【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》

古都、薬を売る老翁(壷公)がいた。翁は日暮に壺の中に躍り入る。壺の中は天地、日月があり、宮殿・楼閣は荘厳であった・・・・

未知なる深海へ 高井 研 =121=

2018-11-15 06:08:08 | 浪漫紀行・漫遊之譜

〇◎ 私が知りたいのは、地球の生命の限界です” ◎〇

= 海洋研究開発機構(JAMSTEC)及びナショナルジオグラフィック記載文より転載・補講 =

 青春を深海に掛けて=高井研=  

 第7話(最終話) 新たな「愛と青春の旅立ち」へ 

◇◆ プレカンラボ、絶滅の危機 =1/3=  ◆◇

2007年10月、JAMSTEC内で、化石記録のない先カンブリア時代の生命現象解明に挑むバーチャル研究プロジェクト「プレカンブリアンエコシステムラボラトリー(略称:プレカンラボ)」が発進しました。ところが1年後、存続の危機を迎えてしまいます。

プレカンブリアンエコシステムラボラトリートライアル版が始まって数ヶ月。2008年になるとボクは、またもやアポなし理事室突撃を敢行し、末廣さんに直談判を行った。

 バーチャル組織にリアル研究者を!

「どうもプレカンブリアンエコシステムラボラトリー設立のJAMSTECの男気が国内で話題騒然になっていて、ポスドク経験者や博士号取得予定学生から、研究員やポスドクの採用予定についての問い合わせがすごいんです。たしかにプレカンラボはバーチャル組織で行くというのが約束でしたが、リアルな専属研究者がいないのは仏像を彫って魂を入れないのと同じです。

JAMSTECバーチャル研究ポスドク制度を導入しましょう(当時、JAMSTECにはポスドク制度がなかった。また各研究センターが直接、必要な研究者を雇う制度だったので、バーチャル組織だったプレカンラボにはその権利はなかった)。野村監督時代の阪神のF1セブン(赤星選手をはじめとする7人の俊足選手)みたいに末廣さん直属の研究者を雇ってください!!」

こうして書くと末廣さんは「とても押しの弱い人の良さそうな上司」みたいに思えるかもしれないが、ホントーは理想主義者で鬼のような行動力と決断力を持ったパワフルかつ恐ろしい人だったのだ。何度も直談判が成功したのは、たまたまボクと末廣さんのそれぞれ別に思い描いていた方向性に合致する部分があっただけ。そのように指摘する専門家が多い(どこに)。

でもボクには大きな危機感があったんだ。2008年3月には、ウルトラエッチキューブリンケージ研究の立ち上げに大きな役割を果たした分野融合実験動物、もとい日本学術振興会博士研究員の中村謙太郎君が東京大学工学研究科の特任助教として栄転することが決まっていた。

このまま手を拱いていたらきっとボク達のプレカンラボは自然消滅してしまう! ボクはJAMSTECに初めて誕生したボトムアップゲリラ研究組織を絶対に潰したくなかった。それにブラックなボクとしては、地球科学と生命科学を一人の研究者の中で融合させる人体実験用のために、中村謙太郎君に続く活きのイイ生け贄が必要だったのだ(ニヤリ)。

「ラボひとり」渋谷君

その交渉はうまくいった。2008年4月には渋谷岳造君が最初のプレカンブリアンエコシステムラボラトリー専任ポスドクとしてやってきた。何も知らない渋谷君は、地質学にも岩石学にも関心のない微生物学研究者の大部屋にひとりポツネンと机を構え、たった一人のプレカンブリアンエコシステムラボラトリー研究員(芸名:ラボひとり)として完全放置プレー状態からのスタートを切ったのだった。

後年、渋谷君はその当時のことをこう語る。
「最初はホントに淋しかったですね。タカイさんがいない日は、一日中誰とも会話しない時が多かったです。でも逆に自由でした。構成員一人ですから、成果を出さないとすぐに首を切られるというプレッシャーはありましたが、だんだんその自由さが心地良くなっていきました」

渋谷君は孤軍奮闘し、研修生だった吉崎もと子さんといっしょに「原始地球におけるウルトラエッチキューブリンケージ再現実験」を見事に軌道に乗せてくれた。

それだけでなく、完全放置プレーをじっくり思索にふけることができるというアドバンテージに変え、「地球で生命が誕生したと考えられる約40億年前の深海高温熱水は、現在のブラックスモーカー型の酸性高温熱水ではなく、強アルカリ性の白っぽい熱水だったはずだ」という「原始高温強アルカリ性熱水」仮説論文を書き上げた。

原始高温強アルカリ性熱水仮説論文は、これまでのボクも含めた深海熱水研究者の常識を覆す革新的な深海熱水像を提示しただけでなく、ウルトラエッチキューブリンケージ仮説と互いに足りない所を補うよう形で統合できて、最古の生命誕生シナリオに大きなブレークスルーをもたらすことになった。

さらに言えば、その仮説は「放散虫が誕生もしていなかった太古代(約40-25億年前までの年代)の深海底になぜ大量のチャートが生成されるのか」、あるいは「酸素がほとんどなかったと考えられる太古代の海底になぜ酸化鉄でできた縞状鉄鋼層が形成されたのか」という地球史の研究上の長年の謎をダブルで一気に解決する程の破壊力をもった革命的アイデアだった。

= エンケラドゥスvsエウロパvsケレス(4/7) =

・・・・・ 宇宙に生命を探せ‼ ・・・・・

/群雄割拠の生命探査候補

 しかし内部海や内部深海熱水が存在したとして、仮にそこに地球の深海熱水に生息するような化学合成生命体がワラワラと蠢いていたとしても、分厚い氷に閉ざされた内部海にどうやって生命を探すんだ? どうやってその生命を持ち帰るんだ? という問題が出てきます。

 さらに、我々の宇宙探査機がなんとかその場に行って探査する、あるいはなんとか行ってブツを持って帰る、と言ってみたものの、ホントにそんなことが技術的に可能か? とか、成功確率はどうなんだ? とか、コストパフォーマンスはどうなんだ? でもお高いんでしょう? 2番じゃダメなんですか? と散々諸々突きまわされることが予想されるわけです。そして挙げ句の果てに「科学者の間で、多数決でも抗争でもいいから探査候補を1コに絞って持って来いや? お」みたいに難題を突きつけられたりすることも大いに有り得ます。

 このような状況を理解すれば、皆さんもきっと、「太陽系地球外生命探査計画」にも「エウロパ」派や「エンケラドゥス」派、「小さなこと(生命探査より惑星科学探査)からコツコツと」西川きよし的派、「いきなり地球外生命リターン」派、などなど諸子百家が存在し、少ないチャンスと研究・開発資金を巡る激しい駆け引き、があるんだろうなと容易に想像できるのではないでしょうか。ズバリそうです。

 一応ワタクシ、この原稿を「エンケラドゥスからいきなり地球外生命リターン」派として書くように恐喝要請されています。それは、Webナショジオの連載『青春を深海に賭けて』の最終章で「これからはエンケラドゥス深海熱水よ、そらそうよ」とか書いちゃったからなんですね。

 実際、その心意気は変わってはいません。しかしワタクシも、昨今の不況の世の中に吹きすさぶあまりに冷たくて厳しい荒風の中で揉まれに揉まれ、ぶっちゃけ「もうアナタの好きにして。アタイ行けるんならどこでも行くわよ」桃井かおり風な態度に変わりつつあるというか、なんというか。

 そんな中間管理職の悲哀に打ちひしがれる己のココロを奮い立たせるためにもやりましょうとも。原田知世的「私をスキーに連れてって エンケラドゥスvsエウロパvsケレス」対決を。

 そんなこんなで作り上げた対決表がコレ↓です。(次回に表示)

・・・・・・・・つづく・・・・・・・

動画 :探検世界の深海モントレー:デメニギス

 

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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

森のなかえ

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