うが、
△→◁→▽→▷→△
といった具合に体を回転させてみた。


当然、丸くないからコロコロではなく、パタン、と倒れるような感じで転がるとは程遠かった。


しかしカケラはそれでもパタン、ともう一度回転してみた。


繰り返し、繰り返し、回転していると少し角が丸くなり、回転もコトン、と音が変わっていきます。


そしてさらに回転を続けていると、やがて楕円のような形になり、ポコンポコンと跳ねるように回転し始める。


そうして何度も何度も回転したカケラはやがてコロコロと転がり始める。


その時カケラは気づく。


自分がビッグ・オーと同じような丸になって転がっているんだ!と


そして転がり続けたカケラはやがてビッグ・オーの隣に追いつき、一緒に転がっていくところで絵本は終わる。


今回、この絵本を思い出し、悩んでいた自分に一筋の光が差した気がした。


僕はずっと自分が何者で、自分の欠けたものを探し続けているような生き方をしていた。


もちろん、その生き方を否定する気はない。


しかし、僕にとって必要だったのは自分が何者かを考えたり、何者かになろうとカケラを探すことではなく、「ありのままの自分を認める」ことなのだと感じた。


自分が何者かではなくそれ以上でもそれ以下でもない等身大の自分をまず自覚し、見つめ直すことだった。


そんな気づきをカケラに与えたビッグ・オーはまさしく自分にとって劇団真怪魚であり、座長であると思った。


自分で自分の生き方を決めつけず、何かやってみたのか?不格好に見えても諦めずに、カケラが頑張って回転したように七転び八起きで挑戦してきたか?


そして出来なかったら出来なかった自分をありのままに受け入れ、誇張せず、誤魔化さず、諦めずにやってこれたか?


自分はもともとどこも欠けていない、
不完全ではないが、かといって完全でもない。


ただ、完全になろうとする努力は必要である。


今回、大いに悩み、自分を見つめ直しそうした生き方への一つの答えを知ることが出来たのだから今日までのことは決して無駄ではない。


カケラが自ら転がっていけたように、もう一度自分を鍛えなおそう。


そうすることで自分にとってのビッグ・オーという存在と共に転がることが出来るようになるだろう。


だからこそ、劇団真怪魚でもう一度頑張る。新たな決意と共に、自ら転がることができると信じて。


〜【特番】〜
劇団真怪魚の座長 真崎明がJ:COMテレビ番組『調布人図鑑』(様々な分野で活躍する調布人の紹介)で石原プロモーション 金児憲史さんと対談しました。どうぞご覧ください。





〜劇団真怪魚 広報部〜


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過去の公演
『短編劇&スクリーン上映』
銀サギ特別編
〜つつじヶ丘児童館ホール〜


2019年9月22日
☆終了 満員御礼☆

 

[キャスト]

 

★短編劇:
藤坂みのる    竜ノ宮いか    ねこまたぐりん    真崎明

★映像:
河辺林太郎 赤井ちあき 星ワタル 竜宮いか ねこまたぐりん 真崎明
 
【公演会場】
調布市つつじヶ丘児童館ホール
 
 
 
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