エヴァの震える朝 / エヴァ・シュロス | 趣味は読書です

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ひたすら読んだ本たちの記録

エヴァの震える朝 15歳の少女が生き抜いたアウシュヴィッツ (朝日文庫)/朝日新聞出版
¥1,058
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1944年5月11日、エヴァ15歳の誕生日の朝、

アムステルダムの隠れ家に

ゲシュタポが踏み込んできた。

間もなく家族4人が乗った家畜用列車は、

アウシュヴィッツへ。

絶滅収容所の苛烈と、解放の足音と――。

アンネ・フランクの義姉が告白する、

『アンネの日記』の続きの物語。





きっと宣伝のためにアンネ・フランクを

すごい押し出してきてますが、

アンネのことは最後の方まで全然出てきません。

ただ、エヴァのお母さんが、戦後だいぶ経ってから

アンネの父オットーと再婚した、だけのこと。


そんなことよりも、

めちゃめちゃよかったです、この本!

無理にアンネとか出してこなくても

十分読み応えのある内容。

なんてったって、

あの絶滅収容所からの生還者なのですから。。


本の最初の方に、

「アンネが日記で、

人の本性は善、

と書いたのはあの収容所を経験する前だったから」

とばさっと書いてあり、

やはりあの収容所を経験して

生きて帰ってこられた人の言葉の重みは

違うなあと思いました。

エヴァがなぜ生き残れたのか。

その理由は、ただただ、

お母さんと一緒にいれたから、だと思います。

そして、エヴァのお母さんがなぜ生き残れたのか。

その理由は、

ずっとエヴァと一緒にいれたから、だと思います。

どちらかが最初や途中で欠けていたら、

間違いなくもう片方もすぐ死んでいたことでしょう・・。


そもそもエヴァの年齢は、普通なら(普通ではないが)

収容所に入る前にガス室に送られていた年齢。

なのになぜ、SSの目を欺けたか。

それは、その選別を受けていたときに、

お母さんが無理矢理

自分のおばさんくさい服と帽子をエヴァに着せていたから。

別に年齢を詐称しようとして

そうしたわけではなかったのですが、

それが結果的に二人の運命を変えましたね。


その後の収容所の生活でも二人には

何度も死のピンチがありましたが、

そのたびに、本当に些細なことで命拾いを何度もします。

でも人の命の長さって、

そんな些細なさじ加減で

決められていいものじゃないよなあ、と・・。


その中には、

自分たちで声を上げて死を回避したポイントもいくつもあり、

意外と、絶滅収容所でも

何かを要求することは大事だったんだなあと思いました。

変に声を上げると

目をつけられそうで怖いと思っていましたが。;


まあでも何といっても、二人の運命は

看護師の知り合いの“ミニ”が

握ってくれていましたよね。

絶滅収容所では、

病気になる=労働力じゃなくなる=死

を意味しますから・・。

それでもお母さんが生き残れたのは、

間違いなくミニがかくまってくれたからですね。

本当に本当に、よかった。


あと読んで驚いたのは、私、

収容所の解放=戦争終了!

かと思ってたんですよ。違うかったんですね・・。

ある朝起きたら、

収容所を管理していたドイツ人が

いなくなってるんです。

それでまずエヴァたちは

自由にうろうろできたんです。

そのときの感動といったら。涙


戦争で、ドイツがかなり危うい状況になってきたので、

ドイツ人たちは収容所を捨て逃げていった。

そこからは数少ない生き残りたちで、

まずはたらふく食う。

そして自分たちで生活を回し始めます。

その間、定期的に

ロシアの軍人たちが移動のため?に

来ては去り、を繰り返します。


と少し気を抜けたところに再びドイツ人がやってきて、

歩いて別の収容所などに移動させられる、

いわゆる“死の行進”が起こります。

しかしなんとエヴァとお母さんは

それも奇跡的に避けることができ、収容所に残留。

そしてソ連軍が本当に収容所を解放しにきた際に、

真の解放、となったのです・・!


せっかくいったんは危機が去ったのに、

そこからもう1度死に追いやられた人がいたのは

知らなかった・・(不勉強)。

しかもその数がまた、膨大なのです。。

もったいなすぎる!!!!!!!!!涙

でも、ドイツ人が

いったん収容所を出て行ったときにはもう既に、

そこまで頑張って生き抜いてきた人たちにも

力は残っていなかったでしょうね。。

エヴァたちは本当に本当に、幸運だった。。


その後は、ソ連軍とともに

様々な国を移動して祖国へと戻る旅です。

その中でエヴァとお母さんは

行ったことのない国々でプチ冒険を楽しみます。

そこでのピンチの際の、

「だからといって撃ちゃしないと思うわ」

という言葉に、

これまでの生活の異常さ、そして

もうその危機は去ったのだという心からの安心を感じ、

胸がいっぱいになりました。


ただでさえ数の少ない、収容所からの生還者。

そしてこうやってそれを本に残してくれる人の希少さ。

いかにこの本が貴重かがよくわかりますね。

たくさんの人に読まれてほしいです。

エヴァは今も存命。

ホロコーストは、

そんな今も生きれるぐらいの人が実際に経験したことなんだ、

大昔に起こった、自分に全く関係のないことではないんだ、

と気付き恐ろしくなりました。

まさに負の世界遺産。

直視しがたいです。が、決して忘れてはならず、

残しておくべきものだと思います。




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