スパニッシュ・オデッセイ

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corona, crown, krone, Krone, krona など

2020-05-10 20:22:59 | スペイン語
 このところ、話題はコロナ一色である。数十年後にこの記事を読む読者のために、一応「コロナ」とは新型コロナウィルスのことだと注釈を加えたほうが親切であろう。
 「コロナ」はラテン語 corona に由来するが、スペイン語でもそのまま corona である。英語の corona は研究社『新英和中辞典』には「1.《天》コロナ、光冠 2.《気象》(太陽・月の回りに見える)光環、暈(かさ)」という訳語が見られるのみである。
 一方、スペイン語の corona にはいろいろな意味がある。小学館『西和中辞典』から引用する

 1 冠、王冠、宝冠、花冠  2 王権、王位、王室、王制、国王の支配〔統治、主権〕:王国
 3 栄冠、栄光、栄誉:(聖像の頭上の)円光、光輪  4 (物の)頂上、最高部:頭のてっぺん:山頂:(宝石の)クラウン、冠部:《カト》剃冠(ていかん):円形にそった頭部  5花輪  6 歯冠:人工歯冠  7《天》コロナ、光環:(太陽・月の)かさ、光暈(こううん)
 8 《植》小花冠、副(花)冠  9 《馬》蹄冠(ていかん):《建》頂冠帯、コロナ(軒のコーニスの突出部):(城の)冠塞(かんさい):《機》台金、ワッシャー:(時計の)竜頭:《車》(デフの)かさ歯車  10 《数》環形  11 《カト》ロザリオ:七連ロザリオの祈り  12 (美徳・崇高さなどの)極み、極致  13 王冠の刻まれた貨幣:昔のスペイン Castilla の金〔銀〕貨:(英国のもとの)クラウン貨:(デンマーク・ノルウェーの)クローネ貨:(スウェーデンの)クローナ貨:(チェコスロバキアなどの)コルナ貨  14 《北米》大物、有力者

 このうち7番目の意味だけが英語と共通で、それ以外の意味(全部ではないが)は英語では crown の語が受け持っている。
 4番目の「《カト》剃冠(ていかん):円形にそった頭部」とはトンスラのことだろう。 
 
 「トンスラ」は英語では tonsure で、「剃髪する」という動詞にもなる。良寛さんと交流のあった貞心尼が剃髪したお寺があったところに説明板があり、英語では tonsured と書かれていたのが記憶に残っている。だいたい、tonsure という言葉がわかるのはかなりのインテリだけだろう
 13番目の「王冠の刻まれた貨幣」の「クローネ、クローナ」なども corona や crown の関連語である。イギリスの通貨単位はポンド(西 libra)だが、1551年から1946年までクラウン銀貨というものが使われていた。『新英和中辞典』によると、これは5シリング(現行通貨の25ペンス相当)だったそうである。
 ところで、スペイン語の corona は貨幣のみを意味し、クローネ、クローナなどの通貨単位は意味しないのだろうか。何にしても corona はあまり手にしたくない通貨ではある。

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1 コメント

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Unknown (長瀬慶來)
2020-05-11 08:13:01
興味深く読ませていただきました。
語源の話が最近流行してますね。
開拓社から本を出版されているのですか?

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