「会心の一撃」――×と〇と罪と―― | ユークリッド空間の音

「会心の一撃」――×と〇と罪と――

「あと何万回の後悔で 僕は僕の期待を超えられるだろう

 この心に足が生えてたら 今日の行き先は違っていたかな」

 

「会心の一撃」(RADWIMPS)

 

 

ゲーム「ドラゴンクエスト」シリーズに

 

『会心の一撃』

 

というものがあります。

 

ゲームでは主人公となるキャラクターを操り

敵との戦闘を繰り返してストーリーを進めていきます。

その際、敵に与えるダメージは

自身の攻撃力と相手の防御力による計算で決まります。

 

『会心の一撃』というのは

自身が攻撃を行う際にまれに発生し、

「相手の防御力に関わらず

 通常の攻撃力での攻撃以上のダメージを

 確実に与える」

というものです。

 

「ドラゴンクエストのあるきかた」シリーズからの記憶によれば(確かでない)

会心の一撃が出る確率は

高々数パーセントだったと思う。

 

ただ、意図してこの発生率を上げられる職業・キャラは存在します。

職業は武闘家など。

キャラはアリーナ(DQⅣ)など。

これらのキャラはレベルが上がると

会心の一撃の発生率がとある法則に従って上昇します。

 

自身の強みがわかっていることは

幸いであるともいえます。

 

 

「圧倒的で 感動的な 理想的超えて完璧な

 運命的で冒険的な 時に叙情的な未来 VS

 

 平均的で盲目的 半永久的に安泰な

 無痛 無臭 無害 無安打無失点の 未来 未来 未来」

 

 

 

ただ、この会心の一撃は

(例外を除く)ほぼすべての味方キャラの通常攻撃で

発生し得ます。

 

肉弾戦が苦手な魔法使いも例外ではありません。

もとの攻撃力が弱いゆえに

会心の一撃が発生しても

他キャラの通常攻撃に劣ることは多いですが

会心は会心です。

 

 

最後の最後となるラスボスとの決戦で、

魔法使いが担う役回りというのは

およそ魔法による攻撃、補助となります。

魔法が得意なのだからそれは当然の流れ。

自身の強みがわかっていることは

幸いであるとも言えます。

 

ただ、魔法を使うには魔力(MP)が要る。

MPを使い果たしてしまえば

力の弱い魔法使いのできることは限られてしまいます。

道具を使うか、防御するか、

あるいは貧弱な攻撃力で直接立ち向かうか。

 

こちらが壊滅状態で

精魂尽き果てているのならば、

白兵戦で仕掛けるしかないときもあるかもしれない。

残る味方が魔法使いただひとりになって

それが唯一の選択肢になってしまうこともあるかもしれない。

 

そんなときに

「会心の一撃が出てラスボスを打倒する」

ということは

確率上ありうることです。

 

 

 

「圧倒的で感動的な 無敵的超えて完璧な

 創造的で本能的な 前人未踏的な世界 VS

 

 退廃的で暴力的 悲劇的超えて残酷な

 差別的ゆえに反逆的な世界 世界」

 

 

でも考えてみるとこの「会心の一撃」は

全員が全員で全力を尽くしたことの産物であるとも言えます。

 

十全な状態のラスボスに

魔法使いの会心の一撃が決まっても

恐らく負わせられるのは掠り傷程度。

 

ラスボスが倒れたのは、

それまで味方キャラたちが体力・魔力を削り尽くし、

幾度も幾度も攻撃を重ね、

こちらが全滅する寸前まで諦めなかったからです。

 

「会心の一撃」とは

可能性を信じて諦めなかったものへの

偶発的な突破特権とも言えます。

 

 

 

先天的に突破特権を与えられたかに見えるアリーナにしても

彼女が初登場となるDQⅣの

第2章「おてんば姫の冒険」で触れられている通り、

「世界中の強者たちと戦ってみたい!」

という姫らしからぬ(?)夢を抱いて

毎日武芸に励んでいたからこそ

その結果として敵の弱点を瞬時に見抜ける力がついたとすれば

納得です。

 

加えて会心の一撃は

百発百中ではない。

後発の作品では

MPを使用して意図的に百中の「会心~」を出す特技も

出てきたりしていますが

それはMPという制限があるし

少なくともアリーナの会心の一撃は

百発百中ではない。

 

確実性が高いことを無心になって繰り返している、とも言えます。

だからこそパーティーの主軸になれる。

 

自身の強みがわかっていることは

幸いであるとも言えます。

そのことに打ち込めること、

飽きるほどに挑戦し続けることができることは

幸いであるとも言えます。

 

戦いでも研究でも商売でも芸術でも

いつからでもどこからでも

全力で目標を追い続けた者に

気まぐれな女神は舞い降りる。

 

楽曲は「×と〇と罪と」で随一の疾走感に溢れています。

急速な16ビート(たぶん)が鼓舞を誘います。

サビに突入する直前の音は

突き抜けた蒼穹に特大の弾丸を放っているイメージで

凄く好きです。

 

 

 

「圧倒的で感動的な 理想的超えて完璧な

 運命的で冒険的な 時に叙情的な未来 ×2×2

 

 創造的で本能的 芸術的超えて幸福な

 延長22回 二死 満塁 3点ビハインド 不敵な笑み

 4番 目隠しスイング 初球 逆転満塁弾な未来 未来」