ザウルスの法則

真実は、受け容れられる者にはすがすがしい。
しかし、受け容れられない者には不快である。
ザウルスの法則

人類の第2次低脳化現象 (3) 小説 「第6ポンプ」 の描く近未来

2018-10-08 07:36:43 | 哲学・歴史・考古学

人類の第2次低脳化現象 (3) 小説 「第6ポンプ」 の描く近未来

当ブログの読者の一人から “人類の第2次低脳化現象”が小説 「第6ポンプ」 Pump Six  の描く世界に通じる旨のコメントがあった。作者のパオロ・バチガルピは著名なSF作家である。ちなみにバチガルピという一風変わった名前は、イタリア系のファミリーネームのようだ。

彼の長編小説 Windup Girl  「ねじまき少女」  は近未来のタイを舞台にした異色の作品で、数年前にわたしも面白く読んだことがあったが、Pump Six  「第6ポンプ」 はまったく知らなかった。この Pump Six   「第6ポンプ」 の舞台は近未来のニューヨークである。

どこにもはっきりとは書かれてはいないが、2050年から2070年くらいの時代設定のように思える。下水処理システムのマニュアルについて主人公が"This manual was printed in 2020." と言い、部下が  "That's pretty damn old." 「相当の年代物だな」 と言うくだりがある。これからすると、少なくとも2020年から30年~50年は経っている時点と解釈できよう。

SF作家の描く未来図、近未来図は一般的に ディストピア(逆ユートピア) になる のだが、バチガルピの場合、それは石油の枯渇、人類による自然環境破壊、バイオテクノロジーの濫用によるモンスターの跋扈といったテーマになる。

 

 Pump Six  「第6ポンプ」の場合は、環境破壊は大気汚染、水質汚染、食物汚染といったかたちで深刻化していて、人体と頭脳の正常な機能、人類の正常な生殖・再生産を損なうほどに進んでいる。「沈黙の春」 の延長線上で 人類の劣化” がかなり進んだ近未来の世界といってもいいだろう。

 

ザウルスは、 「人類の第2次低脳化現象」 の原因としては以下の3つを挙げている。

1) 脳への負担の、コンピュータ・人工知能による劇的な低減

2) 言語思考からイメージ反応への移行による言語運用能力の低下

3) 電磁波による脳へのダメージの増大

 ザウルスもバチガルピも “環境破壊” に起因する “人類の劣化” を問題にしている。バチガルピは主に目に見える大気汚染、水質汚染、食物汚染といった “20世紀的かつ古典的な環境破壊” を問題視しているが、ザウルスは特に“電磁波環境” における “21世紀的な目に見えない環境破壊” を問題視している。

近未来のニューヨークの下水施設の管理部門に働く主人公は健康オタクで、水道の水は一切飲まず、ボトルの水を飲み、シャワーはフィルター付きのシャワーヘッド、汚染水が怖くてプールで泳ぐのもパスである。彼のまわりの人物はみな知能に問題がありそうで、主人公はイラつく日々を送っている。主人公自身は健康オタクではあっても、大気汚染にやられていて喘息持ちで、吸入スプレーをいつも持ち歩いている。

彼の妻のマギーからしてちょっと行動が短絡的で、故障したガスオーブンの中に頭を突っ込む。ガスの匂いがしているのに、中が暗いのでよく見ようとしてライターを使おうとするのを、主人公がびっくりして取り上げる場面から物語は始まる。「コンセントの差し込みに詰まったゴミを掃除するのにフォークを突っ込むような」 低脳ぶりが主人公のまわりでは普通のことになっている。

職場の下水施設管理部門の部下もかなりの低脳ぶりで、下水ポンプの故障が起きたのに、責任者である主人公にすぐに知らせないまま12時間も放置するありさまである。主人公の上司も主人公の部下に負けず劣らずの低脳ぶりで、「直さないとクビだぞ!」 と脅すばかりである。

主人公は今日の水準からしても特に頭の回転が速くて優秀というわけではないのだが、小説中の近未来のニューヨークでは、彼の部下は主人公を 「あんたは頭がいい!」 とほめそやし、何で大学に行かないんだと聞くほどだ。この部下は頭にじゃりっぱげがあっていつもポリポリ掻いているのだが、どうやら原因は生活環境中のさまざまな汚染物質のようなのだ。

 

ザウルス 「人類の第2次低脳化現象 (2)」 

人間の労働力の一部である人間の知能も、より信頼性のある人工知能に置きかえられれば、人間の知能は “失業” する。今日ただでさえ見劣りのするその能力は人工知能にさらに水をあけられ、利用価値も低下することになる。そして、使わなければ衰えるのだ。

 

ザウルス 「人類の第2次低脳化現象 (2)」  

“馬” は当時の “新しいテクノロジー” のおかげで、荷車を引いたり、大砲を引いたり、人間を運んだり、といった重労働から次第に解放されたのである。

 そして、“人間” は今 “人工知能” のおかげで過重な頭脳的負担から解放されつつある。

  

そうした低脳層の中でも “トログ” trog と呼ばれる最下層の連中が路上にはゴロゴロいる。彼らは近未来の世界で普通の人間から生まれているのだが、環境汚染によって劣化、損傷した親や祖父母たちのDNAのために先天的な知的・身体的障害を負っている “種族” なのである。

そして、どうやらこうした障害児たちは親にも捨てられ、ホームレスになって群れて生活しているようなのだ。いわば “低脳ゾンビー” なのだが、一般市民に危害を加えたりはしないので、いたって “平和的な種族” として何とか一般市民と共存している。

主人公は、一般市民よりも “トログ” trog  のほうが性格的には気立てが良く純粋だと思っている。

ザウルス 「人類の第2次低脳化現象 (2)」 

ケータイ、スマホ、電化製品、自動車、高圧電線などから放射される電磁放射線や、TV電波、ラジオ電波などはすべての生命にとって有害であり、無害なものは何一つないのだ。人間は20世紀になってから、目には見えないが、とんでもないものを地球上に放出し始めたのである。そして、地球の生命にとって有害なこの人工的な電磁放射線は、21世紀になって爆発的に増大 していて、放出している人間自身までも大きな損傷を受けるほどになっている。しかし、この人類の “グローバルな自損行為” に気づいている人は少ない。

 

“トログたち” trogwad  は路上でニヤニヤ、ヘラヘラして一般市民に物乞いをしたり、お互いに絡みあったり、性行為をしたりしているので一般市民からは顰蹙を買っている。しかし、市民たちはこうした “トログたち” trogwad の身の上を理解しているために、意外に同情的で、お金や食べ物をあげたりしている。社会が生んだ “障害者階層” として、保護している恰好である。

  

ザウルス 「人類の第2次低脳化現象 (2)」 

さて、マイクロ波が脳に及ぼす一番重大な影響は、 “血液脳関門” を開いてしまう ことが定説となっている。

   中 略

脳への電磁放射線の曝露 によって、有害物質や病原菌がノーチェックで大手を振って人体の、そして精神の中枢である、最も神聖ともいうべき脳の領域に土足で上がり込んでいくことになるのだ。脳腫瘍ができるばかりではなく、重金属が脳に蓄積して、若年性認知症が発症する可能性もある。

 実際、携帯電話が普及し始めた頃から  “自閉症児が増加”  したのは、母体内の 胎児の “血液脳関門” が電磁波によって開いて、さまざまな有害物質が胎児の脳内に流れ込むためではないかとも言われている。

  

ちなみに、“トログ” trog  を調べてみると、1970年代のイギリスのテレビドラマに出てくる、人間になりそこないの 原始人のような霊長類につけられた呼び名である。

Pump Six  「第6ポンプ」 の作者が、このテレビドラマの “トログ” から持ってきて流用していることは明白である。小説内でも 'mash-faced monkey people' と表現している。この小説では、ニューヨーク市民たちが、そうした “低脳ゾンビー” を “トログ” trog  と呼んでいる ことになっている。

主人公と妻は、子供を作ろうとしているが、もう1年近くできない。知り合いのある夫婦は3年かかってやっとできたが、別の夫婦の場合は流産している。化学的な環境汚染が進んだために、近未来において人類の生殖能力も大きなダメージを受け、子供を作ることすら困難になっている。かりに生まれても先天的な低脳はもはや普通であり、特にひどい場合は “トログ” trog  になる運命が待っている。実は、主人公は妻と子供を作ろうと決めた頃に、妻が “トログ” trog を産む夢をみてぞっとしたことがある。

ザウルス 「人類の第2次低脳化現象 (2)」

 実は、妊婦には  “脳関門”  とは別に “血液胎盤関門” というものがあって、母体から胎児への血流をフィルタリングして、有害物質が胎児の身体に流れ込まないしくみが備わっている。しかし、この “胎盤関門” もマイクロ波(高周波電磁放射線) によって開いてしまう ことがわかっている。

  つまり、妊婦がマイクロ波にさらされると、有害物質が “2つの関所を突破” して胎児の脳に流れ込んでいる可能性があるのだ。母体の側の  “胎盤関門” と、胎児の側の “脳関門” の両方が無防備に開いてしまうと考えられる。

 一つの国が電磁波浸けになっていけば、その国民の遺伝子は損傷が蓄積して、どんどん劣化していく。こうした劣化は不可逆であり、次の世代へとさらに蓄積されていく。

 端的に言って、その国民は脳と身体への損傷を重ね、低脳になり病気になる。そういうことにいつまでも気づかない低脳な国民はますます低脳になり、どんどん病気になっていく。

  

市内の公園は “トログ” trog の溜まり場になっている。彼らを排除するか、せめて不妊手術 (野良猫並み?) をすべきという嘆願書がニューヨーク市に出されたことがあったが、市長は人権擁護を根拠に却下した。その後市長にはコネチカット州にトログの隠し子がいることがタブロイド紙にすっぱ抜かれたりというエピソードがある。

妻のマギーが主人公に、今晩ニューヨーク市内のディスコクラブ Wicky に行こうと誘う。彼女の女友達のノラも一緒に行くと言う。健康オタクの主人公はこのノラという女の顔にあやしい “できもの” がいくつもあるのが以前から気になっている。

 ザウルス 「人類の第2次低脳化現象 (2)」

脳腫瘍という病気はかつては珍しい病気であったのが、昨今ありふれた病気になってきているそうだ。ケータイやスマホの爆発的普及と何らかの関係があるのではないかと考えることに無理があるだろうか?脳腫瘍の発症までいかなくても、脳は相当に損傷を受けているということである。もちろん電磁波の影響は脳腫瘍に限らない。 “電磁波漬け” になっていると、まず免疫系が弱体化する。自宅が WiFi になっている家庭では家族全員の健康水準がガクンと引き下げられていると思っていい。

  

あの界隈の水や飲み物は安全じゃない、と主人公は妻に以前から言っている。

しかし、けっきょく主人公は一緒に Wicky  に行くことに同意する。

実はこの Wicky  というディスコクラブの入っている高層ビルの下水設備の修理を以前してやったので、そこのオーナーのマックスは主人公に恩義を感じている。今日もどうやら下水設備に不具合があるらしく、水道の水に泡が出ているというので、ちょうどやって来た主人公をつかまえて又もや何とかしてくれと頼むありさまだ。そして、主人公が下水設備室に入り込んで直してやると、「世界を救ったヒーロー」 のように扱ってくれて、ドラッグの Effy  をおまけしてくれるのだ。

Wicky  では主人公と妻と、彼女の女友達は Effy  の注射でラリって朦朧としている。路上では “トログ” trog 連中はドラッグでラリっていることがあるが、一般市民はこういったディスコでドラッグでハイになるのはふつうのことなのだ。ケミカルな汚染物質や汚物にまみれた近未来の生活では、逃避的快楽も化学物質に頼ることになる。

 

翌日の朝、出勤の途中でベーグルを買うのだが“トログ” trog  っぽい店員は低脳なのでお釣りの勘定ができない。

そこで、主人公は代わりにお釣りの硬貨を確認しながら計算してやる。 しかし、こんなことは日常茶飯事なのだ。

 

ザウルス 「人類の第2次低脳化現象 (2)」 

iPhone のようなハイテクの最新鋭のモバイル端末を使い倒しながらも、使っている当人の頭脳は情けないことに電磁放射線によって、確実に機能不全をきたしているのだ。記憶力減退、頭痛、うつ病、不眠、集中力減退、思考力減退、思考混濁といった症状が、実はそのまま “人類の第2次低脳化” なのである。

 しかし、人類がいくら低脳化しても、テクノロジーの進歩によって十分に埋め合わされるので、社会的には大きな支障は生じないであろう。逆に言うと、人類がテクノロジーにますます依存するようになるだけのことである。

 ただし、個々の人間は、電磁放射線による損傷に起因する頭脳や身体の障害を終生背負っていくことになるだろう。早い話が、障害者の続出である。しかし、それが余りにも多いので常態化してしまって、逆に問題にならなくなってしまうだろう。現代における花粉症がいい例だ。いずれにせよ、2050年までにこれが表面化するであろう。そうした苦痛やストレスをまぎらす新しいドラッグや薬品、そして、さまざまなセラピーも出てくることであろう。

 

 主人公は第6ポンプの修繕のために設備の工学的なデータを求めてニューヨーク市内のコロンビア大学に出かけて行く。

 

そこの学生たちは 公園の “トログ” trog  と大して変わらず、キャンパスの中庭のあちこちで人目もかまわずセックスに耽っている。

図書館を管理している老女は主人公に、「わたしの夫はこの大学の化学系の教授だったの。」 と言う。

「昔は 『母乳が一番とはかぎらない』 といったような特集記事の雑誌なんかがあったものよ。夫の教える学生たちの出来が毎年毎年悪くなってきているような気がするまで、まったく気づかなかったのよ、わたしたち。そこで夫が学生をテストしたら、夫が正しいことがわかったの。」

 

すると、主人公は、「われわれがみんな “トログ” trog  になりつつあるなんてことはありえないですよ。」 と反論する。それに対して老女は 「そんなこと誰が保証できるの?でもたぶん、あなたの言う通りかもね。そこまでひどい状態じゃないのかもね。でも、こうして今あなたとしている会話は、夫が死んでから、いちばん長い会話なのよ。大抵の人たちは、物事に注意を払うということが昔のようにはできなくなっているようにわたしには思えるのよね。」  -------  会話部分はすべてザウルスの訳。

 

ザウルス 「人類の第2次低脳化現象 (2)」 

そもそも、“イメージ反応” は “言語思考” とは根本的に異なる“イメージ反応” は、言語や論理を媒介しないという意味では非常に “原始的” な反応である。チンパンジーも羊もトンボもみなイメージで判断して反射的に行動する。

“言語” はまるで “人工知能” のために人間が長い時間をかけて用意したようなものである。そして、当の人間は原始的な “イメージ反応” に退化して “低脳化” しつつある。

  

 ライン、ゲーム、マンガがほとんどのスマホユーザーたち

 

人類の第2次低脳化現象 (1) 人類は過去に一度 “低脳化”  している

人類の第2次低脳化現象 (2) あなたも今リアルタイムで “低脳化” している?

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1 コメント

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JFKJr.夫妻生存の証明 (希ノ醍 輝平左ヱ門)
2018-10-23 14:44:59
お世話になります。

#QAnon情報関連です。

トランプ大統領の集会で、トランプ氏の後ろに陣取る人物の中に、JFKJr.夫妻がいたという。

証明の、YOUTUBE動画がありますので、紹介しておきます。

(1) 「 Are JFKjr. And Lauren Bessett alive? 」

(2) 「 Is Vincent Fusca. JFKJr.? 」

(3) 「 Carolyn Kennedy at Trump Rally 」

このくらいは、常識かな~。

今は、アメリカ共和国で進む、悪党退治作戦の重要局面です。

事の真偽を調査、判断するのも、良い頭の体操になるでしょう。

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