「りんぷうの会」 公式ブログ

会長:神田佳明(能楽写真家)
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扇さまざま… 森田研作さんの能楽写真ご紹介

2018年11月26日 | 会員写真ギャラリー

大変、遅くなって申し訳ありません
以前から予告しておりました森田研作さん撮影の能楽写真をアップ致しました

今回は、「扇」をモチーフにご紹介させていただきます

能楽にとって扇はなくてはならない重要アイテムですが
単なる小道具ではなく、恐らく武士にとっての刀のようなもの

シテ(=主役を演ずる能楽師のこと)は役柄に合わせて
あるいは季節に合わせて、その舞台にふさわしい扇を使用されます

柄や模様、色も様々で
おシテの方は、いったいどれだけの扇を所有されているのだろうと思います

冒頭写真は能『山姥』より シテ:出雲 康雅師(喜多流)

能の山姥は日本昔話に出てくるような素朴なイメージとはかなり異なる存在で
善悪の範疇を超えた大自然の怪異・象徴としてスケール豊かに描かれています

それにふさわしく大胆な配色と絵柄の扇で
かなりのインパクトがあり、デザインとしても秀逸で
目が釘付けになってしまいます





こちらは以前もご紹介させていただきました能『花月』の舞台写真
シテは同じく出雲先生です

花月は親に生き別れた哀れな境遇の少年ですが
遊芸上手な美少年

手にした扇も華やかで
花尽くしの装束と相まって美しい花月の舞姿が際立っていますね

扇を手にして舞うのは天上の神に対して扇が目印となり
「自分はここにいる ここで舞っている」と能楽師がアピールする
意味合いもあると聞いたことがあります

観客を楽しませる娯楽としての舞台ということだけではなく
神に捧げられた祈りとしての舞台

美しく雅やかな扇が能楽の舞台に欠かせない所以でもあるのでしょう





扇は「逢ふ儀」、男女が逢う、もしくは再び出逢うための道具立てでもあるそうです

能に登場するヒロインたちは扇に我が心を映して
一心不乱に舞い、時に心を狂わせるほどの悲嘆を見せることがあります

能『玉葛』は源氏物語の玉葛の亡霊が主役です
浮き世の荒波に翻弄され、死してなお心が晴れぬまま妄執の虜となり
成仏できずに苦しみ、巡り合った旅の僧に弔いと救いを求めます

黒髪は女性の情念の象徴
乱れた黒髪と扇から恋の妄執に捕らわれた美女の悲嘆を強く感じさせます



本日は少し趣向を変えて「扇」を切り口に
森田さんの能楽写真を3点、ご紹介いたしました


実際に能楽の舞台鑑賞をされる時には
どのような扇をシテが使用されるのかにも注目して
ご覧いただけると、より舞台が楽しめるのではないかと思われます



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