細田暁の日々の思い

土木工学の研究者・大学教員のブログです。

博士論文

2020-09-14 12:41:05 | 研究のこと

9月3日に、指導学生の博士論文の最終審査が行われました。審査会は無事に終了し、正式には9月16日の教授会で投票の上で決定となります。

最終審査を無事に終えたこの学生で、私が主査を務める方は10人目となりました。

最初の博士であるソンさんは、私が35才のときに指導が始まり、何と、指導を受ける側も35才でした。ソンさんは、インフラ管理学コースの修士の学生として来日し、そのときの指導教員が私でした。日本での生活を重ねるにつれ、博士号にチャレンジしたいという気持ちが強くなり、いろいろと経緯はありましたが、私の元で博士号にチャレンジすることになりました。同じ年齢の指導教員ということで、いろいろあったかとは思いますが、いつの間にか、師弟の関係も自然に構築され、無事に博士号の第1号となりました。

学生と一緒に研究に取り組むことで、私も様々なことを学ばせてもらってきましたが、やはり博士課程の研究指導が一番プレッシャーがかかります。卒論や修論では多少の冒険もできますが、私のようなレベルの研究者であれば、博士号の研究テーマの設定、目標を達成するための手段の選定もそんなに幅があるわけではなく、そのときそのときで精一杯という状況でした。

追い込まれるからこそ、私自身も鍛えられてきたのだと思います。博士課程の3年は長い期間であり、どの学生のときもひたすら議論を重ねる期間があり、あっという間のようでもありますが、3年という時間は一つの工学的テーマに取り組んでいくためには十分な時間のようです。

3番目の博士であった小松さんのテーマとして、初めて数値解析を用いたテーマを設定し、材料-部材-構造を一気通貫でつなぐ題材に取り組みました。私自身の中でも開拓するテーマだったので、小松さん自身も相当に苦労したと思いますが、このテーマで鍛えてもらったので、その後の復興道路での実構造物をターゲットとしたひび割れ抑制や耐久性確保のテーマが展開されていくことにつながりました。

私のようなレベルの研究者でも、35才で国費留学生の博士課程の学生の主査を務めることができ、この年齢で10名の方の主査を務めさせていただきました。優秀な学生に恵まれ、また自由に研究させていただいた横浜国立大学土木の環境に心から感謝しています。

現在も、10名に続く方々が研究に励んでいます。新たなテーマも設定しています。時代も激動していく中で、博士課程の学生の指導、における私のやり方も変わっていくと思いますし、もしかするとこれまでのように多くの留学生を指導できる、ということもいつまでも続く環境ではなく、いずれ無くなってしまうのかもしれません。

そのときどきで自分のでき得るベストを尽くすことしかできません。苦労しながらも、続けていくこと、少しでも発展していくこと、により、これまで築いてきたことの意味、意義も大きくなっていくことを信じて、日々の地道な努力を学生たちと重ねたいと思います。


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