読書の秋です。
秋だからといって、急に本を読みだす人間が日本にどのくらいいるのかは分かりませんが、しばらく滞っていたオススメ本の紹介記事を再開するには十分すぎるきっかけです。
今回ご紹介するのは、こちらの一冊です。
田中泰延(著)
ダイヤモンド社
私は普段、仕事で書類を作成するときだけでなく、ブログ記事を書くときも、
「なるべく多くの人に分かりやすく、あるいは楽しく読んでもらう」
ということを目指して文章を作っています。
作った文章を読んでいただいて、反響を得ることは素直に嬉しいですし、やりがいがあります。
ただ、文章を作るのにそれなりの労力を要するのも事実。正直、それを苦痛に感じて筆が進まなくなることもあります。
本書は、私が「人のために文章書くの辛い現象」を乗り越えるきっかけになったと言っても過言ではないかもしれません。
著者の田中泰延さんは、電通で24年間、コピーライターやCMプランナーとして活動されてきただけでなく、人気の映画評論コラムを執筆されていらっしゃいます。
田中さん自身も冒頭で述べている通り、本書は書くためのテクニックを教ようというよりも、書くための考え方や、心構えを示す内容となっています。
小手先のテクニックを駆使するのでなく、自分が書きたいこと、読みたくなるような文章を書こうという主旨なのですが、それを説く田中さんのざっくばらんな語り口がとにかく面白い。
思わずニヤニヤと笑ってしまうと同時に、
「ああ、この人は本当に自分が書きたいように書いているのだろうな」と、その自由な文体に思わず救われた気持ちになりました(笑)
コピーライターやCMプランナーの方が書いた文章本は、実践的なテクニックに溢れているイメージですが、本書はその点でひと味違います。
ただ、書き物を生業にしたい、普段文章を作ることが多い方には、気づきの多い一冊だと思います。
書店の売れ筋ランキングでも比較的上位になっているようです。
気になった方は、ぜひ手に取ってみてください。
アリーヴェデルチ!
【タカタカチェック】
●実は、書きたい人がいて、読む人がいる文章のボリュームゾーンは「随筆」なのである。
(中略)
わたしが随筆を定義すると、こうなる。
「事象と心象が交わるところに生まれる文章」
●よく文章指南の本には、「なにが書いてあるかが大切」という教えが書いてあるが、現実は違う。「だれが書いたか」のほうが、多くの人にとっては重要なのだ。だからこそ、「ターゲット層にバズりたい」「たくさん読まれたい」「ライターとして有名になりたい」という思い違いを捨て、書いた文章を自分がおもしろいと思えれば幸せだと気がつくべきだ。
●「この人のギャグはすべっている」と批判してくる者もいる。しかし、すべるのがスキーだ。すべることもできない人間は、すべろうともしていないのだ。そんなスキー場の往復の交通費を無駄にするような人間は、相手にする必要がない。
●調べたことを並べれば、読む人が主役になれる。
調べもせずに「文章とは自分の表現をする場だ」と思っている人は、ライターというフィールドでは仕事をすることができない。
いまからでも遅くはない。そういう「わたしの想いを届けたい!」人は、歩道橋で詩集を売ろう。
●あなたは世界のどこかに、小さな穴を掘るように、小さな旗を立てるように、書けばいい。すると、だれかがいつか、そこを通る。
書くことは世界を狭くすることだ。しかし、その小さなにかが、あくまで結果として、あなたの世界を広くしてくれる。
●言葉とは、相手の利益なる使い方をすれば、相手の持ち物も増え、自分の持ち物も増える道具なのだ。書いたら減るのではない。増えるのである。