every word is just a cliche

聴いた音とか観た映画についての雑文です。
全部決まりきった常套句。

未来の人

2019-12-31 | 雑記
2019年のベスト・・・・的なモノは後日に記すとして、2019年という年が自分にとってどういう年だったかを象徴するような盤だなぁと大晦日におもったので、そのことを綴る。




Cornelius版は”今日できた”歌詞カードとレコードを自分の死後に聴く「未来の人へ」という響きだったのが、坂本版では自ら「いない」ことを選んだかのように響く。”紙の上の文字”が遺書であるかのように。
この漂うタナトスは坂本慎太郎がソロとなってから常にまとっているムードだし、Cornelius版よりその要素が濃厚となっているのは歌唱者と作詞者が違う人間で距離があるからだろう。
「紙の上の文字」が遺書だと仮定して聴いてみると、この「未来の人」が”今日できた”辞世の歌で”友だちが歌い出”した曲だという解釈も出来そうだ。
編曲の方向性はCornelius版と大きな乖離はない。
音数は少なく、隙間を聴かせるようなアレンジ。ベースが朴訥になり、コードを奏でるギターも色気をみせることなく和音を奏でて生気のないような、幽霊のような編曲になっている。坂本の歌声も同様に淡々としている。
ゆらゆらとしたテルミンのようなハープシコードのような和音も伴ったサイケデリックな酩酊感は端から抵抗しないとでもいうような諦観が漂っている。
この諦観めいたムードが自分の2019年を象徴していたように思える。


この曲を収録した7インチ盤は(坂本慎太郎のレコードがいつもそうであるように)瞬く間に市場から姿を消した。


インスタグラムだけで繋がっている韓国の人がひとりいる。
互いの日常を画像だけを通じて通じる間柄の話したこともない人がこの盤が出た直後に東京に来ていた。
何処を探してもない・・・と愚痴る彼に「ここならあるかも」といくつかサジェスチョンを出したけれど、結局みつからず彼はソウルに帰っていった。


ある秋の日に、みつけましたとリプが届く。アメリカのアマゾンで買えたらしい(坂本慎太郎がアメリカ公演を行った関係でストック品がアマゾンに出てきたのだろう)。


なんてことはないやりとりなのだけれど、日韓の問題が変な感じによじれてしまった2019年なので個人個人の関係で、あったこともない間にそういう感情が生まれたことが嬉しいというか誇らしかった。


閑話休題。

この駄文も「未来の人へ」への手紙のようなもので、私のいない部屋でどう読まれるのか・・・・という思いをこめて投稿します。


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