『夢想と薔薇の日々 (Days of Rêverie and Roses)』は、あくまでもフィクションであり、実在する人物や事件とは一切無関係です。「夢想」は個人が有する自由な権利ですが、現実は現実としてきちんと区別なさったうえでお読みください。くれぐれも混同されないよう、よろしくお願いいたします。尚、当ブログ内の文章や作品の、無断転載・引用・コピーを固くお断りいたします。

お誕生日の王様


メチャメチャ急いでお風呂出たのに、寝室に行ったらすでにトシは眠ってて。

カッコいい♡
寝てるときも男前!♡


って、今はそんなこと思ってる場合じゃない。
なんでこの大事なときに寝てるんだよ~っ!!!

思い切って声をかける。

「トシ…トシ、……起きて」

パジャマの腕をつんつんすると、すぐに反応があった。

…ん、んー。

でも、目は閉じたまま。

「トシ!起きてよ、あと5分で誕生日になるよ!」

…んー?ヨシキ?

「うん」

起きたと思ったのに、またスースー寝てしまいそうになる。
今度は肩を揺さぶった。

「トシ、誕生日だったらぁ~」

…誕生日ー、ってぇ、、、、、

「そうだよ~トシの誕生日~!」

トシはおれの手を振り払って、うるさいなって感じで言った。

…もー、明日の朝でいいよぉ。




あ~あ~あ~~~!

テンションだだ下がり。


だけど今日ばっかりは負けてらんないもんね。


「トシ!起きて~!」


おれはトシの手を引っ張って、強引に起こした。


…眠いー。

「少しだけだから付き合って!」

…大昔から付き合ってるじゃん。

「バカぁ、違うよ~💦」



.。o○.。o○.。o○.。o○






誰よりも先に、お誕生日のお祝いを言いたかった。
子供じみてるって言われるかもだけど、そんなの関係ない。
いちばん乗りじゃなきゃ、何にも意味がない。


ふたりで並んで、枕元の時計を見てる。
トシは何度もあくびしてたけど、しっかり“付き合って”くれた。

「あと30秒…」

「20秒」

「10、9、8、7、」

いよいよだ!

「……3、2、1、0!やった!」

…パンパカパーン!10月10日でぇす!

「トシ、お誕生日おめでとう~!」

…ありがとうございまーす!

何気にトシが盛り上がってくれて、すごいうれしかった。
頭を深く下げたあとにニコニコ笑っててくれて。

「あの、さんざん騒いどいて、プレゼントまだなんだけど…」

そう言ったおれに。

…後日に期待しときます。

トシはさらっと答えた。

たぶんほんとは、期待なんかしてないと思う。
だいたい、トシが何か特別に欲しがってるとか、想像もできなかった。

仕事場でいろんなのもらうんだろうなあ。
家には持ち帰らないけど。

おれはプレゼント、どうしたらいいんだろ~?考え込んでしまった。










…ヨシキ。愛してるよ。

「え?」

…愛してるって。聞いてなかったの?ありがとね、いろいろ。

トシの告白はいつも唐突すぎて、どう対応していいかわからなくなる。

「あ、あ、トシ!聞き逃した、何?もっかい言って?」

とりあえず、ねだる。
そしたらトシは、いやな顔ひとつしないでくり返してくれて。

…だから、ヨシキのこと愛してるよ、って。

「え!ちょっともう一回…」

…ヨシキ、愛してるよ。

「もうい…」

…コラ、調子に乗るな!笑。

「あはっ」

トシが腕を伸ばしてきて、おれの頭を自分の胸に引き寄せた。


びっくりした。
そのままぎゅ~って、抱きしめられたんだもん。

…プレゼントはこのコがいいや。

「、え、何言って…」

腕の中でじたばたしてたんだけど、事はまだまだここからだった。
トシが、言い聞かせるような口調で言ったんだ。



…これからもずーっと、そばにいろな。離れるなよ。
「!」


口説かれてる!?

今さら…?
でも本気~!?!?


…んでね、誕生日には毎年、ヨシキが真っ先に言うんだよ、『おめでとう』って。

「ぅ…/////」

やられた。
完全にノックアウト。

鼻の奥から、涙がツーンと込み上げてきて止めようがない。

…返事は?

「……うん、、、はい~💧」

なに、感動しちゃった?笑。

「うん。しちゃった…」

照れ隠しに笑うけど、涙がじわ~って。
トシのパジャマにぐいぐい顔を押しつけちゃった。

…ほら、またすぐ泣くー。

「泣いてない!」

…泣いてるでしょー?

トシがおれの髪をクシャクシャってした。
やさしい笑顔なの、わかる。

…泣いてるヨシキもかわいいけどさ。

「トシが泣かせるんだよ~」

…そう?

「そうだったら。」

…うそだぁ。

「ほんと。。。こうやってどれだけの男やら女やら泣かせてきたんだか」

トシはおれの体を抱いたまんま、ほんの一瞬間をおいてから呟いた。

…添い遂げるのはヨシキひとりなんだから…いいじゃん。

長い髪が頬っぺたや首にぱさぱさ落ちてきて。
おれは、なんて言ったらいいのかわかんなかった。

「うん…」

やっぱりいろいろあったんだな~ってトシの過去に嫉妬したのは確かで。
でもおれだってトシのこと忘れようとして女作ったじゃんって、自分を責めたり。

複雑~、、、なんて思ってたら、お互いの過去が哀しくて、涙がポロっと手の上に落ちた。

「トシ……」

…ヨシキ!いつまで泣いてんの。

トシが、おれの頭をゲンコツで小突いた。

「ご、ごめん」

グシュグシュって鼻をすすったおれに。

…相思相愛なんでしょ。

トシはそう言って、楽しそ~うにケラケラ笑った。


…腕枕してあげるから、早く寝な。

やっと体を離してくれたけど、おれはまだ涙ぐんでて。
前髪かきあげて、ごしごし目をこする。

…泣き虫なお姫様で困るよー。



横になったトシが、からかい半分にこう言って、それから自分の隣の布団をポンポン叩いた。

…はい、ここ。

「いいの。。。?」

…お姫様の特等席だからね、いいの。遠慮しない遠慮しない。

トシのその言葉に、見事に心を打たれて、またしてもおれは何も言えなかった。




.。o○.。o○.。o○.。o○






真っ暗な部屋。
夜とトシに抱きしめられてる。
ぼんやりとしたあったかくて心地いい熱だけが、ここにはあって。


「なんかさあ、これトシの誕生日じゃなくて、おれの誕生日だよね」

…なんで?

「なんでって。。。トシには何にもなくて、おればっかプレゼントもらってるじゃない」

…さっきも言ったけどぉ、俺はヨシキだけで十分。世界一のプレゼントだよ。

「そんなこと言ってもさあ~」

だって、だって。

プレゼントがおれって言ったって。
トシはキスもエッチも求めてこないし。

変じゃない?トシ。

ぐるぐる考えてたら、おれの頭の中見透かしたみたいにトシが呟いた。

…ヨシキが今ここにいることがね、俺には世界一のプレゼントなの。ちゃんと息づかいが伝わってくること。隣にいて触れられること。

「……」

…セックスだとか何だとかは二の次だよ。

「しないって意味?」

…今は。

「おれの、……せい?

…違うよ。お楽しみはあとでゆっくりね、って♡

そしてトシは、おれの髪に、チュッて軽くキスしてくれた。

…そろそろ俺 限界。寝るよ?

「うん。付き合ってくれてありがと」

…あはは、天使さまの祝福を受けてから眠るなんて、俺はしあわせもんだと思わなきゃ。


力強く抱き寄せられて、おれはトシの肩に頬をうずめた。
そして今夜のトシのセリフを片っ端から想い浮かべた。
下手したら、今度こそ真面目に大泣きしちゃいそう。

なんで今日はやたらと、トシの言葉にクラクラ来ちゃうのかな?
変なのはおれの方……?


…おやすみ。

「うん…おやすみ」


温もりに守られて、そっと目を閉じた。







きっとね
今日はトシのお誕生日だから


誰よりも人一倍 光り輝いてるんだよね


大切な時間
分かち合ってくれて ありがとう



いつまでも

いつまでも ずっと



あなたのそばで
お誕生日のお祝いする約束
絶対に おれ…守るから─────♥️














お誕生日の王様

《END》
遅くなってすみませんでした!
バナートシ3
ばかっぷるバンザーイ!✨🍷🎂🍷✨