●史上最強のイケメン武将、その哀路 | きょうのもののふフォト列伝 ー古戦場 城 もののふ 旅ー

きょうのもののふフォト列伝 ー古戦場 城 もののふ 旅ー

熱く 燃えて 散って 逝った 我ら祖先のもののふ達 その懸命な生きざま姿を追う旅を続けています。

「そのおももち、けしき、あたり匂い満ち」

「みる人ただならず」

「今昔見る中に、ためしもなき容顔美麗、尤も歎美するに足る」

 

ウーン、その人の容姿、たたずまいの賛美は古書にひきもきらず、あまりの美しさから「桜梅少将」と称されたという。

 

だれ! 誰や?

だれあろう、平家の公達、平少将維盛卿

あの清盛の嫡子小松内大臣重盛の子、すなわち清盛の嫡孫

なんと源氏びいきのあの九条兼実でさえ、「(維盛)、年少と言えども作法優美、人々感嘆」、「衆人の中、容顔第一」と!

 

あのイケメン・土方歳三も、これでは真っ青ではないか。

 

その維盛の墓所が伊勢の山中にあるという。

山中といっても三重県芸濃町。

カーナビでホイホイ、と思ったがどんどん人里離れて、クネクネ山道を。

おいおいどこまで行くんだ?

昔から義仲、義経の源氏びいきだった私の平維盛のイメージは悪い。

 

富士川合戦で大敗潰走した平家の総大将。

祖父・清盛は激怒して入京を禁じたという。

さらに、あの俱利伽羅峠合戦でも、義仲軍に大敗した総大将。

小松少将とはいうものの、暗愚にして、ひ弱で弱虫…。

 

まさかこんなに美男子、容顔美麗とはまったく知らなかった。

大河ドラマ「平家物語」や「清盛」にも登場していたというが、記憶にない。

 

だがかつて富士宮市の田んぼの中にその墓所を見たころから、維盛のことをあれこれ思うようになった。

 

……維盛が開基したという岩間山成覚寺は「秘境」の地のごとくだった。

伊勢・亀山市からの道はクルマ少なく、成覚寺周辺も人影はほとんどなく。

道すがら見た、深い錦秋の見事さが何かもったいないような。

成覚寺は高台に立つこじんまりした古刹だった。

銀杏が鮮やかに色づき、緑濃い槙木の垣根に囲まれていた。

「たしか維盛さんは、一の谷敗戦で戦陣を離脱、屋島へ行かず高野山へ向かい出家したとか…」

「ええ、那智の沖で入水自殺ともいわれてます…」

と、住職は語り始めた。

 

……当山に伝わる話では、維盛は高野山・熊野とさまよい、家臣31人はてんでんに逃れ、この地で落ち合った。

維盛は所持していた平家念持仏をここに安置、草庵を開基したという。

よってか、この一帯は落合姓がほとんどという。

 

「もしかして、ご住職は、小松さん?」

「はい」

信州・長谷村の平家落人の里の人々は、ほとんどが小松姓だった。

そして茨城県城里町に訪ねた維盛の父・重盛墓所の寺は小松寺だった。

 

小松寺は江戸時代に水戸家の保護もあった巨大寺院。

境内の一番奥のそのまた奥の高所に立つ重盛公墓所までの、苔むす石段また石段には泣けた(思い出しても泣ける)。

 

やっと着いた! その奥に。

 

さて、成覚寺に話を戻して。

「これが伝来の維盛卿木像、そして念持仏です」

むむむ、これか、これは容顔にしてイケメン…。

 

念持仏の金箔は輝いていた。

本堂内の透かし彫り欄間彫刻もまた見事。

境内の本堂裏手に、維盛卿の墓がひっそりとあった。

 

「平家物語」では27歳没だが、この地にて53歳で亡くなったという。

 

維盛さんの墓所は、高野山十津川村にもあるという。

いずれ墓参に行かねば。

 

一の谷で散った敦盛。

壇ノ浦で錨とともに入水した知盛。

義経に斬られた宗盛、そして忠度、重衡…。

平家武将の末路は哀愁を帯びる。

 

昔は平氏の武将のことなど考えもしなかったが。

歴史をたどっていけば、奥が深いというか、なんというか。

再び深い秋に覆われていた道を下った。

にほんブログ村 日本史 ブログランキングへ

●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

拙著PRです! 

「負けても負けぬ三十二将星列伝」

(しなのき書房)  アマゾンにて発売中!   ぜひご一読のほどを!

A5版、256㌻、口絵カラー写真8㌻、写真全150枚、価格1200円(税別)

 居並ぶ三十二将星は以下の如くにて候…         

 中原兼遠  樋口兼光  佐藤継信・忠信兄弟  

 曽我祐成・時致兄弟  源義経  平景清  仁科盛遠  香坂高宗

 諏訪頼重  板垣信方  鬼小島弥太郎  武田信虎  秋山信友  

 山県昌景  渡辺金太夫照  武田勝頼  織田信忠 二木重高  

 小笠原貞慶  芋川親正  薄田兼相(岩見重太郎)  戸田康長  

 山村良勝  石川康長  小笠原忠真 鈴木伊織  恩田民親  

 藤田小四郎  高杉晋作  山岡鉄舟

●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●