3つの幸せ | 【詩集】もう逢う事のない君に

【詩集】もう逢う事のない君に

NAOのNAOによるNAOの自己満足の為の詩集

女には
3つの幸せがあるのよ
だから細くて長いタバコを吸うのよ

隣に住んでいた綺麗なお姉さんが
私に言った言葉を
ふと 思い出した

呼び出されたカフェで
友人のマシンガントークを
ただ 聞いている
彼女が泣き出すと
とんでもない事を言い出しそうなので
彼女の気の済むまで
うんうんと相槌を打ちながら
細くて長い煙草に火を付ける
分かってるのよ
女って言うのは
ただ聞いて欲しいだけで
答えはもう決まってる

「夫は私を
子供の母親としか見てくれないの」
だから他の男に走った訳ね
やってくれるね
優しい旦那様と可愛い子供との
平穏な生活を壊してまで
これ以上何を望むと言うのだろう
子供に恵まれなくても
夫と静かに日々を過ごしている私には
彼女の葛藤は到底理解できない
「女として愛されたい」と
ついに彼女は泣き出した

女には
女として愛される幸せ
妻としての幸せ
母親としての幸せがある
私は母親としての幸せを知らない
それは他人から見れば
「不幸」なのかも知れないけど
夫に愛されて
妻として愛に答える生活が
私はとても気に入っている
だからこれ以上何も望まないし
不幸だとも思わない
幸せと言う曖昧な物は
どこに幸せを感じるのかも
幸せの尺度も
人それぞれだから
女として愛されたい彼女の幸せは
きっとそこにあるのね

女は細くて長い煙草を吸いなさい
指先が綺麗に見える様に
男に見られてなくても
女である事に誇りを持つのよ
そして女には3つの幸せがあって
1つでも手に入ったら
欲張っちゃダメよ
幸せはなるものじゃなくて
「幸せだ」と
思える心を手に入れる事
ないものねだりは心を惑わすだけなのよ
あの時はまだ良く分からなかったけど
今なら分かる気がする
「幸せになりたいの」と
彼女は言う
周囲の冷たい視線から
逃げる術もなく
挙げ句「あなたは良いわね
家庭に入って女捨ててるんだもの」
とまで言われる始末
捨てたつもりは毛頭ないけど
そうかもね と
細くて長い煙草にまた火を付ける
手に入らない欲求は不満になり
不満が募ると不幸だと感じる
そうね
私は彼女より幸せだと思うわ
机に伏して泣く彼女を前に
途方に暮れてはいるけどね