今日は一つ、流し読み程度の記事を書きます。「アスペルガーの特性のある人間」の成長を遂げている、または遂げたと見える人の「自立・独立して、その後は?」について書いてみようと思います。

 

最近では発達検査の後に「アスペルガー」と分類することがないようですが、私達の親族の世代では、過去に「アスペルガー」と診断された人間がおりますので、ブログを書く側の都合ですが、表現する特性としてわかりやすいのもあり、今回の例として出してみたいと思います。

 

書きたい内容は、「アスペルガーの子どもを育てるにあたって、本人が順調に特性と社会のすきまを知識やノウハウを学びそれを武器としてスキルを得て、自身の凹みを補い、社会適合がそこそこできるように思われた人間」の、その後です。

 

例えば、親と子はいつか離れます。子供は実家から出て、働いて自活します。自立したアスペルガーの人は、その後、社会や新しく自分が作っていく家庭で生きていくことになります。

 

対人関係のノウハウを親や支援者、理解者、周囲のあらゆる人間や本、映画、マンガ、デジタルツール等々から学び、社会の中で「試しながら」体験・経験し、結果、色々なことをスキルとして得て、社会の「大勢の人」「定型の側」から見た常識や当たり前の社会的ルールを知識として備え、それなりに自分の特性とバランスを取って社会生活が無難にできるようになる、という感じで過ごします。

 

こうして学ことができれば社会デビュー後、それなりに予後がいいのもアスペルガーの親族達の特徴ですが、私達の場合は「アスペルガーと診断された本人」が自分の特性を自覚していますし、親族同志、法事や結婚式、毎年の行事などで会う機会もそこそこあるので、「お互いがお互いを把握したり、気づいたことを伝えたり、学びあうこと」ができる環境です。

 

一方で、田舎を離れて自活し、大学へ行く、会社勤めをする、自分でフリーランスで仕事をする、など「一人暮らし」を始めると、親や発達支援センターとの関わりから離れることが多くなり、「今まで培った知識と経験」をフルに生かしての「独り歩き」になっていくことが多くなります。ここで自分自身に気づいておきたいのが、「自分達のアスペルガーの特性は消えることはない」という事実です。

 

乳幼児期、幼少期、児童期と親や支援者、理解者との関わりの中で学ぶ環境、ある程度、定期的に「自分以外の人間からの客観的な言動を常に浴びて生きてきた環境」からは出て、そういう「環境が存在しない新し場所」で一人で生きるということは、アスペルガーや発達障害の特性を抱えて生きていかないといけない場合、自分の「今」を理解しておかないと、今までの過去の経験が生きてこないケースが多々出てきます。

 

特に、自閉の特性は一人暮らしをすると、いとも簡単に、より自然に、「閉じた特性へ」と戻っていく傾向があると思います。これはたぶんですが、頭の中の多動、自分の思考が止められない特性、色んなことを「自分(非定型)の感覚で考える」習性が出やすい環境になるということが大きいと思います。

 

ここでちょっと脱線します________

 

先日、イギリスのBBCが放送した「Sherlock」というテレビドラマが親族の間で人気だ、という記事を書きましたが(過去記事:)、その時にも親族間で話題に出ましたが、シリーズ1から4までのドラマの中で、アスペルガーの特性を持つと思われるシャーロックさんが、シリーズ途中から「一人での生活」に戻る機会が多くなり、変わった所がありますが定型発達者と思われるジョン・ワトソンさんという「定型社会へつなげてくれる通訳者・理解者」と物理的に離れることが多くなりました。

 

そうすると、「情や人間」が理解しにくいシャーロックさんは、今まで「ワトソンさん」と同居していた時に培った「少しの経験と知識」で、その後の定型発達の人々と付き合っていくことになるのですが、子供時代から療育を受けていたわけでもないシャーロックさんは「中途半端」に定型の人が持つ「感情」や「友人関係(友情)」というものを体験・知ることで、その後がハチャメチャになっていきました。

 

おそらく、定型発達の人がこのドラマを見ていると、特にシリーズ4の内容が「?」と思う部分が多いのではないかと思います。シャーロックさんが短い、定型者であるワトソンさんとの同居時期に得た「定型流の、大勢の社会の中で生じる友情や気遣い」などを、ある意味まじめなシャーロックさんは継続して、大切だと自分が思う人々にやっていこうと努力していると思うのですが、それが「スキルがまだまだ十分ではない」ので、周囲が思うほどちゃんとできていないわけです。

 

唯一のシャーロックさんの理解者と思われていたワトソンさんですが、どうもシャーロックさんを「もう十分に社会や友情、人付き合いに必要なものを理解して動けている人間」とどこかで思い込んで、まるで定型の人に対するかのように期待し、失望し、責めている点があるように感じます。

 

シャーロックさんの「非定型だけど、短い期間に相棒から学んだことを糧に、一生懸命に自分にとって大事な友人(定型の人)に接する」よちよち歩きの程度と、ワトソンさんがシャーロックさんに期待する程度の差にかなり開きがあるように思えます。この最後のシリーズ4では定型の人(ワトソン氏)の期待値とスキル不足の非定型(ホームズ氏)の人間関係上のこじれ、理解者・支援者の継続したサポートがないままで「ちょっと定型流を習得したけれど」実はまだまだ非定型の自分流の対応しかできない、なのに真面目に良かれと思って四苦八苦しながら頑張りすぎることで生じる大きなズレ、さらには、強い衝動・自分が正しいと思う事を主張したい特性がさらっと出てしまうことによる「非定型の人の大失敗」が見ていて気の毒になります。

 

要するに、ドラマ後半、理解者や理解者からの客観的な意見・社会との通訳なしで頑張っているシャーロックさんは、私達が生まれてから成人するまで、約20年かけて学ぶようなことを、定型の理解者である同居人との1年ちょっとの期間ぐらいでしか学んだことがない、よって、どんなに頑張ってもまだ「定型のワトソンさん」が期待する適切な言動や結果が出せない状態での迷走が痛々しいです。定型と非定型の向いている方向が違う、通訳がいりそう、など。

 

「シャーロックはずいぶんと人間的に成長した」と周囲が思いすぎている気がします。「そう見えるけど、本人も生まれ持った特性だからまだまだ素のままで、そして定型の情や人間性をまだまだ理解できていない経験不足もあり」、たぶん小学校低学年ぐらいの人間力しかまだ備えていないのに、大切な人を守るという自分で作った目標のために、四苦八苦する・・・という「非定型の人の困難」をじっくり見ているような気すらします。

 

ドラマの中で、最も非定型者の孤立した例で大失敗しているのが、シリーズの最後で登場したシャーロックさんの姉妹だというユーロスさんな気がします。小さい頃から一切の療育なく、また社会から断絶して特殊で過酷な環境で「全く何も教えてもらっていない」状態なので、IQがずば抜けて高かろうと、自分の気持ちや感情がある一方で、社会の中で自分とどう付き合って生きていけばいいか、のノウハウが全くないので、どうしたらいいかわからないまま迷走し、兄(弟?)のシャーロックともども、「どうしたらいいかわからなかった」結果に困り果てている、という感じに見えます。間違った行動の結果がドラマチックに最悪な点は、フィクションですし、ここでは割愛します。

 

これは個性的な親族間の「個人的な意見の数々」なので、ただのドラマを見た感想として、読み流してください。なにしろ、シャーロックさんはかなりフィクション的に誇張されている個性の架空の人ですので。特徴が上手く出ているなと思う部分もあれば、アスペルガーの親族でもシャーロックさんとは全く異っていたりしますので、やはり創作上の人間ではあるなと思います。

 

ここで脱線を終わります________

 

さて、「自分一人で自活して孤立した状況」でいることは、自分からは学び取る、ということがとてつもなく苦手で難しい「非定型者」の場合、少し避けた方がいいかもしれないと思います。乳幼児期、児童期は傍に「理解者・支援者」がいて、刺激してもらい、新しい知識や社会で生きる上での実践に使えるようなノウハウを伝えてもらえることは、最も得難いものです。自分達が理解しない「社会」や「定型者」のことを、通訳してくれる、わかりやすく解説してもらえる、ということは貴重です。この社会で発達障害の特性があっても、それなりにバランスを取って無理しすぎずに生きていけるきっかけとなります。

 

そして成人して、自活を初めて、過去に培ったいろいろなことを武器として社会で生きていく中で、やはりできれば伴侶や友人、誰でもいいので「異なっていても、話せる・通じ合える」人と出会い、学び続けることは必要不可欠ではないか、と思います。

 

理解者や支援者との親子関係、友人関係やサポートを受ける関わりの中で、それが継続すればするほど、「実践に使えるスキルは増え、学ぶ知識も増え、社会で生きやすいノウハウが蓄積する」のですから、できる限り、一人暮らしをしようと、自分一人で生活をしていこうと、本当の意味での「孤立」は避けることが望ましいかなと思います。

 

親族の場合は、定期的に大事に思っている理解ある友人と会って過ごしたり、親兄弟と会って自分自身の悩みや思っていることを話してメンテナンスしたり、気の合うカウンセラーや相談相手に「学校・会社でこんなことがあって、どうしたらいいか迷った」などと、定型社会での対人関係の不明な点を自分から解説してもらったり、と「自分達が非定型者として不足している部分を知識で補う」学びは続ける傾向にあります。伴侶やパートナーからの意見も参考にします。定型の友人に相談することも多いです。実際に私は、例えば町内会のことは、役についた時は自分がメインで動くこともあるので、非定型流になりすぎていないか確認のために、信頼できる豊富な経験のある近所の定型年長者に「どう実践すればいいか」の具体案などを添削・修正してもらったり、町内の関わらないといけない人々との間に入ってもらって橋渡しをしてもらったりしています。

 

探偵さんのように好きなことだけをしていて、かつ親が生まれてから全く療育的なことをせずにいたり、社会の中で理解者に出会う環境を全く提供せずにいた場合に、子供の人間性が勝手に・自発的に育つ・・・という可能性は限りなく低いのが私達です。そういった特性持ちの人間がこの、社会が定型の大人数で構成されている、という現実とうまく付き合っていくには、非定型としての自分も大事にする、という視点からも、周りをよく知って、自分の特性を「用いて」いくスキルを身に着けることは大事だと改めて思います。その試みの延長線上で、家庭や学校、社会の中で非定型の自分でもある程度快適に過ごせる、自分がそこそこ満足できる社会的立場を得る、生涯を通じて付き合える友人を得る、というような充実した人生につながっていくのかなと思います。

 

色んな事を「変わった私達(親族)の感想」も交えて書き散らしてしまいましたので、小話程度に流し読みしていただければ幸いです。

 

 

 


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