医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

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精神・人格異常(その9) 「女子高生コンクリ詰め殺人事件」の場合

2018年09月17日 | 神経
私の趣味の1つに読書があります。
だいたい1週間に1冊のペースで年間50冊ほどを読みます。興味の湧いたテーマがあるとそのテーマに関する書籍を集中的に10冊以上読むこともあります。

現在、集中的に読んでいる本は「人格や性格の異常」に関しての本です。このことに関して、最近私は30冊ほど読みましたので、お勧めの本をご紹介しながら記事を書いているシリーズの9回目です。

1989年、東京都・足立区綾瀬で「女子高生コンクリ詰め殺人事件」が起きました。被害者を誘拐・監禁・輪姦し、激しい暴行を加えて死なせたあげく、死体をドラム缶に入れコンクリートで固めて埋め立て地に遺棄するという“鬼畜”のような犯行でした。

詳しくは、文庫 女子高生コンクリート詰め殺人事件 (草思社文庫)に書かれています。特に第6章には、犯人が「境界性人格障害」として「うすっぺらい人間関係」の持ち主としてとらえられていますが、1990年頃のファンクショナルMRIがまだ普及していない時代の分析であり、「サイコパス」として「恐怖」を感じる扁桃体が小さいか活動が弱く、「恐怖」を感じにくい特徴の分析はなされていませんでした。
functional MRI

この本は、あの山口県光市母子殺人事件の犯人が当時少年でありながら死刑判決になった2012年以前に書かれているためか、犯人の少年達よりそれを育てた親たちに焦点が当たっていますが、第7章「暗い部屋」を読むと、本当に胸くそが悪くなります。

むしろこちらの方が、遺族、木村洋氏の裁判での戦いを描き、大変興味深かったです。

なぜ君は絶望と闘えたのか―本村洋の3300日 (新潮文庫 か 41-2)

扁桃体に関しては
ここの「扁桃体の活動の神経心理学的関連」に詳細に示されています。まとめてみると、
1、境界性パーソナリティ障害の患者は感情の表情表現に対して左扁桃体の活動が有意に増加する。
2、境界性パーソナリティ障害の患者は中立の表情を分類することが困難であるか、または恐怖表情をしていると回答した。
3、境界性パーソナリティ障害の患者が恐怖表情や恐ろしい場面に直面した際に扁桃体の過剰な活動が見られる。
4、より重症な社交不安障害の患者ほど、扁桃体の反応が大きい
5、うつ病の患者は特に恐ろしい表情を処理する際に過剰な左扁桃体の活動を示し、抗うつ薬を服用すると正常化する。
6、成人および青年期の双極性障害の患者では、扁桃体と海馬の体積が有意に小さくなっている。
7、正常な参加者に対して恐怖表情や異なる人種の顔の画像を呈示した際、その呈示が無意識的であったとしても、扁桃体の活動を増加させる。

犯行グループ4人の1人が、2018年8月川口市の路上で殺人未遂事件を起こしました。この事実を報じた『週刊新潮』(2018/9/6号)は「少年法の敗北」と指摘しています。綾瀬の事件で、犯行グループ4人は未成年だったため、少年法で守られていました。少年法は犯罪者の「更正」を前提としたものですが、そもそも「サイコパス」は脳の異常なのですから、病気としての治療法が確立されなければ、精神論・根性論などで「更正」させることは不可能です。

時々「いじめをなくすにはどうしたらよいか」などと議論されていますが、あれは的を射ていません。
いじめをする者は「脳の器質的異常」をかかえており、そういう奴はホリエモンや井川同様、一定の割合で存在します。

いじめや犯罪の被害を少なくするには、私たちがいち早くそういう人間を「サイコパス」や「いじめをする脳の人間」だと診断して、その人間から離れて暮らすことを認めた社会を確立することなのです。


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