未払給料の解決策としての差押 | 横浜 コーディアル司法書士 所博之

横浜 コーディアル司法書士 所博之

LECと伊藤塾を通じて司法書士講師業25年のキャリアを活かしたブログ

サッカーワールドカップロシア大会、日本代表の想定外の活躍によりサッカー人気も、ますます上昇しつつあるようです。娘と息子のどちらものチームメイトにも、今後の日本を代表する選手(世代別日本代表選手)がいますので、楽しみも膨らみます。

また、今年の本試験が終わり、未だに私に連絡をくれる受験生の方がいて、司法書士の受験指導講師だった側面も大切にしなければならないと思っていますし、以前のブログで私のルーツが岐阜県揖斐川町だと記載したところ、同じ出身地だという司法書士からも連絡があり、その嬉しさとも相まって、このブログを続けて良かったと実感しています。

 

 

さて、今回は「給料未払の解決策としての差押」についてです。

私のクラス出身司法書士から、友人が6ヶ月分程の給料が支払われずに困っていて、あと1ヶ月ほどで時効完成に至るので、せめて時効中断だけでもしたいので、相談に乗ってほしいという依頼が端緒です。

労基署への相談、弁護士の無料法律相談、いずれも試したものの時効中断はおろか、たいした解決策には至らず、このまま諦めてしまうしか方法がないものかというもので、依頼者本人もあきらめる寸前でした。

労基署の担当者によると相手会社は強者なので回収は難しいし、費用対効果で法律家へ支払う費用を考えたら意味がないので、諦めた方がよいというアドバイスをされたということでしたし、弁護士は、自力で簡易裁判所に出向き支払督促を申し立て、債務名義を得て差し押さえをすることを勧められたということで、簡裁に出向き支払督促申立書を自力で作成していました。

その司法書士が勤務する先の司法書士は、内容証明郵便によって催告をすることで6ヶ月の時効猶予の提案でした。

 

その司法書士からの私へのメールで大まかな内容を把握しましたが、私は迷わず、いきなり一般先取特権による差押申立を勧めました。

弁護士のアドバイスでは、債務名義取得にまで時間がかかり、督促異議により訴訟になる蓋然性も高く、債務名義になっても、あらためて差押申立が必要となります。他の司法書士のアドバイスでは、時効中断には至らず、結局は訴訟による債務名義取得が必要となってしまうからです。

給料債権は、一般先取特権として債務名義がなくても、裁判所で予納金や保証金を積むことなく、文書で給料債権であることを証明できれば、いきなり差押命令申立ができる債権です。私はその依頼者との面談相談で、給料未払いを証明できる文書の存在を確認できたので、自分で支払督促の申立書が作成できたのなら、差押命令申立書も作成できるので、裁判所に行って申立を自分ですることを勧めました。

 

私が差押命令申立の依頼を受けるのは簡単ですが、それなりに報酬がかかります。

何とか私への相談料と最低限の費用だけで、時効中断と未払給料が回収できるのであればそれに越したことはないと判断し、あえて私が依頼を受けず、本人に自力で申立を勧めました。

ですが、その依頼者が地裁へ出向いて差押命令申立をしようと相談したら、書記官から「先取特権での申立は殆ど無いので、やめた方がよい。」と言われてしまったようです。

書記官が、素人を追い返す単なる方便だったのか、本当に事例が少ないのかは不明ですが、私としては前者だと思いましたので、私のクラス出身司法書士に、その友人と一緒に裁判所に出向いて作成を手伝ってあげてほしいと依頼。その司法書士にはその差押の経験がなかったようなので、いろいろな資料提供とアドバイスをしましたが、私の思惑通り、無事に役目を果たしてくれました。

 

案の定、裁判所は依頼者の文書で未払の給料債権を認定し、差押命令を発令してくれましたので、少なくとも時効中断は達成です。

会社が持つ銀行口座や第三債務者への債権の差押を試みましたが、思うほど回収には至らなかったようで、今後の会社の財産を見極める状態となっています。

 

ですが、その司法書士は友人からの今回の依頼に伴う経験で、少なからず司法書士としての法律家としての醍醐味を味わってもらえたと受け止めています。

そして、辛い受験勉強を通して心に描いていた法律家への想い、司法書士を志した初心を思い出してもらえるよい機会になったはずです。

 

このブログのランクは下記です。