細田暁の日々の思い

土木工学の研究者・大学教員のブログです。

「土木史と文明」の2019年度の授業終了

2020-01-28 20:06:00 | 教育のこと

本日、「土木史と文明」の15回目の講義が終わりました。最終回は、受講生に約束していたように、受講生たちがこれから持続的に成長、向上していけるように、私の提供できる情報、考え方等を伝えました。

講義の冒頭にも断りましたが、私自身は、宇沢弘文先生の言われた「豊かな社会」が理想であり、一部の人が儲けたりするような世の中ではなく、庶民が幸せに暮らせる社会が理想です。誰もかれもが、切った貼ったの競争社会で切磋琢磨する必要もありません。今回の学生たちへのメッセージの内容は、孔子の「論語」的な、真面目に向上していく考え方が主ですが、それだけでは人生は上手く行かないときも多々あり、老荘思想も合わせもっておくとよい、というアドバイスをお薦めの図書とともに最初にしておきました。

向上していくために、手っ取り早い方法などありません。

師匠の岡村甫先生のお言葉を借りれば、成果=努力の質×努力の量、です。努力の質を徹底的に向上させていくことがポイントです。

同じことを、稲盛和夫さんは、成果=考え方×能力×熱意、という方程式で説明されています。

「7つの習慣」の考え方のエッセンスも説明しました。人間は、日々、無数の「刺激」を受けているが、それに対して反応し、行為の「選択」を行っています。私の講義からも無数の刺激があろうかと思いますが、それらから多くのことを学ぶ学生もいれば、最後の最後まで居眠りしている方もおられました。。。

「刺激」と「選択」の間に存在するのが、個々人の「考え方」です。千差万別です。

個々人の考え方は、ミッション・ステートメントであり、私のミッション・ステートメントも見せて説明しました。私の行動は、このミッション・ステートメントに支配されています。私の土木史の講義が、一般の講義と大きく異なるのも、このミッション・ステートメントがあるからです。本日の学生のレポートも一部、見ましたが、なぜ私がこのような土木史の講義を行うのか、よく理解できた学生も少なくなかったようです。

ミッション・ステートメントは、ちょろっと考えてできるようなものではありません。人間社会に普遍的に存在する価値(原則)に基づいて、自分自身の人生と真剣に向き合って熟考すべきものです。人生を重ねながら、適宜、見直していくべきものでもあります。

ミッション・ステートメントが確立できたら、今度は日々の生活において「最優先事項」を優先する必要がある、と「7つの習慣」は説きます。最優先事項とは、重要であるが、緊急でない事項、のことです。ミッション・ステートメントに沿った行為、と理解することができます。

学生たちに、「最優先事項を優先することは、容易ではない」ことを伝えました。そして、コツを一つだけ伝えました。コツとは、忙しい社会人の生活で、一日にやることはほとんど決まっており、どうせやらなければならないことであれば、その質を徹底的に高めること。そうすれば、日常の行為が「最優先事項」に出来得る、と伝えました。

例えば、全学教育科目(教養科目)。恐ろしく手を抜いている教員が少なくないようですが、私の場合は、「土木史と文明」は最優先事項の時間です。手を抜けるわけがない。

また、今朝も長女と私のお弁当を作りましたが、その時間も、面倒くさいと思うのではなく、ミッション・ステートメントに沿った時間にすれば、健康のためでもあるし、私と長女の大切なコミュニケーションのためのお弁当、にもなり得ます。マルチタスクをてきぱきこなす、仕事のスキル向上の練習にもなりますね。ついでに、学生たちには、パリ在住時に子どもたちのために作った100回のお弁当の写真集も見せてあげました。

ありとあらゆる努力をして、1年に√2倍の成長、が何とか達成できる、というのがこれまでの私の経験です。自己実現のための成長でもありますが、これだけおかしくなってしまった社会を立て直すための、貢献するための手段としての成長、です。

74の法則、も学生たちに見せました。アドバイスは具体的な方が分かりやすいでしょう。

都市基盤学科の2年生の学生たちは、とても敏感に私の講義から様々なことを感じ取ってくれたようです。「自分自身とこれだけ深く向き合った時間を、大学に入って初めて持てた」というような記述もレポートにありました。土木、文明の歴史を学びながら、受講生は自分自身と深く向き合う。多くの偉人の生きざまに真剣に活物同期してきたから、できることです。

私自身も、今年の講義では自分の持てる力を全て出し切りました。今年度、新たに取り込んだ内容も少なくなく、講義全体をつむぐメッセージもいくつも配置できて、私自身もそれなりに満足しています。

改めて、教育とは極めて重要な行為で、教師は極めて大きな責任を負っていることを自覚しました。廣井勇先生の薫陶を受けた技術者たちがスーパースター(青山士、宮本武之輔、八田與一ら)として活躍し、日本の発展を支えたように、私も岡村甫先生から薫陶を受けて、自分自身の研鑽を続けています。

私の講義や私の教育からも、将来を支える素晴らしい人間、技術者が育つことが、私の人生の大きなミッションの一つ、なのでしょうね。大きく育ってくれることを心から期待しています。



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