里親決定!part12 | 35歳年上の夫は師匠でエイリアン! 

35歳年上の夫は師匠でエイリアン! 

【夫】台湾人 × 【妻】日本人

国際結婚? いえ、惑際結婚ですから!

気がつけば2男1女。

あの男を見ていると、とても同じ人類だとは思えない。
漢方薬を水なしで飲めるなんて
一体どんな味覚をしてるんだ、あのおっさんは。

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ぽんちゃんと里親さんを見送った後、

しばらくしてから買い物に出かけた。

 

暖かい昼下がり。

 

車から見える右手の景色は

180度一面の海。

 

能登には、よくある風景だ。

 

太陽に照らされ、穏やかな風に撫でられて

水面はキラキラと揺れている。

 

5月下旬のこの日は

暑いくらいのお天気だった。

 

窓を開け、右手の肘を

軽くドアにかけて走る。

 

 

 

 

そのうち、涙があふれてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえねえ、母ちゃん。これ観て。」

 

 

 

 

 

 

子猫たちの里親探しを始めるちょっと前。

次男に促されて観たテレビ番組。

 

 

 

 

始めは一匹で飼い始めた猫が

出産を繰り返し、そのうち、

最初の猫が産んだ子供も

出産を繰り返す。

 

気が付いた時には、家のほぼ全域を

猫たちに占領され、家の中は滅茶苦茶。

 

増えすぎた猫たちのエサ代や

避妊手術代が捻出できず、

経済的にも立ち行かなくなってしまう。

 

 

 

 

 

いわゆる、多頭飼育崩壊に陥った

家庭の映像だった。

 

 

 

 

 

その番組に出ていた専門家によると、

猫は1年に3回出産することも可能だそうで。

 

 

 

 

 

 

 

1年に3回!!!

 

 

 

 

 

 

 

何なんだ。

一体どういうことなんだ。

 

 

その驚異的な繁殖力は。

 

 

 

とても同じ哺乳類の沙汰とは思えない。

 

 

 

恐るべし猫族!

 

 

怖い。

可愛い顔して怖過ぎる。

 

あの愛らしい顔立ちと振る舞いは、

人類を欺くための仮面に違いない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「けっ。人間なんて、ちょろいもんよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

夜な夜な、軒下でマスクを

べりべりっと剥がして、ちゅ~るの

食べ比べでもしてるんじゃないだろうな...

 

 

 

 

 

 

 

もしも。

 

チェリーが年に3回。

1回の出産で5匹産んだとしたら...?

 

単純計算で、1年で15匹。

 

そのうち、例えば5匹がメスだったとして、

その5匹が、またそれぞれ5匹ずつ産んだとしたら...

 

 

 

 

 

 

 

あっという間に、家族で軍隊が作れるな...

 

 

 

 

 

 

 

 

学生時代。

友達の家で観たホラー映画。

 

 

 

 

鏡の前でその名を5回呼ぶと現れ、

その男の鉤爪で体を引き裂かれてしまう

というストーリー。

 

 

この映画。

最後が本当に怖かった。

 

 

20年以上経った今でも、

はっきり結末を覚えている。

 

 

でも。

私にとっては、あの時のキャンディマンよりも、

この時のテレビ番組の方がよっぽどホラーだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「猫は、1年に3回出産することもあります。」

 

 

 

 

 

 

 

 

このくだりを観た辺りから、身の毛がよだち、

体から血の気がサーっと引き、自分の

体温がみるみる下がっていくのを感じた。

 

 

手の指先が冷たくなっていく。

 

おまけに。

眩暈まで覚えた。

 

 

 

 

 

 

チェリーとの暮らしに、

こんなダークサイドがあったなんて...

 

 

可愛い顔の裏に隠された、

自然の掟と野生の真実。

 

 

 

 

 

 

 

 

「避妊すればいいじゃないの。」

 

 

 

 

 

 

ええ。

おっしゃる通りでございます。

 

動物病院に問い合わせてみました。

 

 

 

結果。

2万円くらい。もちろん1匹で。

 

 

 

もし。

例えば5匹分払うとしたら...?

 

 

 

 

 

10万円!

 

 

 

 

 

家族で近場の温泉行って、カニを追加注文して、

お土産に饅頭買っても、まだお釣りが来そうな

金額じゃないの。

 

 

 

 

もちろん、猫と暮らすなら、

毎日のエサ代も必要だ。

 

予防接種や検診にもお金がかかるし、

病気やケガをすれば通院や入院だってある。

 

 

 

 

 

 

多頭飼育崩壊。

それは、実録・羅生門。

 

安全に暮らす場所を失い、身ぐるみをはがされ、

途方に暮れてしまう。

 

 

 

 

 

 

相手が人間であれ、猫であれ。
 

いざ関係を持つとなったら

どうやら同じことらしい。

 

最初が肝心なのね。

 

親密な関係を持つならば、

それ相応の準備と覚悟が必要ってか。

 

 

 

 

 

まるで結婚そのものね。

 

 

 

 

 

 

 

 

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 その後、避妊手術をしたチェリー。

 

 もう二度と、チェリーによく似た可愛い

 子猫たちが産まれてくることはない。

 

 でも、これで二度と、親子を離れ離れに

 することに心を痛めることもなくなった。

 

 我が家も、羅生門とは縁遠くなったわけで。

 

 これからは、家族みんなで

 チェリーと仲良く暮らしていけたらなと。

 

 

 チェリーさん。

 分かってくれるだろうか...