関東では7月のお盆が通例となっていますので、梅雨のこの時期お店には

御布施の多当や仏事関連の金封類を購入される方々が多く来店されます。
その中でもかなりの時間迷っているお客様がいます、そのような方のほとん
どは新亡さんを送られた未亡人一年生の人たちです。

御迷いのご様子や、声がけがあればご案内するようにしております。
数日前にやはり長時間迷っている女性がおりましたのでこちらからお声かけして
ご案内いたしました。

 

「なにかお探しでしょうか?よろしければご案内いたします」

やはり今年の初盆迎えの方でした、70凸凹のちょっと訳アリ?の女性でした。

 

「私ね、主人の初盆を迎えるの、でね簡単な棚(精霊棚)を置こうと思うんだけ
どやり方がわからないのよ、仏壇屋で聞いたら精霊棚を買えと色々見せられた
んだけど、そんな仰々しくしたくないのよ!、出来ればやりたくもないの、初盆!
だからちゃぶ台程度でいいのって言ったら、じゃあ、机に白い紙でも敷いてご
位牌を置いて線香立てのみでいいんじゃないですか?仏壇屋にはありませんので
っていわれたの、それでね、紙は紙屋に聞けって言われてお宅紹介されたの。」

 

「あちゃ~」

 

お亡くなりになられたのが今年の2月ということ、すでに100か日も済まされてい
るまさしく初盆です。

 

「簡単に済ませたいというご希望ですので仏壇屋さんの言った通りでいいんじゃな
いですか?紙のご案内ならば如何ようにもできます。」

 

そう申し上げたところ

 

                       鎌倉長谷寺 あじさいの小路 H18.06.24

 

「やらなくちゃいけないの初盆って?、あんな人の供養なんてもうしたくないのよ~」

 

ありゃりゃ、話が違う方向にいっちゃいました。


それからが大変でした、孤独な未亡人、誰かに恨みつらみを吐き出したかったんだと
思います。


ご主人様の生前の悪行、毎日のように繰り返された罵詈雑言、暴言の数々、

伴侶からの凄まじいモラルハラスメントにこの人は壊されていました。


他にお客様はいませんでしたので、だまって聞いておりました、少し合いの手を入れ
ながら、いわゆるガス抜ですね。

 

20分くらいたったところでとうとう ”涙”。


病床で介護のときにも、本人を前にして見舞いに来る人々にコイツ(妻)はどれだけ
ダメな人間か酷い女かをトクトクと話されたそうで、初対面の人にも洩れなくダメ妻の
発表会だったそうです。

 

「あなたにこんなこと言っても仕方ないのにね、でも死んでも許せないのよ~。」

 

見たわけじゃありません、私にはこの奥様の話、真偽など判りようもないですが

 

苦労されたんですね、お疲れさまです、でも終わったんじゃないですか?」

 

涙涙涙「えっ?終わった?終わって無いわよ!終わった?だって...」

 

そう終わったんです、他人である私が生意気な事言って申し訳けありませんが、
これ以上過去を恨んで無駄な時間を使わず、奥様の残りの未来を楽しく生きて見ては如何
ですか?どんな辛かった過去も、素晴らしかった時間さえも誰も戻ることはできません、
過去は変えられませんがすでに消えていったんです、旦那様も消えていった、そのうち奥様
さえも消えていく、だから消えていく前には恨みつらみで悶々と苦しまないで、今日からは
楽しいことして生き直されたらいかがでしょうかね、そうじゃないと詰まらんでしょう。」

 

 

俯きかげんに私のコメントを聞いていましたが、1分ほど黙り込み、反応が無くなってしまいました。

 

どうしよう?焦りました、へんなアドバイスしなきゃよかった。しかたないので恐る恐る

 

大丈夫ですか?」

 

と問いかけました。

 

そのあと3度ほど大きく相槌をうち、頷き、そしてやっと上げた顔は涙ながら微笑んでいるように見えました。

 

良かったのか?悪かったのか? 余計なお世話ですね、甚だ生意気な最低オヤジですわ。
その後最低限の新盆供養用の紙類をお買い上げいただき、お帰りになられたときに50分の
時間が過ぎていました、仕事的には割りには合いませんね。

 

こんな愚説法、坊主の仕事だよな~。カウンセラーか?


無知の人に寺で精霊棚を奨めたんだったら、最後まで坊主が責任(説法)とれよな~。

愚痴ですかね~。修行が足りん。

皆様それぞれよきお盆を迎えられますことをお祈りします。


般若心経でいえばこの部分ですかね、今回のことは

 

心 無罣礙無罣礙 故無有恐怖遠離一切顚倒 夢想究竟涅槃 三世諸佛