A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

【華麗なるラブ・サウンドへの招待】第1回:『ポール・モーリア・ビートルズの世界』〜Paul Mauriat meets Paul McCartney

2020年01月24日 01時48分57秒 | こんな音楽も聴くんです


『ポール・モーリア / ビートルズの世界』
ポール・モーリア・グランド・オーケストラ
Le Grand Orchestre De Paul Mauriat Joue Les Beatles
Philips ‎– PM-10 / 1973

A1 Michele
A2 Girl
A3 Yesterday
A4 Hey Jude
A5 Get Back
A6 My Sweet Lord
B1 Let It Be
B2 Penny Laine
B3 Ticket To Ride
B4 Lady Madonna
B5 Goodbye
B6 Eleanor Rigby

最近海外で日本の音楽の一部のジャンルに突然注目が集まる現象が起こっている。環境音楽(ニューエイジ/アンビエント/ヒーリング)やシティポップなどがそうだ。それに影響されて日本のレコードヲタクが曾ては百均コーナーでも見向きもされなかった駄盤や、逆に誰にも知られず地下に葬り去られた堕盤を求めて大枚が飛び交う主客転倒が見られる。人の振り見て我が振り直せ、じゃないが誰も知らない珍盤を求めて日々エサ箱やネットショップを掘り続ける盤魔殿DJも大いに反省する必要があるかもしれない。指先を黴と埃で真っ黒にしながら100円レコードコーナーを掘る理由は、奇盤珍盤との予期せぬ出会いを求める気持ちもあるが、寧ろ自分が聴かず嫌いして避けて来たメジャーレコードへの贖罪の旅に近い。彼らを100円の墓場から救い出し、黴と埃を拭って新鮮な聴力でじっくり鑑賞することで、地上を彷徨うレコードの生霊を極楽浄土へ成仏させようとするレコ助けか塩ビエクソシストを気取っているに違いない。

さて、昭和40年代の小学生にとって一番有名な海外ミュージシャンは、ビートルズやベートーベンではなくポール・モーリアだったと断言したい。給食の時間の放送委員の校内放送で「エーゲ海の真珠」「オリーブの首飾り」「恋はみずいろ」がヘヴィローテーションされたいたし、商店街で流れるNHK第1放送は1時間に数回ポール・モーリアをかけていた。 漫画雑誌の「オバケのQ太郎」か「おそ松くん」か「天才バカボン」に登場したゴージャス気取りのキザ男が、通販で買った合皮のライオンの皮を敷いたソファでネスカフェゴールドを飲みながらポール・モーリアのレコードを聴いて悦に入るエピソードが強烈に記憶に残っている。それほど日常風景に溶け込んだ彼の音楽こそ本当の意味での環境音楽と言えるだろう。逆にいえば当たり前過ぎて語ることが憚られる(語れるほど詳しい人がいない)禁断の存在かもしれない。

Paul Mauriat - Love Is Blue~El Bimbo 恋はみずいろ~オリーブの首飾り


イージーリスニング、ムード音楽、さらにはラブサウンドと言う意味不明なジャンルに於いて「王様」の称号で呼ばれたポール・モーリアだが、実際に聴いてみるとレーモン・ルフェーブル、フランク・プゥルセル、カラベリときらめくストリングス等他のイージーリスニング・アーティストとはひと味違う個性的なサウンドを持つことがわかる。まずはモーリア自身が弾くチェンバロのエレガントな音色、艶のあるストリングスと生々しいドラムやギターの対比、スキャットとシンセサイザーを同レベルで並べる斬新なアレンジ、ステレオ効果やオーディオ映えを吟味したレコーディングの妙。「Easy Listening=平易な聴きとり」の真逆の「凝りまくった聴取体験」を与えてくれる。。にもかかわらず気楽(Easy)に聴けるのは彼の天賦の才に違いない。つまり安全なドラッグである。それでもキメすぎると命に関わる大事に至るかもしれない。それはつまり、無数に発売された曲順違いのベスト盤を無限に買い続けるしかないポール・モーリア・コレクターと言う名のレコード廃人へと至る道である。

Paul Mauriat — Toccata


昨年100円コーナーで入手した13枚組ボックスセットをその日の気分で流してはキザ男よろしく悦に入っていたが、実のところ一番好きなのはポール(といえばモーリア先生以外に有り得ない)のご尊顔であることに気がついた。トレードマークの口髭と深い灰色の瞳、無造作に整えたヘアスタイルにさり気なくオシャレなパリファッションで優しい微笑みを浮かべるポール様!嗚呼(溜め息)。。。。数多いベスト盤にはポールのアー写ジャケットは以外に少ない。あっても指揮中の似たような写真のクソコラが多い。その中にあってポールの豊かな表情を様々な角度から捕えたポートレートを表4枚、裏4枚もあしらったこのアルバム・ジャケットの贅沢さは彼のリリース作品中、1,2を争う萌えジャケである。しかも天下のビートルズ・ナンバーのコンピレーション。世界一有名なロックバンドを世界一のラブ・サウンドの王様が奏でる。カラヤンのベートーベンを遥かに凌駕するこのアルバムこそ、後世に語り継がれるべきポールの遺産だと考えてみれば、今頃天国のポール(モーリア)がもうひとりのポール(マッカートニー)に「早くおいで」と手招きをしている姿が容易く幻視できるだろう。

Paul Mauriat - Beatles Album (France / Holland 1972) [Full Album]


実はこのジャケットは日本盤のみ、曲順も日本人好みに並べ替えてある。日本人のポール愛と共にポールが大の日本贔屓だった証拠である。 (左上からフランス/イギリス/ベネズエラ/ニュージーランド/日本各国盤)



モーリアも
マーッカートニーも
イニシャルはP.M.

筆者が敬愛する地下音楽家も「ポール・モーリアにはときどきドキッとさせられる」と語っていた。

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