【生きものめぐりコラム1】自然ジャーナリストとして仕事で歩いた練馬の思い出 | 首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

雑誌編集者である著者が自ら首都圏の公園や自然地に足を運び、そこで出合った生きものの情報をお届けします。
都会の印象が強い東京にも、カワセミやタカ、多くの昆虫が暮らしています。「首都圏ってこんなに生きものが多いのか」と驚かされる情報が満載です。

以前にもお話しました通り、

私の仕事はガーデン雑誌の編集・ライターです。

最近ではガーデンツーリズムの観点から、

花や緑を見に行く旅企画を誌面で提案する特集を組んでいますが、

とりわけ近年は近場でも日帰りで楽しめるスポットの紹介に努めており、

9月発売の最新号では東京都の練馬区を紹介させていただきました。

 

 

 

 

<写真:白子川源流 大泉井頭公園>

 

実は本格的に練馬区内を歩いて回ったのは、

この取材にあたって現場リサーチしたのが初めてのことだったりします。

「首都圏生きものめぐり」というタイトルの本ブログですが

大抵は動植物の観察できることが保証されている公園・緑地を

ピンポイントで訪問するスタイルをとっているため(地雷を踏みたくないので)

これまでに練馬区内で訪れたのは石神井公園だけでした。

前回アップした光が丘公園も、雑誌の企画で練馬区に注目しなければ

いつまでもスルーされたままだったかもしれません。

 

 

 

 

 

 

練馬区を歩いていて最も強く感じさせられた「魅力」は

恐らく「水がきれい」ということじゃないでしょうか。

最近、Facebookの鳥好きグループで

頻繁に白子川のカワセミ情報がアップされるのですが

ご存知の通りカワセミの観察できる川というのは

首都圏においては決して珍しいものではありません。

 

特筆すべきは、その水の透明度にあります。

 

 

 

 

 

ご覧ください。水草や水底が透けて見えるほどです。

細かなところで当然差はあるのでしょうが、

その澄んだ水はかの柿田川湧水群(静岡県)を彷彿とさせます。

 

噂には聞いていても、まさかここまで透明度が高く

清流と言って差し支えないほどだとは思わないもの。

百聞は一見に如かず。やはり直接目にしなければ

この美しさにはいつまでも気づかないままだったはずです。

 

実際、何も知らない人に「これが東京23区の川です」と伝えても

俄かには信じられないのではないでしょうか?

 

 

 

 

 

文字通りの清流であるゆえか、

清流の宝石と名高いカワセミも、ごく普通に現れます。

ここ数ヶ月では毎日観察されているようです。

 

もし練馬区内でカワセミを撮りたいのであれば

間違いなく石神井公園よりも適したスポットといえます。

また、練馬区内では他にも石神井川(こちらも結構水がきれい)などでも

結構な頻度で観察できます。私も視察中に何度か出くわしました。

 

 

 

 

 

 

杭にとまって獲物を探すカワセミ。

 

 

 

 

 

 

ドジョウらしきものを捕まえたカワセミ

この写真は雑誌でも使わせていただきました。

 

にしてもこれだけカワセミの数が都内で増えてきたにもかかわらず

未だに清流の象徴といえばカワセミであり、

私も含めてバードウォッチャーが目の色を変えて追いかける……。

何故なのか? メタリックブルーで美しいからか? 可愛いからか?

 

 

 

 

 

同じ白子川の生きものでも

なぜ?コイツは別の方向

キャーと言われるのか。

まあ喜ぶ方も大概変わり者だとは思いますが

 

 

もちろんアオダイショウだって

それなりの自然度がなければ生息しませんから

これもまた白子川の自然度の高さを象徴していると言えます。

 

 

 

 

 

 

ギンヤンマ(左)やハグロトンボ(右)も健在。

 

「最近は水質汚染で首都圏のトンボが激減した」という

新聞やネイチャー誌でよく見られるような論調もありますが

その逆に「街中の公園でも普通に見られる」みたいな記述も

図鑑を中心に結構見られます。(実際トンボの中ではよく見ます)

 

両極端な論調について、どちらが正しいか確かめたいのであれば

資料を読み漁るよりさっさと現場に足を運んだ方がいいでしょう。

ここでもやはり「百聞は一見に如かず」なのです。

 

 

 

 

 

ちなみにこれは今年石神井公園で撮影したチョウトンボ

ギンヤンマやハグロトンボが流水域でもよく観察できるのに対し

何となく本種は止水域でしか目にしないような気がします。

 

ヤゴの好む環境がそのまま反映されているのでしょうか?

こういう所でも「なぜ?」と色々疑問がわいてきます。

 

 

 

 

 

 

なぜ、こんなに緑豊かな公園が

練馬区内には多いのか?

(左:石庭の森緑地 右:牧野記念庭園)

 

 

 

 

 

なぜ、としまえんのすぐ横に

日本庭園があるのか?

ちなみに雑誌発行時点ですでに閉園していたため

練馬の特集でありながらとしまえんの情報は掲載されていません。

 

 

 

 

 

 

なぜ、ここに花壇があるのか?

なぜ、美しく維持できるのか?

(左:光が丘公園 右:四季の香ローズガーデン)

 

我々の雑誌の役割は、こういう「なぜ?」を自分で見つけ出し

わかりやすく紐解いて読者に伝えることにあるんだろうなと。

誰かから教わったわけではなく、勝手に私がそう考えています。

 

 

 

 

 

人が多く介入している分、むしろこうした都心部の方が

「なぜ?」が見つかりやすい(つまり記事が作りやすい)

そんな気がしなくもありません。ただ、それは手つかずの自然地を

あまり取材したことがないからそう感じるだけなのかも?

(写真:田柄川緑道の花壇)

 

 

 

 

 

人の手によって守り育てられているからこそ

何かしらの「物語」が生まれる……。

それを紐解いていくことに面白さを感じてしまうと

正直、首都圏という面積の限定されたエリアですら

何年かかっても周り尽くすことができません。

そこが町歩き&公園めぐりの最大の醍醐味であり

最大の呪縛なのかもしれません。

 

今回、特集を組むことでようやく練馬区の花と緑のある場所を

数多く知ることができましたが、私が目にしたのはあくまで一部分の

夏の風景だけ。もし本当に練馬を知り尽くそうと思ったら

何か月あるいは何年もかけて張り込みをする必要があるでしょう。

 

多分、それだけ年月をかけて直に東京をリサーチし尽くさない限り

「東京は●●●(←主に殺風景などのマイナス表現)な町だ」と断言することは

できないんじゃないかと、今回改めて思い知らされたような気がします。

 

 

★現在、生きもの探索ツアー開催に向けて準備中! ご期待ください。m(_ _)m