今期は赤字になりそうだ、と経営者が思った時、どうするだろうか。

1人でやっている会社ならば、解決策は思いつく限り実行してみればよいのだが、人を雇っていた場合はそう簡単にはいかないだろう。

もし、数人程度の従業員ならば、顔を突き合わせながら、黒字転換するべく指示を出していけばよい。

5人から8人程度まででも、会議室のテーブルを囲みながら、一演説打てば良いのだが、

10人以上雇っているなら、一気に難しくなる。

人数が多ければ、皆さんもご存じの通り統率が難しくなる。

逆に30人程度いる会社なら、部署や役職が複数あり、部長職・課長職に指示を与え、部下を動かしてもらうという手法が使えるのだが

10人・15人程度の会社が一番難しいと感じる。

いわゆる中小企業オブ中小企業である。

10人規模ぐらいだと、会社内に見渡せるだけの人がいて、社長との距離も近い。

お互いの仕事を見ることが出来、個々で何をしているのか内容が分かっていることが多いだろう。

30人規模の会社ぐらいから、喋ったことが無い人がいたり、顔と名前が一致しない、社長の顔を見ない、などが出てくる。

でもそれぐらいの規模なら、管理職が存在し部下をまとめているはずだから、一定の統率は取れている(はず?)である。

 

話を戻そう。

10人ぐらいの規模で、赤字懸念から改善したいと思った場合、個々の自覚を促すことが大事である。

特に経営者が売上や利益を公表していない場合、往々にして社長は儲かっているのだろう、私らは安い給料に抑えておいて。

と思っていることが多い。

だから、赤字懸念であることを伝えても、従業員は社長の給料を減らせばよいとか、無駄な不動産を持っているだろうからそれを売ればよい、など社長自身を改善してほしい、こちらには口を出さないでほしいと嫌悪の表情をされる。

他にも無駄な経費があるのではないかと、会社の不備を詮索してくる。

これは自分の経験談的にもそうだ。

お互いの顔を知っているからこそ、従業員同士の結束は固く、自分らはしっかり仕事をしていると思っている。

小さな組織では評価制度の無いことが多いから、自分の仕事のレベルが分からないのである。

また、小さな組織であるからこそ、経営者は逐一売り上げや利益の公表をしなくても、従業員は付いてきたし、仕事を順調に進めてこれていた。

赤字懸念になった時が、最初のターニングポイントであるように思う。

よって、その時に個々の数字(営業成果や利益)を明示し、改善を促す必要があるのだ。

10人程度の規模なら、それほどの資産や無駄な経費は無いであろう。

大企業なら、経費を削る場合でも上司の承認を取るだとか、手続きにひと苦労だろうが、中小ならそれほどの手続きの煩雑さも無く、すぐに行動に移すことが出来る。

帳票を一様に見渡し、削減できる経費が無いならば、手を付けるのは一つしかない。

本業の利益を増やすための施策を考えること、従業員の個々の自覚を促し、本業を頑張ってもらうことである。

 

利益改善に必要なのは、やはり本業の回復である。

コピー用紙を裏紙を使おうとか、電機はこまめに消そうとか、従業員用に用意していたアスクルからのお茶を止めようとか、意識としてはそういった行動も必要なのかもしれないが、それは二の次で、本業にメスを入れるべきなのだ。

 

アーリーステージから10人規模になる会社だと、売上が毎年順調に伸びていて、それにしたがって従業員を増やすというケースが多い。

社内には活気があり、社長からの指示は直接飛ぶし、管理職の承認などまどろっこしいことは無く、社長のGOサインですぐに行動できる、矢継ぎ早に数字を取るための営業活動が出来ているという状況である。

これがひとたび、苦境に陥ると自分は一生懸命やっている、赤字懸念があるのは社長の給料が高いだけなのではないのか・・、と疑念が生まれてくるという図式である。

自分としては、社長の給料の多寡は問題ではないと思っている。単に本業のやり方が悪いから利益が出ないのだと。

感覚的に5期目ぐらいで、赤字転落となりそのままズルズル赤字の続く会社と、数年後に黒字転換し、しっかり利益を出す体質になる会社へV字回復する会社に分かれる気がする。

その分かれ目は、赤字となった時(赤字懸念があった時)に、どれだけの行動をとることが出来たかどうかだと思うのだ。

 

ある会社のケースでは、契約を取るために値引き額を増やしていたり、ある作業を外注しその金額が思いのほか膨らんでいたり、売り上げが増えているからこその「緩み」が見受けられたことがあった。

業務の棚卸をして、見えてくることもある。

 

この話が役に立つなら幸いである。