トマトが真っ赤に熟れるまで 第22章 仲本の頭の中4 | 【税理士】社長と会社を元気にする会計事務所

 

 

 

 

こんにちは、松井です。

 

 

是非こちらも読んでみてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の話はこの続きなので、

是非先にこちらを御覧ください。

 

 

 

 

 

 

 

トマトが真っ赤に熟れるまで

 

第22章 仲本の頭の中4

 

 

 

 

 

 秋らしい季節になって、

特に早朝はひんやりすることが増えたので、

ハウスの中に入ると、

外よりは暖かいのでちょっとホッとする。

 

「仲本くん、誘引(ゆういん)のやり方だけどね……」

 

 

 

 

 

 後から声がして振り返ると、

藤原さんが立っていた。

 

農作業のやり方について、

丁寧に説明してくれているが、

こっちは全く聞く気がないので、

聞いている素振りをしている。

 

 

 

 

 

「大丈夫かな。わかった?」

 

「はい、大丈夫っす!」

 

 これ以上、説明は不要って思わせるためにも、

オレは大きな声で返事をした。

 

覚える気がないことをそろそろわかってほしい。

 

 

 

 

 

 

 オレは無造作にイヤホンを耳に突っ込んだ。

聴き慣れた曲が流れてきた。

特に好きな曲ではないし、

曲名も覚えてなどいないが、

ずっと聴いているのでいつのまにか覚えている。

 

 

 

 

 

 それにしても何がいけなかったと言うのだ。

クエストに行くのが怖いと言っていたのはノエルだ。

 

ノエルのために武器や装備を作ってやった。

本来なら武器代や装備代をもらってもいいはずだが、

そんな話を一度もしたことがないのに……。

 

 

 

 

 

 オレはいつの間にか、

昨日のノエルとの一件を思い出していた。

自分がストーリーを進める時には

調べたこともなかったが、

ノエルがストーリーを観ている間に、

オレはネットで次に何が要求されるかを調べて、

どう行けば最短で行けるか、前もって考えた。

 

 

 

 

 

 

 それだけじゃない。

必要なアイテムのうち、

買えるものは先回りして買ってやったし、

ドジっ子のノエルのために、

時には二人乗りのマウント(乗り物)を使って、

オレが操作してやったことまである。

 

 

 

 

 

 

全部ノエルのためにやってきたことばかりだ。

 

 なのに、ノエルは「ありがとう」

と言う代わりに「自分一人でやりたい」

と言いやがった。

 

 

 

 

オレはそれがどうも納得できない。

恩を仇で返すとは、まさにこのことだ。

 

 ノエルのことを考えているうちに、

また腹が立ってきた。

あんな奴、今度泣きついてきても、

二度と手伝ってなんかやるものか。

 

 

 

 

 

 

 昼食が終わって、

ハウスで農作業をしていると、

また藤原さんがオレの作業をチェックしに来た。

 

「仲本くん、朝言ったこと、ちゃんと覚えてる?」

 

「はい、もちろんっす!」

 

 オレはいつものように元気よくそう答えた。

 

 

 

 

 

 

「じゃあ聞くけど、誘引は何のためにするの?」

 

「それは、えっと……」

 

 オレが答えられないでいると、

藤原さんは声を荒げることもなく、

また丁寧に説明し始めた。

 

朝に教えてくれたことを覚えてない

オレが悪いんだから、

腹を立ててもよさそうなものなのに……。

 

 

 

 

 

 

 

 この人はきっと丁寧に教える自分に

酔ってるんだ。

 

物覚えが悪い奴でも、

平静を保ったままやさしく教えられる自分に

酔いしれているんだ。

 

 

 

 

「仲本くん、わかった?」

 

 説明はいつのまにか終わっていた。

オレはまた、藤原さんの話を全く聞いていなかった。

 

 

 

 

 

「はい、もちろんっす!」

 

「じゃあ、説明してみて!」

 

「えっと……」

 

 

 

 

 

 今度も答えられないオレに、

藤原さんは手取り足取り丁寧に教えようとする。

 

いい加減、わかれよ。

オレが覚える気なんて全くないことを。

 

 

 

 

 ノエルのことを思い出して

ちょっとイライラしていたオレは、

腹も立てずに同じことを教え続けている藤原さんが、

偽善者のように思えてきた。

 

 

 

 

「わかったかな?」

 

 爽やかな笑顔で藤原さんが

そう言うのを聞いた瞬間、

オレのイライラはピークに達した。

 

 

 

 

「そんなに何から何まで用意されると、

 自分で創意工夫しようという意欲がなくなりますよ!」

 

 藤原さんが驚いた表情をしたのが見えた。

オレはどうしていいかわからなくなって、

藤原さんに背を向けて、

その場を立ち去ろうとした。

 

 

 

 

 

 

後から

「ゴメン、そんなつもりじゃなかったんだ!

 ただ、仲本くんのためにと思って!」

と藤原さんが言っているのが聞こえた。

 

 

 

 

その言葉にオレはハッとした。

それは、オレがずっとノエルに

言いたかった言葉だったからだ……。

 

 

(つづく)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


  松井浩一公認会計士税理士事務所
  兵庫県芦屋市宮川町1-10-304 
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