A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

「ガブリとゾロリ」マキガミサンタチCD発売記念ライブ@南青山ZIMAGINE 2020.10.16 fri

2020年10月22日 00時42分33秒 | 素晴らしき変態音楽


2020年10月16日(金)
「ガブリとゾロリ」マキガミサンタチCD発売記念ライブ
東京・南青山 live space ZIMAGINE

マキガミサンタチ:
巻上公一 (Vo,Theremin)
三田超人 (Gt,Sampler)
坂出雅海 (Bass,iPad)



15年ぶりの2ndアルバム『ガブリとゾロリ』をリリースしたばかりのヒカシューの別ユニット「マキガミサンタチ」=巻上公一・三田超人・坂出雅海のリリースライヴ。会場は青山骨董通りにあるオシャレなライヴバー。コロナ禍の影響で過疎気味の客席は余裕でソーシャル・ディスタンスを守れたが、音声のみの配信で感染の心配なしに楽しんだ人も多いに違いない。ヒカシューや様々なソロ/セッション活動でお馴染みの巻上の多芸ぶりはもちろん、坂出はヒカシューのドラマー佐藤正治とのユニット「黒やぎ白やぎ」、三田はやはりヒカシューの清水一登(key)にdoubt music社長・沼田順(g)とのトリオ「インプロばか。」と、それぞれ別ユニットで活動する芸達者揃いである。三田のトリオの名前通り、3人とも馬鹿がつくほどインプロが得意、というより好きなのだろう。CDで聴くと様々な楽器が入れ代わり立ち代わり登場する短い曲想の連続なので、一体ステージ上で何が起きているのか興味深々だった。ステージに並んだ楽器や機材を見るだけで楽しい気分に浮かれてしまう。特に存在感を誇るのは金色にそそり立つバリトンサックス。え、誰が吹くの?と思ったが、演奏者は3人しかいないし、やはりあの方が?







CDを聴いて想像していた通り、3人が順番にテーマとなるフレーズやリズムを提示してインプロヴィゼーションで演奏が展開していく。特に何分と決めてはいないとのことだが、短いと1~2分、長くて5~6分で次のテーマに移行する目まぐるしい展開が続く。一触即発の「ザ・即興」だったら息苦しい緊迫感で疲労困憊してしまうだろうが、そこは40年近く一緒に活動する三人のこと、リラックスした笑いがあふれるインプロは、決して息切れしたり、モチベーションが枯渇したりすることはない。

 

 



巻上が初めて人前で吹いたバリトンサックスは、ヒカシューの2代目のサックス奏者の故・野本和浩の遺品である。梅津和時の元にあったのを、巻上が引き取ったが新宿ピットインに預けておいた間に転倒して破損したので修理に出していたのが最近戻ってきたという。キーの押さえ方もたどたどしいほどの巻上が発するゾウアザラシの鳴き声のようなブローが、三田と坂出の演奏と交わると棚引く哀愁の調べに聴こえるところがMGST(マキガミサンタチ)マジックと言えるだろう。

 

『ガブリとゾロリ』は自粛期間中に巻上が過去のアーカイヴから選曲したライヴ録音を聴いてみたら意外によかった、とのことでリリースに至ったという。即興演奏だから当然楽曲タイトルは存在しない。そこで前半の横浜エアジンの演奏には俳人の西東三鬼の俳句からタイトルを拝借し、後半の代官山ユニットの演奏には巻上が三鬼風にタイトルを付けたとのこと。基本的には言葉遊びでありながら、文学性と芸術性を兼ね備えたイマジネーションは、アートワークを含めたヴィジュアルアートの世界にもつながっている。視覚的要素をCDジャケットからステージ上の3人のパフォーマンスに置き換えて、聴覚・視覚・想像力がフル稼働するミクロコスモスを作り出した。



インプロと言ってもジャズでもロックでもクラシックでもエスニックでもないが、同時にそのすべてでもある。簡単ではなく訳が分からない音楽を聴かせるフェスティヴァル『JAZZ ARTせんがわ』の精神をより個人的なレベルで実践している。一つの言葉・概念・感覚では捉えきれないはみ出し者が、MGSTの属性なのである。そのほうが絶対面白い。人を楽しませることだけじゃなく、自分が楽しいことを求め続ける彼らならではの謎の創造に笑みが零れる夜だった。

【地下ジャズDisc Review】『マキガミサンタチ / ガブリとゾロリ』~多面体ロックバンド、ヒカシューから生まれた迷宮トリオの全脳音楽。

年をとれ
死に急いでは
意味がない

巻上公一さん(ヒカシュー)と対談! by 徳久ウィリアム

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【追悼】近藤等則さんの想い... | トップ | 【灰野敬二最新情報】『Phew ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

素晴らしき変態音楽」カテゴリの最新記事