痛い | 防浪堤は壊れても ~たろうの海から~

防浪堤は壊れても ~たろうの海から~

「防浪提に抱かれて磯の香りも生き生きと」
田老一小校歌の歌い出しです
津波が来ても二重の防浪提が守ってくれると思っていました
津波はその防浪提までも破壊して、ふるさとを壊滅さた
それでも、やっぱり海は麗しいし、川は清い

 当組合はお隣の漁協と漁業権を共有しているところがあるので、口開けは同時に行います

 立地条件も違うので、いつも意見が合うという訳には行きません

 こっちは開けたい、でも向こうはダメだ

 とか

 そこで、職員が間に入って調整するんですけど

 組合員にとって重要な口開けですから、プレッシャーも凄くて・・・・

 

 お互いに信頼関係なくしてはできません

 私が口開けを担当してから、はや20年以上

 その間、相手の組合もほぼずっと同じ口開け担当者ですので、もう身内みたいに思ってます

 ずっと苦労を共にした仲間です

 

 

 先日のアワビ口開けの時、いつものように電話すると・・・・・

 出ない

 ??

 その後も電話が来ない

 

 20年以上の間、そんなことは一度も無かったんですけど

 (どしたんだろ??)

 

 組合に電話すると、その方の上司が

 「不幸があって休んでんだ。電話にも出られないと思う。今回はオレが変わるから」

 (親戚かなんかだろうな)

 そう勝手に解釈して

 

 

 

 今日、出勤してきたら後輩職員が

 「なんか、奧さんが亡くなったみたいですよ」

 「ウソ!お袋さんじゃなくて?奧さんてまだ若いベ」

 「はい。でも、そうらしいです」

 

 残念ながら本当だったみたいで

 

 

 口開けを担当して何が大変って、休みがないんです

 祝祭日は休みなんだけど、いつ口開けするっていうか解らないんで、どこにも行けない

 休みであって休みじゃない

 よほどの大シケとか台風とかなら口開けはないですけど、そんな荒れてれば被害の対応で組合にいなければなりませんから、結局一年中どこにも行けない

 まあ、自分だけならいいんですけど、嫁さんとか子供とかがね

 回りの家族がどこかに出かけてても、ウチは行けないし

 行けるとしても午後からだし

 子供の試合の遠征とかも行けないので、他の家の車に乗っけてもらっていつも肩身の狭い思いをさせたり

 

 担当したことがない職員は

 別にずっと働くわけじゃないし

 口開けするったら事務所に行けばいいだけ

 なんて思ってるフシがある

 でも、実際に仕事をする時間は1~2時間でも、仕事をしないときでも四六時中拘束されているようなもんです

 

 口開けするかしないか、朝からずっと協議を重ねて、お昼前に口開けしないことになったりすると、半日棒に振る

 オレの半日を返してくれって(笑)

 私らがそういう時間を過ごしてることを他の職員は知らないわけですからね

 同じように休んでるって思ってるかもしれない

 

 20年以上そういう休日を過ごしてきたわけですから

 奧さんにはそうとう苦労かけたに違いないんです

 

 実際にやってみなくちゃ解らない苦労ってあるもので

 20年以上も同じ人間がやってれば、他の職員は我々の苦労を知るよしもないでしょうしね

 

 私の場合

 「休みたかったら休めばいいベ」

 「なに、実際は休んでんがっか」

 なんて言葉に

 血の出るぐらい握り拳を握りしめて耐えたことも

 (まあ、向こうの組合にはそんなこと言う人はいないでしょうけど)

 

 

 奧さん本人はどう思ってるか解りませんが、不自由な思いをさせてるなって懺悔みたいなものは私にもあるので

 いつか嫁孝行?しなくちゃと

 

 多分私と同じように思ってたと思うんです

 それが突然亡くなられたら、もうどうしようもない

 過去は変えられませんから

 

 何にもできないし

 悔やんでも悔やみきれない

 

 痛かったろうなあ

 どんなにか悔しかっただろうかと