病魔に襲われ、遅れてしまった南信濃墓参行の報告。
拙著「負けても負けぬ三十二将星列伝」に登場する武者たちへの、報告を兼ねてあらためて墓参行の旅へ(マジメ~)。
高価なお線香を握りしめ、殊勝な心持ちで(マジメ~)。
●木曽義仲四天王の一人、樋口兼光の墓所、辰野町樋口へ。
兼光は、今井兼平・巴御前の兄、中原兼遠の子。
兼光・兼平・根井行親・楯親忠が義仲四天王。
しばらく来ないうちに墓所の杉の木がぐぐっと大きくなって、かなり目立つようになった。
これならば高速道路からも場所が分かる。
兼光は義仲上洛軍で常に先陣に立ち、倶利伽羅峠の合戦、篠原の合戦で奮闘した。
石川県津幡町に、倶利伽羅峠の合戦で搦め手軍として「兼平進軍の地」の碑が立っている。
しかし、無念にも京における鎌倉軍との合戦には参陣できず、捕縛され斬首された。
遺骸の行方などはわからず、残念ながら京都周辺に兼光ゆかりの地はない。
家臣が晒された首級を信濃へ持ち帰り、伊那谷を広く望める兼光の支配地だった樋口のこの地に埋葬したと伝えられる。
巨大な墓塔は兼光没後800年祭のときに建立されたという。
墓域が広い。
弟兼平とともに義仲一途の、清々しい生涯だった。
●辰野から伊那・高遠へ。
暴君ネロならぬ、「暴君武田信虎」なんて、とんでもない!
息子・信玄に勝るとも劣らない、名将・智将ではないか。
信玄より駿河へ追放された、とされるが…。
信虎は追放後ついに甲斐の土を踏むことなく、信州・伊那高遠で逝去した。
高遠城外の、桂泉院に眠っている。
後に遺骸は甲府・大泉寺に移葬された。
嬉しかったのは、拙著の原稿をしこしこ書いている最中、信虎さんの評価も上昇したような。
なんと、おととし2018年、JR甲府駅北口に信虎像が立った!
やった、信虎さん! 書いてよかった(ワシノセイデハナイガ)。
●高遠城では、信虎の孫・仁科五郎盛信が織田の大軍と壮絶に闘い、最期を遂げた。
その仁科五郎の麾下にて、姉川の合戦で「天下第一の槍」と織田信長から称賛された猛将・渡辺金太夫も乱戦の中で、討ち死。
金太夫は高遠城南の五郎山に、「三郎山石祠」として祀られている。
金太夫は、武田譜代の家臣ではなかったが、その忠節ぶりと高遠城攻防戦の抜きん出た活躍を称えられこの地に祀られた。
峰の頂に五郎盛信の石像・石祠が祀られている。
そこから峰を下って次の峰・四郎山に小山田備中(盛信重臣)が。
さらに林中の細い急な道を下る。
帰りはここを登るのか、ムム、こりゃ難儀や!
よく昔は歩けたもんだわな。
あぁ、ようやく三郎山の峰が見えた。
渡辺金太夫照を祀る石祠。
さいわい松や雑木で直射はさえぎられ木漏れ日、助かった。
「金太夫さん、本に載せたよ」と、瞑して報告。しばし休息。
しかし帰り道は急な登り、きつかった!
因みに、五郎盛信さんところまではクルマにて近くまで行ける。
高遠の街で、大好物の高遠饅頭を食す、久々だぁ~。
この前来たときはガマンして食べなかった(甘い物ご法度の身)。
●高遠から南下。
南朝忠臣・香坂高宗の大鹿村へ向かう。
途中、香坂高宗が生涯身を挺して一途に仕えた宗良親王の墓と伝えられる長谷村・常福寺の「御山」を参拝。
円墳のような塚の頂に、親王の無縫塔が祀られていた。
大鹿村は遠い! あらためてほんとに遠いを実感!
小渋川沿い、小渋ダム湖沿いの道を走る。
それでもかなり直線のトンネルが完成していて助かった。
道路にかぶさるように滝が落ちてくる、恐ぇ~!(といいつつ撮る)
着いた~、大鹿村だ。
別天地を感じさせる盆地が広がる。
宗良親王はここに30年近く居住した。
市街地からさらに数キロ小渋川沿いに登る。
集落を見わたせる小高い地に、高宗さんの墓所が。
墓所から集落を望む。
宗良親王は自らの和歌集「梨花集」に、香坂高宗の忠節に感恩し、次のようにしたためている。
「信濃国大河原(現大鹿村)といふ深山に籠もりて、年月をのみ侍りしに、さらにいつと待つべき期もなければ、香坂高宗などが朝夕の霜雪を払ふ忠節…」。
高宗は生涯、親王を支援し続けたが、合戦ではほとんど勝利の美酒を味わっていない。
だが終生、親王を支え続けた。
親王逝去後も、親王の子・尹良親王にも仕えている。
ここまで純粋で一途な心にどうしてなれたのだろうか。
高宗の墓所からさらに林中深く入る。
狭い道が入り組んでいて、案内板・カーナビ無しではとても信濃宮神社へは行かれない。
おお、やっと着いた!
昔、よくここまで来れたもんだと、いまさらながら自分に感心。
宗良親王を祀る信濃宮神社。
因みに、宗良親王は別名「香坂宮」ともいう。
……樋口兼光、武田信虎、渡辺金太夫、そして香坂高宗の墓所を巡った。
それなりに自己満足したが。
だが最近よく思う。
かつて日本史教師として、まるで見てきたように、歴史を、人物をペラペラ喋ってきたが、この四人も、一度も語ることなく教師を終えた。
まったく知らなかったとはいえ…。
何をしてたのか。
今の気持ちをこぶしを握って、熱弁をふるいたかったなぁ。
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樋口兼光、武田信虎、渡辺金太夫、香坂高宗
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