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ディズニー・ピクサー・アニメ「リメンバー・ミー」(Coco)(2)「アンコール」

2020-02-26 11:04:39 | スペイン語
 ディズニー・ピクサー・アニメ「リメンバー・ミー」(原題 Coco)の舞台はメキシコである。登場人物は当然メキシコ名で、日本語吹き替え版でも大体スペイン語読みされていたのだが、一人、主人公 Miguel (ミゲル)の高祖父(ひいひいじさん)の Héctor だけは英語読みで「ヘクター」と呼ばれていた。スペイン語では「エクトル」でなければならない。
 その理由を考えてみた。Miguel は英語 Michael のスペイン語形、祖母の名前 Elena は英語 Helen のスペイン語形なので、スペイン語形がそのまま使われているのに対し、 Héctor の英語形は Hector で、アクセント記号(tilde)の有無だけが違いである。アクセント記号を無視すれば英語としても通用する。それで Héctor だけは英語風の「ヘクター」になったのだろう。 
 さて、日本語吹き替え版では、 gracias(グラシアス)、señor(セニョール)、amigo(アミーゴ)などのスペイン語の単語が使われていたが、英語版でもスペイン語がそのまま使われていたのだろう。この程度のスペイン語であれば、アメリカでも日本でも訳す必要はないだろうが、「アンコール」を意味する otra が日本語吹き替え版でもそのまま使われていた。英語版が otra になっていたので、そのまま使ったのであろう。日本語版では日本語風に「オトラ」と発音されていたが。
 場面から「アンコール」の意味だろうと推測はつくが、これは「アンコール」と訳すべきだったのではなかろうか。
 「アンコール」は encore とつづられる。フランス語から英語に入っている。研究社『英和中辞典』には「フランス語 “again” の意から」と書かれている。フランス語では encore は「アンコール」の意味では使われず、“bis”(ビス)と言うんだとか。
 スペイン語では “otra” であるが、これは “otro” の女性形である。直訳すると、「別の」ということで、「アンコール」の意味になる。何で女性形かというと、“otra vez”(もう一度)の 女性名詞 “vez”が省略されたからである。
 ところで、スペイン語 “otro” はラテン語 alter (2つのうちの1つ、他の)が語源である。英語 other, alter も関連語である(小学館『西和中辞典』)。『西和中辞典』には明記されていないが、alternative, alternate などの英語も関連語であろう。イタリア語では altro で、これが一番ラテン語形に近い(と思う)。

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